器官の構造と機能

【薬学部の生物】神経系の構造と分類方法。末梢神経系を重点解説

今回は薬剤師国家試験 生物の 神経系の構造と分類について解説していきます。

ここを理解すれば、薬理や病態などで、神経の名前が出てきても怖くありません。

薬剤師国家試験では、以下の4点を押さえておけばOKです。

  1. 末梢神経系の分類方法2種類
  2. 脊髄の断面
    • どこ(前角/後角/側角)から何神経が出ているか
    • 灰白質と白質の場所
  3. 交感神経・副交感神経の出発点
  4. 脳神経の名前→ゴロ

神経系は中枢神経系と末梢神経系で大きく分類

まず、神経系は

  • 中枢神経系:指令を出す脳と脊髄
  • 末梢神経系:体に指令を届ける

に分けられています。

脳については別の記事で解説します。

末梢神経系は解剖学的分類と機能的分類

末梢神経系は分類方法自体が2通りあり、混乱してスルーしてしまう人が多いです。

ここをきちんと抑えると薬の作用機序を理解するときに具体的なイメージができるようになるので、この機会に理解してしまいましょう!

末梢神経系の理解の流れ

解剖学的分類と機能的分類があります。

まずは、神経の出ている位置などを解剖学的に末梢神経系を理解して、その中身を機能的分類で見ていきましょう。

解剖学的分類は解剖してわかる分類方法のこと

解剖学的にみると、末梢神経は脳神経と脊髄神経に分けられます。

脳神経は脳幹(中脳、橋、延髄)から出ています。

脊髄神経は脊髄から出ており、頚神経、胸神経、腰神経、仙骨神経、尾骨神経に分けられます。

さらに断面を見てみましょう。

いろんな神経が束なって椎骨の間から出てきて、左右で1対の脊髄神経になっていることがわかります。

例えば、これが脳神経の上から10対目だと第Ⅹ脳神経(迷走神経)と呼ばれる神経になります。

脊髄の中心はH型の灰白質、その周りは白質でできています。

灰白質は神経細胞の細胞体が多く集まり、神経線維が多く集まった白質は脂質二重膜が多くなるため白く見えます。

ここまでが解剖学的なお話しです。

では次に脊髄から出ている神経を細かくみてみましょう。

機能的分類は脊髄の断面を見ればわかる

さまざまな神経が脊髄から出ているのがわかります。機能的分類では、神経の役割によって分類しています。

感覚や運動に関与するのが体性神経系です。

一方、内蔵器官などの機能を司るのが自律神経系になります。

薬剤師国家試験では、

  • 体性神経系
    • 運動神経は前角から出ていること
    • 知覚神経は後角から入っていること
  • 自律神経系
    • 自律神経は側角から出発し前角から脊髄外へ出ていく

を最低限、覚えておきましょう。

体性神経系:運動神経と知覚神経

体性神経系は

  • 骨格筋に指令を送る(遠心性)運動神経
  • 感覚を中枢へ知らせる(求心性)知覚神経

から構成されています。

余裕があれば、脳を介さずに行われる脊髄反射も勉強しておきましょう。

中枢系筋弛緩薬は、まさにここの話です。

自律神経系:交感神経と副交感神経

この記事で一番知っておいてほしいのが自律神経の話です。

自律神経系は交感神経系と副交感神経系から構成されています。薬学生なら誰でも知ってますよね。

薬理や病態の勉強をしていて、「迷走神経は副交感神経だから、迷走神経終末からはAChが出て、ChEを抑えれば…」みたいな話を聞いたことがあると思います。

ここまでの話が理解ができてる方は、

「迷走神経と副交感神経って、そもそも分類分けが違うのになぜイコール?おかしくない?」

と疑問に思うんじゃないでしょうか?

この疑問を解決するために、解剖学的分類に一度戻ってみましょう。

脳・脊髄神経はいろんな神経のブレンド

解剖学的分類のところで神経は、いろんな神経(知覚神経や運動神経、交感神経、副交感神経)が束になって椎骨の間から出てきていることを勉強しました。

つまり、1対の神経を取り出してみると、それには知覚神経が多いとか副交感神経が多いとか中身にバリエーションがあるということです。

バリエーションの例:動眼神経(第3脳神経)には、

  • 眼球運動の運動神経はある
  • 知覚神経は入っていない
  • 瞳孔括約筋を調節する副交感神経は入ってる
  • 交感神経は入ってない

いろんな神経がブレンドされてるんですが、

交感神経と副交感神経は同じ神経の束には入っていません。

どういうことか?

一度、解剖学的分類に立ち戻ってみましょう。

交感神経・副交感神経の出発点

交感神経副交感神経の支配領域がわかる図です。神経の出発点を追ってみると

副交感神経脳幹(副交感神経の中枢)と仙髄から出ており、

交感神経は脊髄の胸髄と腰髄からのみ出ていることがわかります。

つまり、同じ神経の束の中には入っていないということです。

これで疑問「迷走神経は副交感神経だから…」の答えがわかりました。

胃酸分泌や血管平滑筋とかの文脈では、交感神経と副交感神経の話をしてるから、迷走神経=副交感神経でOKってことね!

副交感神経を含む脳神経の語呂:道中顔面強打したら迷わず延髄

ここで、薬剤師国家試験で問われる「副交感神経を含む脳神経」を覚えておきましょう。

語呂:道中顔面強打したら迷わず延髄

脳神経 語呂 副交感神経

  • 道中:動眼神経(第Ⅲ脳神経)で中脳
  • 顔面強打:顔面神経(第Ⅶ脳神経)で橋
  • したら迷わず延髄:舌咽神経(第Ⅸ脳神経)と迷走神経(第Ⅹ脳神経)は延髄

脳神経なので、交感神経はどこにも入っていません。

まとめ

生物は範囲が膨大なので、割り切りも大事な一方、薬理や薬剤、病態、衛生などさまざまな分野の理解を容易にしてくれる基礎科目です。

今回は、スルーされがちな神経系の分類について解説していきました。

機能的分類でミクロな神経を見て、それがブレンドされ束になり解剖学的分類として扱われていく流れは理解できたでしょうか?

迷走神経など他の科目で出てきた時は、どこが出発点だったか、思い出しながら勉強するとイメージがしやすくなると思います。

薬剤師国家試験の生物では、以下の4点が説明できればO Kです。

  1. 末梢神経系の分類方法:解剖学的分類と機能的分類
  2. 脊髄の断面
    • 前角から運動神経、後角から知覚神経、側角から前角を通って自律神経
    • 灰白質が内側、白質がその周り
  3. 交感神経は脊髄(胸髄と腰髄)・副交感神経は脳幹と脊髄(仙髄)が出発点
  4. 脳神経の名前→ゴロ:道中顔面強打したら迷わず延髄

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