勉強のポイント
腎不全は急性、慢性に分けて考えましょう。
このまとめでは急性腎不全についてまとめます。
慢性腎不全はこちら↓を御覧ください
急性腎不全はどこが障害されているかを理解すると、病態を理解できます。図で確認してみましょう。
急性腎不全とは??
急性腎不全は正常な腎機能が短期間(数時間~数日)の間に障害された時のことを言います。
場所の違いで
- 腎前性
- 腎性
- 腎後性
と分けることができます。
腎前性
腎前性はショックや脱水(腎より手前で起きている)などの循環不全で腎血流量の急激な低下により引き起こされます。腎臓自体に問題はないので老廃物は除去することができます。
腎性
腎臓自体が障害されて起こります。結果濾過、再吸収の機能が障害されます。シクロスポリンやアミノグリコシド系、NSAIDs,シスプラチンなどの薬剤性による急性尿細管壊死などが原因になりことがあります。
腎後性
腎後性は尿がうっ滞して排泄されない状態です。前立腺肥大症や尿路結石などの尿のうっ滞で引き起こされます。
症状は?
急性腎不全の症状はまず乏尿(400ml/日以下)、無尿(100ml/日以下)です。
腎臓では尿を作っています。その機能が障害されているわけなので当たり前ですね。
そして腎臓は基本機能は排泄です。それが障害されるので排泄がしづらくなります。
- 尿が出づらい→体液量増加→血圧上昇
- タンパク代謝排泄低下→BUN⇑(基準値はブンブンハニマルで覚えましょう)
高リン血症になると、リン酸Caの析出などによりCaの血中濃度が下がるので低Ca血症になることも知っておきましょう。
リンとカルシウムは密接な関係があるので、また別のページにまとめますが腎不全では低Ca血症になることは押さえてください。
腎前性、腎性の違いは??
腎前性と腎性の特徴の違いは国試で頻出なので整理しましょう。
ポイントは腎前性は濃い尿が少量出る、腎性は等張の尿がたくさん出るイメージです。その理由をまとめましょう。
国試で聞かれるのは下の表のような特徴です。
腎前性
腎前性は腎血流量の低下が原因です。
尿量は少ないですが、腎自体は正常なので濾過、再吸収の過程は問題ありません。ろ過後の血液はきれいな状態になっています。
- 分子の尿中Crにのみ着目しましょう。(尿中Cr/血中Crでは分母の血中Crの方は不変)
腎前性では濾過が正常に行われるので尿中Crは腎性よりも高いので尿中Cr/血中Crは高くなります。 - 尿浸透圧は高くなります。
理由は少ない量の尿の中に老廃物(Na以外)が多くあるためです。Naは再吸収の過程で体内に吸収されるので尿中のNaは低下します。
腎性
腎性は腎そのものがだめで
濾過、再吸収が障害されているのでろ過後の血液には不純物がまだ存在している状態です。
- 尿中クレアチニン比は低下
濾過の機能が正常でないので、尿中のクレアチニンは少ないです。 - 浸透圧は低い
老廃物も濾過できていないので腎前性に比べて尿の浸透圧は低いです。 - Na濃度が高い
Naの再吸収はできないのでNa濃度が高いです。
薬物治療は??
急性腎不全の薬物治療はほとんど慢性腎不全のものと一緒です。
なぜその薬を使うのかを暗記するのではなく、この症状があるからこの薬を使うというふうに考えてください。
体液貯留
体液貯留で起こる高血圧や浮腫にはループ系利尿薬(フロセミド、トラセミド)を使います。
利尿薬はいくつか種類がありますがフロセミドが臨床ではよく使用されます。
理由は腎不全になると高カリウム血症にになるのでスピロノラクトンなどのK保持性の利尿薬は避ける必要があります。
サイアザイド系(チアジド系)は無効とされているのでフロセミドを使います。
高K血症
高K血症に使用されるのはポリスチレンスルホン酸Naです。
ポイントは消化管内でK+を吸着して吸収を抑制することです。
高リン血症
高リン血症の薬はゴロで高K血症の薬と覚えましょう。
沈降炭酸Ca、炭酸ランタン、セベラマーも消化管内で食物由来のPと結合します。
沈降炭酸ランタンは沈後と考えて食直後に飲む薬とおぼえましょう。
セベラマーはマーが「前のま」とかんがえて食直前と覚えましょう。
同じ理屈でビキサロマーという高リン血症に使う薬も食直前に服用するので一緒に覚えておきましょう。
まとめ
腎前性、腎性の違いはかなり聞かれるので必ず押さえましょう!
ポイント
- 腎前性腎不全は濃い尿が少量出る
- 腎性腎不全は等張の尿がたくさん出る
- 排泄障害で高K,P血症になる
- 高リン血症には「用意したポカリと炭酸、全てラマに飲まれ足りん」
慢性腎不全は急性腎不全とポイントは同じです。
2次性副甲状腺機能亢進症など慢性腎不全で生じやすいものを中心にまとめてます。
腎の範囲では避けて通れないネフローゼ症候群は機序を確認するだけで簡単に整理できます。