今回は生物の細胞の基本の細胞膜について勉強します。
勉強のポイントは
ポイント
細胞膜の役割
細胞膜の構成、脂質二重層
タンパク質の役割
です。
一緒に勉強していきましょう。
Contents
細胞膜は細胞の内側と外側を隔てる生体膜
まず、細胞膜の役割について押さえます。
細胞膜は細胞の表面を覆い、内側と外側を隔てています。細胞内外の体液のイオン組成には大きな違いがあり、細胞はこの違いを利用して様々な働きをします。
主な働きは
情報伝達:細胞膜の表面にある特殊なタンパク質(受容体)を使って細胞外からの情報を受け取り、内部に伝える
輸送:細胞膜上のタンパク質(輸送体)を用いて、物質を細胞内に取り込んだり、細胞外に出す
代謝:物質の代謝に関わる酵素があり、分子の分解や修飾をする
細胞内には種々の細胞内小器官が存在し、多くが細胞膜と類似の膜に囲まれた膜小器官です。
生体膜という言葉がありますがこれは、細胞膜と、これらの細胞小器官を覆う膜の総称になります。
細胞膜の構成
細胞膜は脂質やタンパク質、糖脂質などから構成されます。
細胞膜の総重量の約50%を占めるのがリン脂質です。
脂質二重層
細胞膜は脂質(リン脂質とコレステロール)の疏水性基を内側に、親水性基を外側に向けた脂質二重層からなります。
例えば、ホスファチジルコリンは極性(親水性)の頭部と非極性(疎水性)の尾部を持つ両親媒性の分子です。
コレステロールや糖脂質も両親媒性です。
細胞膜の両側には、細胞外液と細胞内液がありますが、二重構造の外側はどちらも親水性のため、これらの体液と接することができます。
逆に膜の内側は疎水性部分なのでバリアとなっています。
イオンなどのような親水性の分子はそのままでは細胞膜を通過することができません。
物質の出入りを制御することが、イオンなどの選択的な輸送に重要な役割をしてます。
細胞膜を構成するリン脂質は、多くは2本の脂肪酸を持ちます。
このうちの1本の脂肪酸は、二重結合を持つ不飽和脂肪酸であることが多いです。
流動モザイクモデル
細胞膜を構成するのは脂質とタンパク質といいました。
タンパク質はモザイク上に埋め込まれており、流動モザイクモデルと呼ばれます。
細胞膜の基本構造をあらわすモデルで流動性(膜内で起こる横方向の動き)があることを表してます。
タンパク質は脂質二重層内で浮遊しており、膜の表面に沿って動くことができます。
脂質二重層の流動性
細胞膜の流動性は、膜の機能にとって重要で一定の範囲内になければなりません。
これはリン脂質の特に炭化水素尾部の性質によって決まります。
尾部が密に、整然と配列しているほど二重層の粘性が高くなり、流動性は低下します。
つまり炭化水素鎖の長さと二重結合の数が、二重層内での配列の粗密を決めるので流動性も影響されます。
炭化水素が短いほど、相互作用が少なくなり、流動性は増します。
炭化水素が不飽和な方の尾部では、2重結合のところで小さな折れ曲がりが生じるので、尾部をきっちり並べるのは難しくなります。
そのため不飽和炭化水素鎖でできた尾部が多いほど、二重層の流動性が高くなります。
例えばバターやラードなどの動物性油脂は飽和しているものが多く、室温で固体です。
植物油は一般に不飽和で室温でも液状です。
マーガリンは室温で固体なるように、水素を添加して2重結合をなくしてあります。
これと同じです。
コレステロールは流動性に重要
流動性で重要なのがコレステロールです。
コレステロールはくさびのように、ところどころ、不飽和炭化水素鎖の尾部の折れ曲がりによって生じたリン脂質分子間の隙間を埋めています。
ファンデルワールス相互作用の結果、脂肪酸の炭化水素部分が安定化するので、流動性が低下し、膜の流動性を低くして膜を安定化させています。
細胞外側にはホスファチジルコリンやスフィンゴミエリン、糖脂質が多い
細胞外側には、ホスファチジルコリンやスフィンゴミエリン、糖脂質が多く、細胞質側には、ホスファチジルセリンやホスファチジルエタノールアミンが多く配置されます。
覚え方は
汗をかくのは内側 のイメージでいきましょう(←適当に考えたので他にわかりやすいゴロなどあれば教えてください)
ホスファチジルエタノールアミン
ホスファチジルセリン
で汗
細胞質側=細胞の内側
です。
これだけ覚えれば大丈夫ですが、なぜそうなるのか知りたい人だけ。↓
二重層に含まれるリン脂質の種類が表と裏でちがうのはゴルジ体にあります。
ゴルジ体の膜には脂質を取り扱うフリッパーゼと言う酵素群があります。
この酵素は、二重層のゴルジ体内腔に面している側から、特定のリン脂質を取り除き、細胞質側に面している単分子層に取り込みます。
少しだけ細胞膜の合成について見ます。
小胞体から始まります。遊離している脂肪酸からリン脂質がつくられると小胞体膜の細胞質側に埋め込まれます。すると酵素によりランダムにリン脂質が反対側に振り分けられます。その後、膜はゴルジ体に移動します。フリッパーゼが細胞質に接していない方の単分子層から選択的にホスファチジルセリンとホスファチジエタノールアミンを取り除き、細胞質側へ移動させます。
これが偏りの原因です。
脂質だけでなくタンパクと糖脂質も分布に偏りがあります。
膜タンパク質にとって脂質二重層内での向きは機能を発揮するために必須であることが多く、位置の決定とその維持は非常に重要です。
糖脂質は特に偏った分布していて、主に細胞質に接していない方の層だけに存在します。糖脂質分子の糖残基はゴルジ体から取り込むのですが、この化学修飾を行う酵素群は、ゴルジ体の内部にしか存在しないので、細胞質に接していない側の膜の脂質分子だけに、糖残基質が付加されます。糖脂質が一旦形成されると、これらを細胞質側の層へ移すフリッパーではないので、糖脂質は合成された側にとどまります。
膜は小胞の出芽と融合により輸送されます。図の通りなのですが細胞質に面していた面はずっと細胞質側を向きます。逆も同じです。つまり向きは常に維持された状態ということです。
脂質ラフト
細胞膜上には、スフィンゴ脂質とコレステロールを多く含む領域があり脂質ラフトと言います。
脂質ラフトにはグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質などが集積しています。
情報伝達や膜輸送など の多くの生命現象に関連するとされます。
タンパク質
膜タンパクとリン脂質は主に疎水性相互作用などの非共有結合でくっついてます。
膜タンパク質には、脂質二重層を貫通したり、1部を埋没させたり、膜の外側、あるいは内側に結合するような様々な形態なものがあります。
脂質2重層がバリア構造として働き膜に存在する一方でタンパク質は、膜自体、あるいはその膜を持つ細胞に個性を与えてます。
タンパク質の持つ主な働きは
輸送体:そのままでは膜を通過することができない、分子を膜の反対側に輸送する
受容体:特定のシグナル分子(リガンド)を結合し情報を細胞内に伝える
酵素:基質となる分子の分解や、リン酸化修飾などを行う
他にも、細胞同士を接着させるタンパク質、細胞同士の認識に関わるタンパク質などがあります。
まとめ
ポイント
・脂質(リン脂質とコレステロール)の疏水性基を内側に、親水性基を外側に向けた脂質二重層
・膜タンパクとリン脂質は主に疎水性相互作用などの非共有結合
・スフィンゴ脂質とコレステロールを多く含む領域があり脂質ラフト