今回は副交感神経に作用する薬について解説します。
ポイントは
ポイント
アセチルコリンの作用、流れ
ムスカリン受容体とニコチン受容体の違い
どの効果器にどの薬が作用するか
このポイントを中心に勉強していきましょう!
Contents
副交感神経はアセチルコリンが大切
まず基本事項を押さえておきましょう。
副交感神経は節前繊維は長く、節後繊維は短いです。
両方ともコリン作動性神経になるのでアセチルコリンが神経伝達物質として分泌されます。
遊離されたアセチルコリンはムスカリン性アセチルコリン受容体刺激して「休養と栄養」をイメージする作用を引き起こします。
自律神経は交感神経と副交感神経の二重支配を受けています。
細かい症状はこちらを参考にしてください。
アセチルコリンの流れ
アセチルコリンはコリン作動性神経内でコリンアセチルトランスフェラーゼによってコリンとアセチルCoAから合成されます。
小胞アセチルコリントランスポーターでシナプス小胞内に取り込まれて貯蔵されます。
副交感神経に興奮が伝わるとアセチルコリンがシナプス間隙に分泌。
分泌されたアセチルコリンは受容体を刺激し作用を示します。
伝達に関与しなかったアセチルコリンはコリンエステラーゼによりコリンと酢酸に分解されます。
コリンは再取り込みされてアセチルコリン合成に再利用されます。
アセチルコリンの作用部位
アセチルコリンが作用する部位は
- 副交感神経の効果器
- 運動神経の神経筋接合部
- 神経節(副交感神経+交感神経)
- 副腎髄質
- 中枢神経系
など多数あります。
アセチルコリン受容体はムスカリン受容体とニコチン受容体の2つ
アセチルコリン受容体にはムスカリン受容体とニコチン受容体の二つがあります。
ムスカリン受容体は心筋や平滑筋などの副交感神経支配の効果器にあります。(上の図のオレンジ)
一般に、副交感神経系の作用(休養と栄養をイメージする作用)はムスカリン受容体(M受容体)を介して出現します。
ニコチン受容体は神経節や副腎髄質、運動神経などで見られます。(上の図の赤)
神経伝達や骨格筋収縮に関わります。
副交感神経薬の分類
アセチルコリンが関与すると副交感神経に作用する薬とイメージしやすいですが、上で見たように、アセチルコリンは副交感神経関連の作用以外にも中枢神経系での伝達物質として働いたり、ニコチン受容体にも作用するので分類がしづらいです。
国試的には副交感神経薬かどうかとは聞かれず、作用機序を問われるので細かく分類する必要はありませんがイメージはこんな感じ↓。
副交感神経薬は厳密には上の図の緑色の部分です。
この分類に関しては参考程度にふーんと、見てもらえればOKです。
例えば認知症薬はアセチルコリンが関与しますが、中枢神経系に作用するので、副交感神経とは直接関係のない効果になります。
マインドマップでは副交感神経の作用以外を目的とした薬(認知症薬やパーキンソン病薬など)もアセチルコリンに関連するので記載しています。
コリン作動薬は直接型と間接型
副交感神経興奮様薬(コリン作動薬)には直接型と間接型があります。
直接型コリン作動薬
直接型は受容体を刺激することで作用する薬です。
ムスカリン受容体(M)だけを刺激する薬と、ムスカリン(M)+ニコチン(N)受容体の両方を刺激する薬があります。
M+N受容体刺激薬
アセチルコリン、メタコリン、カルバコールはムスカリン受容体とニコチン受容体の両方を刺激します。
基本的にはムスカリン様作用が出現します。
アセチルコリンでニコチン様作用を出すにはムスカリン受容体遮断薬を投与してから大量のアセチルコリンを投与しないと現れません。
なので基本はムスカリン受容体を刺激された時の作用を理解していれば大丈夫です。
ムスカリン受容体が刺激されると
- 心臓(M2):心機能抑制→徐脈
- 眼(M3):瞳孔括約筋収縮→縮瞳
- 気管支平滑筋(M3):収縮
- 消化管(M3):平滑筋収縮、分泌促進→蠕動運動↑、腸液↑
- 膀胱(M3):膀胱排尿筋収縮→排尿
- 外分泌線(M3):分泌促進→発汗、涙液、唾液↑
このような作用が現れます。
アセチルコリンは
- コリンエステラーゼで分解されやすい→作用が一過性
- 4級アンモニウム塩→消化管吸収が不良
- 血液脳関門を通過しない→中枢作用はほぼない
と言う特徴があります。
作用の持続やムスカリン作用を強くし、ニコチン作用を弱くすることを目的に合成コリンエステル類(メタコリンやカルバコールなど)が作られました。
特徴を示すとこんな感じ
- ムスカリン作用には第4級アンモニウム構造とエステル結合の両方が必要
- ニコチン様作用は第4級アンモニウム構造が必要
- β位にメチル基を導入するとニコチン様作用が弱くなる(メタコリンとベタネコール)
- アセチル基をカルバモイル機に置換するとコリンエステラーゼによる分解を受けにくくなる
表にまとめるとこんな感じ↓。
M受容体刺激薬
ベタネコールとピロカルピンはムスカリン受容体のみを刺激します。
ムスカ、べっぴんに刺激受ける
ムスカ:ムスカリン作用
べ:ベタネコール
ピン:ピロカルピン
で覚えましょう。
ピロカルピンはアルカロイドです。
ムスカリン様作用が強く、 特に目と腺分泌作用が強いです。
作用は
- 瞳孔括約筋の収縮→縮瞳作用
- 毛様体筋収縮による眼圧下降作用
3級アミン構造で、主に点眼で使用されます。
3級アミンは脂溶性が高く中枢への副作用の懸念がありますが点眼では出にくいです。
ベタネコールは麻痺性イレウス、排尿困難、腸管麻痺などに適応があります。
その他
その他のコリン作動薬に
- カルプロニウム:局所血管拡張作用
血漿コリンエステラーゼ分解されにくく作用が持続的 - セビメリン:唾液腺のM 3を刺激→唾液分泌を促進
があります。
間接型
間接型はコリンエステラーゼを阻害することでアセチルコリンの濃度を上げます。
直接受容体に作用するわけではないのでムスカリン様作用とニコチン様作用の両方があります。
コリンエステラーゼ阻害薬には可逆性と非可逆性の2種類あります。
可逆性コリンエステラーぜ阻害薬
〜チグミン(ネオスチグミン、ジスチグミン、ピリドスチグミンなど)とエドロホニウム、アンベノニウム、ドネペジルなどがあります。
認知症薬(ドネペジルなど)や重症筋無力症薬(アンベノニウムなど)は副交感神経とは関係ない作用を目的として使用されるので厳密には副交感神経薬ではないですが、関連する薬としてマインドマップに入れてあります。
これらの薬はコリンエステラーゼを阻害することでアセチルコリンが分解されるのを防ぎ間接的に受容体を刺激します。
例えばネオスチグミンの場合、コリンエステラーゼの活性部位がカルバモイル化され酵素の活性がなくなります。
時間が経つとカルバモイル基が解離し、コリンエステラーゼは再活性します。(可逆的)
非可逆性コリンエステラーぜ阻害薬
サリン、パラチオンがあります。
サリンの場合はコリエステラーぜの活性部位がリン酸化されて酵素活性がなくなります。
リン酸基の解離には非常に長い時間がかかり、新しいコリンエステラーゼが産生されるまで酵素活性は回復しません。(不可逆)
大量のアセチルコリンが溜まると中毒症状が現れます。
そのため解毒薬にプラリドキシム(PAM)とアトロピンが使われます。
プラリドキシム(PAM)はリン酸を外すことで酵素の再活性化を促します。
抗コリン薬
抗コリン薬はムスカリン受容体遮断とニコチン受容体遮断薬がありますが、一般的には抗コリン薬は抗ムスカリン薬をさすことが多いです。
抗ムスカリン薬のアトロピン、スコポラミンは天然物質でベラドンナアルカロイドです。
抗ムスカリン薬はアトロピンを原型として作られているのでアトロピン代用薬とも言われてます。
なのでアトロピンの作用を理解するの抗ムスカリン薬も理解しやすいです。
アトロピン
アトロピンの作用は
眼(M3):瞳孔括約筋弛緩→瞳孔散大=散瞳
毛様体筋弛緩→水晶体が薄くなる→遠視性調節麻痺
毛様体筋弛緩→シュレム管閉塞→眼房水排出抑制→眼内圧上昇➡︎閉塞隅角緑内障には禁忌
腺分泌抑制(M3):分泌抑制→発汗、涙、唾液↓
膀胱(M3):膀胱排尿筋弛緩→蓄尿(排尿困難)➡︎前立腺肥大症に伴う排尿障害に禁忌
気管支平滑筋(M3):弛緩→気管支拡張
心臓(M2):心機能亢進→頻脈
副作用に口渇、便秘、排尿困難、遠視性調節麻痺、眼圧上昇などがあります。
アトロピンは作用持続時間が長いこと、効果器に対する選択性がないのでこれを改良した薬がアトロピン代用薬と呼ばれてます。
各効果器に作用する薬を見ていきましょう。
目:星がピカピカ眩しいよう
星がピカピカ眩しいよう
ほ:ホマトロピン
し:シクロペントラート
ピカピカ:トロピカミド
眩しいよう:瞳孔が開いて眩しい
アトロピン同様に
- 眼(M3):瞳孔括約筋弛緩→瞳孔散大=散瞳
- 毛様体筋弛緩→水晶体が薄くなる→遠視性調節麻痺
- 毛様体筋弛緩→シュレム管閉塞→眼房水排出抑制→眼内圧上昇➡︎閉塞隅角緑内障には禁忌
の効果があります。
3級アミンですが、点眼だと脳へ行きづらいので副作用でにくいです。
消化器 鎮痙薬 プロパン工事ブチってぺんぺん
プロパン:プロパンテリン
ぶちって:ブチルスコポラミン
ペンペン:メペンゾラート
4級アンモニウム化合物なので血液脳関門を通過しにくく、中枢性の副作用少ないです。
自律神経節遮断作用を有するため鎮痙作用が強いのも特徴です。
胃 胃が絶品!ピレンゼピン!
胃が絶品ピレンゼピン
胃酸分泌を抑制するので胃潰瘍や十二指腸潰瘍に適応があります。
呼吸器 トロピカルな空気はこりごり
トロピカルな空気はこりごり
トロピカル:〜トロピウム(チオトロピウム、イプラトロピウム)
空気:呼吸器
こりごり:抗コリン
気管支収縮抑制薬です。
気管支喘息やCOPDなどに適応があります。
泌尿器 おしっこのプロ、ソリマチとおる
おしっこのプロ、ソリマチとおる
おしっこ:泌尿器
プロ:プロピベリン
そり:ソリフェナシン
とおる:トルテロジン
頻尿治療薬で過活動膀胱に使われます。
中枢 まさかのパーキングでひばりの鳥汁
まさかのパーキングでひばりの鳥汁
まさか:マザチコール
パーキング:パーキンソン病
ひばり:ビペリデン
鳥汁:トリヘキシフェニジル
パーキンソン病に適応があります。中枢のアセチルコリン作用を抑制します。
ニコチン受容体
ニコチン受容体に関連する薬は刺激薬と遮断薬があります。
Nn受容体は交感神経節と副交感神経節の両方にあります。
各効果基は交感神経と副交感神経の二重支配を受けているので、各効果器は優位な方の作用が出現します。
交感神経が優位に働くのは血管と汗腺です。
それ以外は副交感神経支配と覚えれば大丈夫です。
交感神経優位
血管:血管収縮→血圧上昇
汗腺:分泌増加
副交感神経優位
心臓:心拍数減少
眼:瞳孔括約筋収縮→縮瞳
毛様体筋収縮→眼圧↓
消化器:蠕動運動亢進
膀胱:排尿筋収縮→排尿促進
ニコチン受容体刺激薬
Nn受容体刺激薬にはニコチン(少量)、アセチルコリン、カルバコール、メタコリンがあります。
また部分刺激薬ですがバレニクリンもあります。
ニコチンは量によって作用が真逆になるので注意しましょう。
少量だと自律神経節を脱分局してニコチン受容体を興奮させます。
大量の場合は持続的脱分極のため遮断作用になります。
バレニクリンはニコチンと同様に禁煙補助として作用されます。
ニコチンα4β2受容体に結合して部分作動薬として働きます。
少量のドパミンを放出することで離脱症状を軽減します。
また喫煙による快感が得られなくなり喫煙欲求の減少が期待できます。
ニコチン受容体遮断薬
ニコチン受容体遮断薬には神経節遮断薬(ヘキサメトニウム、トリメタファン)と神経筋接合部遮断薬(ベクロニウムやスキサメトニウムなど)があります。
神経節遮断薬(ヘキサメトニウム、トリメタファン)はすでに適応がないのであまり聞かれないですが自律神経節のNn受容体を競合的に遮断します。
ベクロニウムやスキサメトニウムは筋弛緩薬として使われます。
こちらはNm受容体を遮断するので注意しましょう。