講師紹介
調剤薬局で薬剤師を経験。その後、美術大学で建築とアートを学び、大工としてものづくりの現場にも携わってきました。
異なる分野を横断して学ぶ中で見えてきた「理解の構造」を、学びに活かす形として「マインドマップ薬学」を制作しています。
— 講師:トンキチ
大学では医療統計を専門に研究。
その後、病院と薬局の両方で経験を重ね、臨床現場の視点を培いました。
現場で求められる知識のつながりや理解の深さを、マインドマップという形で体系化しています。
— 講師:タラコ
──トンキチ講師インタビュー ──
なぜ僕は「マインドマップ薬学」を作ったか
もともと医学部を目指して、受験勉強に全力で取り組んでいたトンキチさん。
限界まで頑張ったはずの受験は不合格に終わり、
「これは努力の量ではなく、“やり方”を変えないといけない」と感じたと言います。
そこから薬学部で学びながら、ひとりの先生との出会いをきっかけにマインドマップと出会い、
今の「マインドマップ薬学」へとつながっていきました。
そんなトンキチさんに、マインドマップに込めた思いを聞きました。
インタビュアー:
もともと医学部を目指して受験勉強をしていたとのことですが、
当時はどんな気持ちで勉強していましたか?
そして、不合格がわかったとき、どんなことを考えましたか?
それでも落ちてしまったときに、「これは“努力が足りない”じゃなくて、“やり方”を根本から見直さないとまずいな」と強く感じました。
本当にこのまま薬剤師を目指していいのか、どんな道に進めばいいのか。大学1〜2年生のころは、そんなことばかり考えていました。
インタビュアー:
そんな中で、マインドマップと出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
自分の境遇やこれからの進路のことを話しているときに、その先生から「学士編入で医学部を目指す道もあるよ」とか、いろいろ提案をもらったんですね。
その流れで「勉強のやり方」についても相談したところ、マインドマップや、情報整理の方法について書かれた本を何冊か紹介してくれました。その中の1冊、マインドマップの本が、自分には驚くほどしっくりきて、「これだ」と思いました。
インタビュアー:
「これは他の勉強法と違う」とはっきり感じたのは、どんな瞬間でしたか?
たとえば、高校物理の分野では、ニュートン力学、電気力、磁力といった大きなかたまりがあって、それぞれの根本的な知識を押さえておけば、あとはそこから導いたり派生させたりできる。知らないうちに、そうやって体系的に覚えていました。
何度も同じような問題を解く中で、頭の中で勝手に整理されていった感覚があったんですが、マインドマップの本を読んだときに、「この感覚って、物理だけじゃなくて、どんな勉強にも使えるんだ」と分かって、すごくワクワクしました。
授業を聞きながらマップを書くには、「今この話は、全体のどこに位置しているのか?」を常に意識していないと書けないんです。頭の中のメモリーが「内容を理解すること」と「全体の中での位置づけを考えること」の両方に使っている感じでした。
でも、それを続けていくうちに、バラバラな知識の点が、あとからどんどん線でつながっていく感覚が出てきて、「これは他の勉強法と明らかに違う」と実感しました。
インタビュアー:
授業中にマインドマップでノートを取っているとき、頭の中はどんな状態なんでしょう?
授業を聞きながら「今日はこの目次の1項目を埋めているんだな」と意識して、その1項目の中にさらに小さな目次を作って、そこをどんどん埋めていく。そんなふうにして書いていくと、最後に見返した時には、その目次どうしが線でつながっていきます。
「教科書の全体像 → 章 → 節 → 項目」という層が、マップ上で見えるようになる頭の使い方をしている感じです。
インタビュアー:
マインドマップで勉強するようになって、一番大きく変わったのは何ですか?
もちろん、成績も理解も上がりました。けれど何より大きかったのは、「どれぐらいやれば、どれぐらいの点数が取れそうか」が自分で見積もれるようになったことです。
テキストや過去問をマインドマップと見比べながら、「この範囲までをマインドマップに落とし込んで、それを覚えきれたなら、今回はこれくらいの点数は取れるだろう」という見通しがかなり正確に立つようになりました。75点を目指したマインドマップなら、72〜78点くらいの間に収まるなみたいな。
だから、「今回の目標点は75点だから、この科目の勉強はもう終わりでいい」と、自分で線を引いて勉強を終えられるようになった。これは、自分にとってはとても大きな変化でした。
インタビュアー:
一言でいうと、「マインドマップで勉強する」とはどんな行為だと思いますか?
範囲が無限に広がっていくように感じるときに、マインドマップで全体像を描き、「このテストではここからここまでをちゃんとやる」と自分で決める。
終わりの見えない勉強を、自分で終わりのあるものに変えていくための道具が、マインドマップだと思っています。
インタビュアー:
マインドマップ薬学を、いちばん届けたいのはどんな学生ですか?
薬学部の6年間は長いので、最初のうちに「勉強の型」としてマインドマップを身につけてしまえば、あとはそれを少しずつ拡大していくだけで、国家試験までつながっていきます。学生時代の時間も、もっと有意義に使えるはずです。
一方で、実際に一番多いのは、国家試験が近づいてきて切羽詰まっている6年生やCBT前の4年生の方です。そういう人には、「今からでも全体像を作るための地図」として使ってほしいと思っています。テキストや過去問とマインドマップを見比べながら、「ここまでやればこのくらいの点数は狙える」というラインを引き直すための道具になるはずです。
1〜5年生のあいだに勉強してきた内容そのものは、すでに頭のどこかには入っていることが多いと思います。そのバラバラの知識を、一つの地図の中で「どの分野の、どの位置づけなのか」と並べ直す。そのためのフレームとして、このマインドマップを使ってもらえたらうれしいです。
インタビュアー:
そういった学生たちに、過去の自分に話しかけるようにメッセージを送るとしたら?
だって、もし当時これがあったら、このマインドマップを横に開きながら授業を受けて、分からないところだけ先生に質問したら、体型的に頭の中に入ってるでしょ。あとはそのマップを覚えてしまえばテスト、パスできるんですもんね。
一番しんどい「最初にどうやって全体像を作ればいいんだろう」という部分は、完成形として出来上がっているマインドマップが助けてくれます。それを自分なりに真似しながら使っていけば、自分でもマインドマップを作れるようになるし、やり方が身につくスピードは、正直、僕なんかよりずっと早いんじゃないかなと思います。
インタビュアー:
最後に、マインドマップ薬学を通して、学生たちにどんな状態になっていてほしいですか?
100点満点を目指して際限なくやってしまうと、勉強だけで終わってしまいます。そうではなくて、自分が必要だと思う点数を決めて、それに見合う努力量をマインドマップに落とし込んでいってほしい。そして、それ以外の時間は、自分の興味のあることに使ってほしいです。
本当は、
100点を取れるような膨大な範囲をうすく広く勉強するよりも、
「90点を取れるマインドマップ」を決めて、範囲をあえて狭めた分だけ何回も何回も暗記して、精度と密度を高めていく方が、
楽だし確実に合格に近づきます。
でも、多くの人はそのことに気づいていません。なぜかというと、「ここまででいい」と範囲を絞ることに、自信が持てないからだと思っています。
マインドマップを開いたときに、肩の力を抜いて、「このペースで進めていけば、これはちゃんと受かるな」と、自信を持って勉強できるようになっていてほしいです。
焦りや不安だけで動くのではなく、着実に積み上げていく感覚で勉強してもらえたらと思います。
勉強との付き合い方としては、常に全体像をつかんだうえで、自分の選んだ成績に自信を持てるようになっていてほしいです。成績は“与えられるもの”ではなく、自分で“選ぶもの”です。勉強を頑張ることだけが偉いわけではありません。
自分が納得できるラインを決めて、残りの時間で、自分の興味のあることも思い切りやってほしいと思っています。