脂質異常症

      2018/07/22

脂質異常症全体像

脂質異常症のマインドマップ

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はじめに

この分野は生物の「分子レベルの生命理解」の範囲ともかなりかぶっています。そして脂質異常症の患者さんも多いので薬理でも病態でも引っ張りだこの分野です。

まずは体の中でのコレステロール(Cho)とトリグリセリド(TG)の流れを見てみましょう。

Choの供給源

食物として摂取されたコレステロールは腸管を通って胆汁酸に乳化され吸収されます。そして肝臓に運ばれます。これが外因性のコレステロールです。

一方、肝臓の中でもアセチルCoAからコレステロールは作られます。これが内因性のコレステロールです。

アセチルCoA→コレステロール の合成の流れはいいゴロがあるのでこの機会に覚えましょう。

ゴロ:あぁHなメスラッコ

コレステロールの体内旅路

脂質異常症全体像

コレステロールの体内での流れを追ってみましょう。コレステロールを旅人、トリグリセリドを荷物、リポタンパクを船だと思うと理解しやすいです。

肝臓の中のコレステロール(旅人)はトリグリセリド(荷物)と一緒にリポタンパク質(船)に詰め込まれて血管に送り込まれます。この船の名前がVLDLです。(コレステロールやトリグリセリドは油なので水に溶けません。なので梱包して血中に送り出すのです。)

VLDLは血中を流れていき脂肪組織や筋肉にトリグリセリドを配り歩きます。そうするとVLDLの中のトリグリセリドが減っていき、LDLと呼ばれるリポタンパクになります。LDLは末梢組織でLDL受容体に結合し細胞内に取り込まれます。その中でコレステロールはエネルギーなどとして使われます。

使い切れなかったコレステロールはまたリポタンパクに詰め込まれて肝臓に送り返されます。この帰りのリポタンパク(船)の名前がHDLです。

ここまでがコレステロールの旅路です。

悪玉、善玉、中性脂肪?

悪玉コレステロール、善玉コレステロール、中性脂肪という言葉を聞いたことがあると思います。先ほど出てきたLDLが悪玉、HDLが善玉コレステロールと呼ばれます。中性脂肪とはTGのことです。

全身にばらまかれたLDLは取り込まれた先で酸化LDLとなり動脈硬化を引き起こすので悪玉コレステロールと呼ばれます。

HDLは余ったコレステロールを肝臓に回収してくれるので対比して善玉と呼ばれるようになりました。

治療薬

薬は大きく分けると、血中の[コレステロール]を下げる薬と[トリグリセリド]を下げる薬に分類できます。

脂質異常症薬の作用点

コレステロール↓系

コレステロール↓系の薬には3つあり、スタチン系、異化促進薬、吸収阻害薬です。

スタチン系

ゴロ「あぁHスラッコ」のHMGCoA→バロン酸 の部分のHMG-CoA還元酵素を阻害します。

語尾は~バスタチンです。ロスバスタチン、プラバスタチンなどです。この語尾のことをステムと呼びます。みんな「スタチン系」と呼んでますが、実はステムは「バスタチン」です。バカらしい問題ですが、実際に「ロスバスタチンのステムはなにか?」という問題が国試によく出ます。答えは「バスタチン」なので注意してください。

コレステロール異化促進薬

プロブコールを覚えてください。この薬は2つの作用があります。

  1. [Cho]↓
    肝臓で「Cho胆汁酸→排泄」の部分を促進します。そうすると 肝臓内Cho↓→LDL受容体↑で集める→血中[Cho]↓という流れができます。
  2. 酸化LDL防止
    末梢の細胞内でLDLは「LDL→酸化LDL→動脈硬化」の流れをたどりますが、プロブコールは酸化LDLになるのを防ぎます。

吸収阻害薬

この分類の薬は、腸管からのコレステロールの吸収を抑えます。なんかトクホの黒烏龍茶みたいな作用ですね。

陰イオン交換樹脂

薬は、コレスチラミン、コレスチミドを覚えてください。

陰イオン交換樹脂はその名の通りイオン(COOとか)を捉えて、樹脂の中に取り込みます。
胆汁酸はイオン(RCOO)なので、陰イオン交換樹脂とくっついて腸には吸収されず便として排泄されます。

その結果、外因性(食事由来)のコレステロールが減り、肝臓はやばいと思い、コレステロールを吸収しようとさらに多くの胆汁酸を派遣します。そのために肝臓は肝臓のLDL受容体を増加させて血中のコレステロールを集め、異化して胆汁酸を作ります。これで血中[コレステロール]も減らせました。

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

エゼチミブだけです。エゼチミブは体に吸収されてから小腸トランスポーターを阻害し、コレステロールの吸収を抑えます。

その他

ガンマオリザノールは、今まで上記でやったコレステロール↓の作用を全て持ちますが、作用は弱いです。

主な作用は吸収阻害で、プラスαの作用としてコレステロールの異化促進、合成抑制の作用があります。

トリグリセリド↓系

フィブラート系

フィブラート系の作用は2つあります。主な作用はPPARα刺激作用です。もう1つはコレステロールの合成阻害です。「あぁHなメスラッコ」の流れを抑制します。

PPARα刺激→トリグリセリド↓の流れはかなり聞かれますので、しっかり覚えましょう。

↓※この解説は流れのとこで触れとこう。

コレステロールの旅路の所でも扱いましたが、トリグリセリドはVLDLから身体中に分配され、リポタンパクリパーゼ(LPL)によってグリセリンと遊離脂肪酸(FA)に分解され利用されます。

 

PPARαを刺激するといろんな作用が生じますが、国試で知っておきたいのは次の2つです。

  • β酸化の活発化→TG,VLDL合成↓

β酸化で脂肪酸→アシルCoA→エネルギー源になるのでTGが減ると共に作られなくなります。

  • 血管内皮のLPL活性化

TGがLPLにより分解されるので血中[TG]↓低下します。

いい薬なんですが、重大な副作用があります。横紋筋融解症です。しかもスタチン系と併用すると発症率が増えてしまいます。発売当初、作用機序が違うのでよく併用されていたようで、横紋筋融解症が報告されたそうです。

 

LPL活性化薬

デキストラン硫酸エステルを覚えておきましょう。血清中のTGをLPLに分解させTG↓です。作用はLPL活性化のみです。

 

ニコチン酸系

薬名はニコモール、ニセトリモールがありますが、脂質異常症の問題で出てきたら「あ、ニコチン酸系ね」と分かれば良いです。

これらの薬は、TGを脂肪組織に閉じ込めて出てこないようにします。あと、LPLの活性化作用もあります。

ニコチン酸系なので、血管拡張作用があり、顔面紅潮の副作用がありますので連想できるようにしといてください。

その他

イコサペンタエン酸エチル(EPA)を扱います。

魚油です。この薬は作用はそれほど強くないですが何でも屋でTGもChoも下げてくれます。

TGとChoの腸管からの吸入抑制、肝臓での合成抑制の作用があります。あとLPLの活性化作用も有します。

 - 代謝系, 薬理

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