生体エネルギー代謝

脂質代謝(消化吸収輸送)を図でわかりやすく解説【薬剤師国家試験】

今回は生物の脂質代謝について解説します。

ポイントは

ポイント

脂質の吸収のされ方

脂質の運搬機構

リポタンパク質の特徴

このポイントを中心に勉強していきましょう!

脂質の消化は中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸を分けて理解

 消化、吸収に関しては中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸に分けて整理しましょう。
まずはよく聞かれやすい長鎖脂肪酸からみましょう。

長鎖脂肪酸の消化、吸収

 食べ物(外因性)から摂取されるトリアシルグリセロール(TG/中性脂肪)は主に小腸で分解されます。
(↑図では胃でTGが分解されてますが長鎖脂肪酸の場合は胃のリパーゼが効かないのでTGの形で小腸に移動します。中鎖脂肪酸は後で解説)

まずTGは十二指腸で胆汁酸で乳化されます。
その後、膵臓から分泌される膵リパーゼにより1位と3位のエステル結合が加水分解され主に2ーモノアシルグリセロール(2ーMG)と脂肪酸に分解されます↓。

膵リパーゼは水溶性なのでTGに作用しにくいので先に乳化して作用しやすくしています。

2ーMGと長鎖脂肪酸は吸収されやすくするために胆汁酸によってミセルを形成します。
小腸粘膜内に吸収後、脂肪酸は活性化されてアシルCoAになり、2ーMGと結合してTGへ再合成されます。

TGはリン脂質やコレステロールなどと一緒にアポタンパク質という特殊なたんぱく質と共にリポタンパクのキロミクロンを形成します。
(リポタンパクについてはこの後詳しく解説します。)

キロミクロンはリンパ管に入り胸管、左鎖骨下静脈に入っていきます

中鎖脂肪酸

 短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は胆汁酸がなくても吸収されるのが、長鎖脂肪酸と大きく異なります。

中鎖脂肪酸は胃で胃リパーゼにより分解され、ほとんどグリセリンと脂肪酸に分解されます。

中鎖脂肪酸は水との親和性が高く加水分解されやすいからと考えられています。
小腸内では既に脂肪酸となっており、水との親和性も高いので、ミセル化しなくても吸収されます。
アルブミンと結合することで門脈から肝臓に直接運ばれます
グリセロールはそのままの形で輸送されます。

脂質の輸送

 脂質の輸送に関しても今見てきた外因性(食事から摂取)と内因性(体内で生合成)で分けてみましょう。

外因性脂質の輸送

 今まで見てきた吸収過程(長鎖脂肪酸の方)の続きです。
キロミクロンは血中に入った後、リポタンパク質リパーゼ(LPL)によってTGが分解され、遊離脂肪酸とグリセリンになります
遊離脂肪酸は各組織へ取り込まれます。

TGが減ったキロミクロンはキロミクロンレムナントと呼ばれ、さらに肝性リパーゼ(HL)で分解されて肝臓のレムナント受容体に結合して取り込まれます

次は内因性の輸送についてみましょう。

内因性脂質の輸送

 肝臓ではTGとコレステロールの合成が起こります。
脂肪組織から遊離脂肪酸が供給されると肝臓でTGが合成されます。
コレステロールは「ああ。えっちなメスラッコ」というゴロの順で生成されるのを思いだしましょう。

 肝臓で合成されたTG(内因性)はコレステロールやリン脂質、アポタンパク質B -100とVLDLを形成します。
リポタンパク中のコレステロールの大半がエステル型で、エステル化はACATが行います。

VLDL中のTGは脂肪組織でLPLによる分解を受け、遊離脂肪酸とグリセリンになります。
遊離脂肪酸は組織内に取り込まれます。

TGの含有量が減るとVLDLは中間体のIDLに変化
HL(肝性リパーゼ)によりさらに含量が低下するとコレステロールが主成分のLDLへと変化します。

LDLはアポタンパクB -100を介して抹消組織のLDL受容体に結合して取り込まれます。

末梢組織で余ったコレステロールはLCATによりエステル化されHDLに取り込まれて肝臓に帰っていきます

 

リポタンパク質

 今まで見てきたように、TGやコレステロールエステルは水に溶けにくいのでアポタンパク質とリポタンパク質を形成することで全身に運搬されます

リポタンパク質の構成は外側に極性分子(アポタンパク、リン脂質、遊離コレステロール)、内側に非極性分子(TG、Choエステル)が配置されます。

アポタンパクの役割

アポタンパクは

  • リポタンパクの形成と安定化
  • 受容体のリガンド
  • 酵素の活性化(LPLなど)

があります。

リポタンパク質ごとに構成するアポタンパクにも違いがありますが、押さえておきたいのがアポB-100です。
アポB-100はLDLが末梢組織に取り込まれる際にLDL受容体に結合するのに必要です。

リポタンパク中のChoはほぼエステル型

コレステロールは遊離型とエステル型がありますが、リポタンパク中の大部分がエステル型です。

なので極性のある遊離型は外側、非極性のエステル型は内側に存在します。

リポタンパク中にChoが入るにはエステル型になる必要があるので

ACAT(VLDLに乗り込む時)

LCAT(HDLに乗り込みとき)

によりエステル化されます。

 

リポタンパク質の特徴

リポタンパクは5種類あります。

密度の違いにより

  • キロミクロン
  • VLDL(very low density lipoprotein)
  • IDL(intermediate density lipoprotein)
  • LDL(low density lipoprotein)
  • HDL(high density lipoprotein)

の5種類に分類されます。

 リポタンパク質の密度は、「キロミクロン<VLDL<IDL<LDL<HDL」で、密度の小さいリポタンパク質(下図の左側)ほど脂質を多く含んでいます。
これは英語訳を見ればわかりやすいと思います。

比重が低いほど脂肪の量が多くイメージするとこんな感じ↓

 

キロミクロンは外因性、食べ物由来の脂質の輸送をしてます。

VLDL、IDL、LDLは内因性の脂質輸送、HDLは末梢のChoを肝臓に運送するので逆輸送系と言われます。

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