患者が多いせいか、高尿酸血症は簡単な割によく出ます。
また、生物の核酸の分野と関係のある分野なので、それを意識して勉強すると生物で核酸を勉強するときに馴染みやすくなります。
では、生物分野を少し交えてみていきます。
高尿酸血症は、その名の通り尿酸が多い状態です。痛風や尿路結石になりやすくなります。
よくビールの宣伝でプリン体ゼロと銘打ってるものを見たことがあると思います。これはプリン体を少なくすることで普通のビールよりは高尿酸血症になりにくくしているのです。
まず尿酸のでき方から見てみましょう。
尿酸のでき方
核酸は
- プリン塩基(アデニン,グアニン)
- ピリミジン塩基(チミン,シトシン,ウラシル)
に分類できます。
不要になった核酸は、
- プリン塩基の場合はキサンチンから尿酸に
- ピリミジン塩基は尿素(とアセチルCoA)になって排泄されます。
(アセチルCoAは脂肪酸合成などに再利用されます。)
プリン塩基から尿酸ができ排泄されますが、尿酸はそんなに水に溶けやすくないので濃度が高いと結晶として析出してしまいます。これが痛風や尿路結石を引き起こします。
治療薬
治療薬は、
- 痛風発作の治療薬
- 尿酸の生成を抑える薬
- 尿酸の排泄を進める薬
- その他(尿酸分解酵素)
尿酸産生阻害薬
尿酸産生阻害薬は、キサンチンを尿酸に変換する酵素:キサンチンオキシダーゼを止めます。
止め方には2通りあります。
競合阻害
キサンチンオキシダーゼはプリン骨格を持っている物質を変換するので、プリン骨格を持つキサンチンに似た物質を入れてあげる。
薬はアロプリノールがあります。
アロプリノールには上記の作用の他に、キサンチンに代謝されるとオキシプリノールになりオキシプリノールがさらにキサンチンオキシダーゼ自体を阻害する作用を持ちます。
キサンチンオキシダーゼ自体を阻害
プリン骨格は持ってませんが、キサンチンオキシダーゼに強く結合し阻害します。
フェブキスタットやトピロキスタットがこの分類の薬です。語尾に~スタットが付きます
併用禁忌薬
メルカプトプリン、アザチオプリンは尿酸産生阻害薬とは併用禁忌薬です。メルカプトプリン、アザチオプリンはプリン骨格を持つのでキサンチンオキシダーゼで尿酸に代謝されます。なので尿酸産生阻害薬に代謝を邪魔されてしまいます。
尿酸排泄促進薬
排泄促進の方法は2通りあります。
クエン酸で尿を酸性化し、イオン形の尿酸を増やして水に溶けやすくするのが1つ。クエン酸だけ覚えてください。
もう1つは尿細管のトランスポーターで分泌して尿に流す作戦です。
これには、プロベネシド、ベンズブロマロン、ブコロームがあります。プロベネシドとベンズブロマロンの違いがよく聞かれます。
ベンズブロマロンとブコロームは尿酸の尿細管分泌↑︎、再吸収↑で尿酸排泄の方向を向いていますが、
プロベネシドは尿細管分泌を司る有機アニオントランスポーター(OAT)を抑えてしまいます。(再吸収は促進します。)
ブコロームは上記の作用もありますがメインはNSAIDsなので抗炎症さようです。
もともとは、プロベネシドはペニシリンの血中濃度を上げるために作られた薬です。このときは尿細管のOATの阻害をしてペニシリンを排泄されにくくしていました。それが今ではプロベネシドのイマイチな点として残っています。
相互作用としてOATで排泄されるペニシリン系とメトトレキサートは血中濃度が上がってしまします。
発作の治療
発作の治療は、発作が起きる時と起きた後で変わります。
発作直前または直後
痛風は関節に溜まった尿酸を好中球が貪食することから始まります。好中球が炎症物質を出し、さらに多くの好中球が炎症箇所に集まって(遊走されて)きます。
この好中球の遊走を抑えるのがコルヒチンです。
※細胞小器官の微小管(チュブリン)にくっつき微小管形成を阻害し、好中球の炎症箇所に行く能力を低くします。
痛風発作が起きそうなタイミングは感覚的にわかるらしく、その時にコルヒチンを服用するのが一番効果的です。
発作後
NSAIDsで炎症物質を抑えます。インドメタシンなどが使われますが、NSAIDsとだけ覚えておけばOKです。
その他:尿酸分解酵素
ラスブリカーゼを覚えておきましょう。抗がん剤などで起こる腫瘍崩壊症候群に対して使われます。
抗がん剤を使うと、がん細胞が死に、細胞の中身が血中に放出されます。効きが良いほどがん細胞がたくさん死ぬので核酸も大量に放出されます。高尿酸血症になってしまうので、出てきた尿酸をアラントインと過酸化水素に分解し、尿酸値を下げます。