代謝拮抗薬は
- 核酸類似薬
- 核酸合成阻害薬
- 葉酸類似薬
- シタラビン類
に分けてまとめます。
がん細胞の増殖を抑制するため、細胞周期のS期(DNA合成期)に作用するものが多いのが特徴です。
核酸類似薬
核酸類似薬には
- プリン系
- ピリミジン系
に分けられます。
プリン系
メルカプトプリンはDNA、RNAの生合成阻害薬です。
メルカプトプリンはチオイノシン酸となり、イノシン酸がアデニル酸とグアニル酸になるのを阻害します。
フェブキソスタット、トピロキソスタットは血中濃度を上げるため禁忌です。
適応には急性白血病や慢性骨髄性白血病があります。
ピリミジン系
ピリミジン系の代表薬にフルオロウラシル(5-FU)があります。
作用機序はチミジル酸合成酵素の阻害です。
チミジル酸の合成阻害によりDNA生合成を阻害します。また、代謝物である5-FUTPがRNAに取り込まれ、機能障害を起こすことによるRNA合成阻害もあります。
プロドラッグに
- テガフール:作用持続
- ドキシフルリジン:ターゲット化
を目的としたものがあります。
適応は消化器がんや乳がんです。
またトリプルプロドラッグとして
カペシタビン=ドキシフルリジンのプロドラッグ
があります。
下痢の副作用を軽減する目的でつくられたものですが60%ほどの頻度で手足症候群が見られます
TS-1配合剤は
- テガフール:5FUのプロドラッグ
- ギメラシル:5FUの作用増強
- オテラシル:5FUの副作用軽減
からなります。
TS-1は胃がんの第一選択薬です。
副作用には劇症肝炎、血液障害、下痢による脱水などがあります。
核酸合成阻害薬
ヒドロキシカルバミドはリボヌクレオチドレダクターゼを阻害して
リボヌクレオチド→デオキシリボヌクレオチド
への変換を阻害します。
適応は慢性骨髄性白血病です。
葉酸類似薬
葉酸類似薬には
- ペメトレキセド
- メトトレキサート
があります。
ペメトレキセド
ペメトレキセドはジヒドロ葉酸還元酵素とチミジル酸合成酵素を阻害して、DNA合成を阻害します。
メトトレキサート
メトトレキサートはジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することでジヒドロ葉酸(DHF)→テトラヒドロ葉酸(THF)への変換を阻害しDNA合成を阻害します。メトトレキサート単独で使用すると正常な細胞のDNA合成も阻害してしまうので副作用を回避するためにホリナートを併用します。
ホリナートCaはジヒドロ葉酸還元酵素に関係なく正常細胞に取り込まれることで活性型葉酸となり核酸合成を救援します。なぜ正常細胞に働くのかというと、がん細胞は一般的に能動的にものを取り組むことができないものが多いからです。メトトレキサートを高濃度で投与することで受動的に細胞内に取り込ませて細胞増殖を阻害します。その後にホリナートを入れることで正常細胞にホリナートを能動的に取り込ませることで救済します。
5FUとの併用ではホリナート・テガフール・ウラシル療法と言い、結腸、直腸がんでの抗腫瘍効果の増強に働きます。
ホリナートの光学活性がレボホリナートです。
レボホリナートは5FUの増強目的で使用します。
ホリナートの代謝物であるメチレンテトラヒドロ葉酸が5-FdUMPとチミジル酸合成酵素と強固な複合体を形成します。これにより、チミジル酸合成酵素の解離を遅らせ酵素活性を阻害することで5-FUの活性を増強します。
シタラビン類
シタラビンとゲムシタビンがあります。
シタラビン
シタラビンはDNAポリメラーゼ阻害作用を持ちます。
代謝物であるシタラビン三リン酸ヌクレオチド(Ara-CTP)がDNA合成の材料であるデオキシシチジン三リン酸(dCTP)とデオキシチミジン三リン酸(dTTP)と競合してDNAポリメラーゼを阻害します。
適応には急性白血病や消化器がんがあります。
シタラビンのプロドラッグとして
- シタラビン オクホスファート
- エノシタビン
があります。
ゲムシタビン
ゲムシタビンは代謝されて
- 3リン酸化物がデオキシシチジン三リン酸(dCTP)と競合
- 2リン酸化物はリボヌクレオチドレダクターゼを阻害
することでDNA合成を阻害します。
適応は膵癌や非小細胞肺がん、胆道がんなどの固形がんに使用されます。