今回は生物の脂質の種類、分類と構造について解説します。
ポイントは
ポイント
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い
不飽和脂肪酸の種類
トリアシルグリセロールと複合脂質の特徴
このポイントを中心に勉強していきましょう!
Contents
脂質は細胞膜の成分であり、エネルギー源
まず脂質の役割について押さえます。
脂質の主な働きは
細胞膜やホルモンの構成成分
エネルギーの貯蔵→過剰な時は貯蔵し、飢餓時にエネルギー源として使われる
です。
脂質の分類
脂質はざっくり4つに分類できます。
・単純脂質:トリアシルグリセロール→貯蔵脂肪
・複合脂質:リン脂質、糖脂質→細胞膜の構成成分
・誘導脂質:脂肪酸(飽和、不飽和脂肪酸)→単純、複合脂質の構成成分
・ステロール:エルゴステロール、コレステロール→細胞膜成分、ステロイドホルモンや胆汁酸の前駆体
があります。
理解しやすくするために脂肪酸から見ていきます。
脂肪酸の構造と特徴
脂肪酸は一般に
・直鎖炭化水素
・カルボン酸
・炭素数が偶数
という特徴があります。
炭素数が偶数というのは脂肪酸が炭素数2個からなるアセチル基を単位として延長されるためです。↓
生体内ではアセチルCoAの縮合により炭素が伸びていくのを思い出しましょう。
脂肪酸の生合成についてはこちらに詳しくまとめてあります。
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参考脂肪酸合成を図で分かりやすく解説【薬学の勉強はこれでOK】
続きを見る
脂肪酸は二重結合の有無で飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は二重結合を含みません。
炭素鎖が長いと分子量が増えるので分子間の引力が強くなります。
そのため融点が高くなり常温では固体です。
飽和脂肪酸の代表的なものはパルミチン酸とステアリン酸です。
覚え方はゴロで
「スーパーでハムこうた」
スー:ステアリン酸
パー:パルミチン酸
は:C18(ステアリン酸)
む:C16(パルミチン酸)
こうた:固体
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は二重結合を持ちます。
二重結合があると折れ曲がりが生じます。
分子同士が密になれないので分子間の力が弱まり融点は低くなります。
結果、常温では液体になります
また天然の不飽和脂肪酸はシス型が多いです。
2つの二重結合に挟まれたメチレン基は水素の引き抜きが起こりやすく酸化されやすいです。
末端のメチル基側から数えて最初の二重結合の位置により(n-⚫︎)系と分類できます。
これは覚える必要があるのでゴロで効率的に押さえましょう。
(n-6)荒木リノさんはガンマン
荒木:アラキドン酸
リノさん:リノール酸
ガンマン:γーリノレン酸
(nー3)Aカップのえい子さんはどこ
Aカップ:αーリノレン酸
えいこ:エイコサペンタエン酸(EPA)
どこ:ドコサヘキサエン酸(DHA)
(n−9)オレ、一価
オレ:オレイン酸
一価→不飽和で二重結合が1つのものを一価不飽和脂肪酸という
単純脂質
単純脂質は脂肪酸とアルコールから構成されます。
代表的なのがトリアシルグリセロール(TG)です。
トリアシルグリセロールは(TG)は3価アルコールのグリセロールに3つ(トリ)の脂肪酸がエステル結合してできます。
体内では貯蔵脂肪としてエネルギーの備蓄に関係してます。
くっつく脂肪酸の数によって
・脂肪酸1個→モノアシルグリセロール
・脂肪酸2個→ジアシルグリセロール
となります。
複合脂質
単純脂質は脂肪酸とアルコールからできていました。
これ以外にリン酸、塩基、糖質など含むものを複合脂質と言います。
極性部分にリン酸があるとリン脂質、糖質があると糖脂質となります。
特徴としては親水性、疎水性部分の両方を持ち両親媒性として働きます。
体内では脂質二重層を構成し細胞膜の構成成分となっています。
リン脂質
リン脂質は構成成分の違いでグリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質に分けられます。
グリセロリン脂質
グリセロリン脂質はアルコール部分がグリセロールのリン脂質です。
具体的にはグリセロール+脂肪酸+リン酸+極性基(コリンとか)
で構成されます。
ホスファチジルコリン(レシチン)
グリセロリン脂質の1つにホスファチジルコリン(レシチン)があります。
これは極性基にコリンがついてます。
ホスファチジルコリン(レシチン)はホスホリパーゼA2(PLA)で2位の脂肪酸のエステル結合が加水分解されることで脂肪酸(主にアラキドン酸)とリゾリン脂質(リゾレシチン)が生じます。アラキドン酸はプロスタグランジンやトロンボキサンなどのエイコサノイドの合成に必要です。
ホスファチジルイノシトール4,5ビスリン酸(PIP 2)
ホスファチジルイノシトール(PI)はリン酸化されるとホスファチジルイノシトール4,5ビスリン酸(PIP2)になります。
PIP2は細胞内情報伝達に関わっています。
PIP2はホスホリパーゼC(PLC)により3位のリン酸エステル結合が加水分解されると1,2-ジアシルグリセロール(1,2DG)とイノシトール1,4,5-3リン酸(IP3)という細胞内情報伝達物質が生成されます。
他にもPAF(血小板活性化因子)もグリセロリン脂質になります。
スフィンゴリン脂質
スフィンゴリン脂質はグリセロリン脂質のグリセロール部分が長鎖アミノアルコールのスフィンゴシンになっています。
スフィンゴシンに脂肪酸がアミド結合したものをセラミドと言います。
これにリン酸とコリンが付くとスフィンゴミエリンになります。
スフィンゴミエリンは脳や神経組織の細胞膜に大量に存在しています。
糖脂質
糖脂質もグリセロ糖脂質とスフィンゴ糖脂質に分けられます。
スフィンゴ糖脂質は動物組織の脳、神経組織の細胞膜に存在します。
ステロール
ステロールはステロイド骨格をもつ脂質です。
動物にはコレステロール、真菌にはエルゴステロールなどが存在します。
細胞膜の構成成分で膜の安定性に関与してます。(細菌の細胞膜には基本ステロール含まれてない)
他にもコレステロールはステロイドホルモンや胆汁酸の材料として重要です。
コレステロールは「ああえっちなメスラッコ」で合成される
コレステロールの生合成は肝臓や小腸で起こります。
生合成の順番はゴロで効率的に覚えましょう。
「ああ、えっちなメスラッコ」
あ:アセチルCoA
あ:アセトアセチルCoA
H:HMG-CoA
な:NADPH
メ:メバロン酸
ス:スクアレン酸
ラ:ラノステロール
コ:コレステロール
まずアセチルCoAからスタートします。
アセチルCoA二つがくっつくとアセトアセチルCoAになります。さらにもう1つアセチルCoAが付くとβ-ヒドロキシ-β-メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)になります。HMG -CoAレダクターゼとNADPHによりHMG-CoAは還元されてメバロン酸になります。
この酵素が絡む反応が律速段階になります。
その後スクアレン酸、ラノステロールなどを経由してコレステロールが合成されます。
律速酵素であるHMG -CoAレダクターぜはコレステロールにより調節されます。
コレステロールが増えると
・HMG -CoAレダクターゼ活性を抑制
・HMG -CoAレダクターぜ遺伝子の発現を抑制
・HMG -CoAレダクターぜの分解促進
によりコレステロールの量を減らす方向に調節します。
また脂質異常症薬のスタチン系はHMG -CoAレダクターぜを阻害するのは必須で覚えましょう。