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電子伝達系は水力発電と同じ!【ゴロと図で分かりやすく解説】

 

薬学生
電子伝達系ってATPを生成するやつだよね。どうやって覚えればいいかな?重要なのは何?

 

本記事の内容

  • 電子伝達系はATPを得る最終段階
  • 国家試験で大切なポイントを押さえながら各反応を解説
  • 重要ポイントの覚え方

電子伝達系はATPを大量Getする最終段階

 「解糖系→クエン酸回路→電子伝達系」の最後の段階です。

 

電子伝達系は、解糖系とクエン酸回路から得られたNADHやFADH₂を利用してATPを作り出します

NADHやFADH₂の電子はミトコンドリアの内膜にある複合体を経由し、伝達されます。

 

電子が各複合体を通るときに、プロトン(H⁺)が膜間腔に汲み出されます。
(イメージは電池!電子が流れるとエネルギーができるからプロトン汲み出せる)

 

外側のプロトン(H⁺)の濃度が高くなると、濃度勾配を利用して、プロトンはATPシンターゼ複合体という道を通り、マトリックス内に戻ります。

 

このときにATP合成酵素により大量のATPができるという仕組みです。

 

電子伝達系のポイントは複合体と電子くれるやつを覚える

電子伝達系キーワードは

  • 電子供与体(電子くれるやつ)と複合体の関係
  • プロトン勾配

です。

 

電子伝達系の各反応は電子の動きに注目

上記のキーワードを中心にそれぞれの複合体での反応を見ていきます。

複合体ⅠはNADHが補酵素Qへ電子の輸送する

スタートは複合体Ⅰからです。

複合体Ⅰは解糖系、クエン酸回路で得られたNADHから補酵素Q(CoQ)への電子の輸送を触媒します。
(補酵素QはユビキノンQとも言います。)

 

このときに4H⁺がマトリックスから膜間腔に汲み出されます。

 

電子を受け取った補酵素Qは膜内を自由に動けるので、複合体Ⅲへと電子を輸送します。

つまりNADHからの電子は複合体Ⅰ→Ⅲ→Ⅳと経由していきます。

複合体Ⅱはコハク酸からの電子を補酵素Qへ伝える

重要なのは

  • FADH₂から補酵素Qへ電子が伝達されること
  • コハク酸デヒドロゲナーゼが複合体Ⅱの一部であること
  • プロトン(H⁺)が外に汲み出されない

です。

複合体Ⅱも補酵素Qヘ電子を伝達するのは複合体1と同じです。

違いは電子の供給源がFADH₂であることです。

 

FADH₂はクエン酸回路でコハク酸デヒドロゲナーゼにより触媒される

⑥フマル酸→コハク酸

の反応で、生成されます。

このコハク酸デヒドロゲナーゼは複合体Ⅱの一部です。

クエン酸回路の酵素でコハク酸デヒドロゲナーゼだけが内膜にあるというのが結びつくと思います。

 

複合体Ⅱでも電子が伝達されエネルギーが発生していますが、

ATP産生系を動かすのに十分ではないため、プロトン(H⁺)が汲み出されません。

 

NADHの電子は複合体Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ

FADH₂の電子は複合体Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ

電子が通過し、汲み出されるプロトン(H⁺)の量が違うので最終的にできるATPに違いが生まれます。

 

 

複合体Ⅲは補酵素QからシトクロムCに伝達

重要なのは

  • 補酵素QからシトクロムCへと電子が伝達
  • プロトンが汲み出される

ことです。

複合体Ⅲはシトクロムレダクターゼ(還元酵素)とも呼ばれ、還元型補酵素Qの酸化を触媒します。

この酸化還元反応でできた電子が、多段階の過程を経てシトクロムCに渡されます。

ここでの反応は少し複雑なので割愛しますがキノンサイクルと呼ばれています。

 

複合体Ⅳは電子をO₂へ渡す

複合体Ⅳはシトクロムcオキシダーゼです。
オキシダーゼは酸化酵素という意味です。

 

シトクロムcを酸化することで、酸素へ電子をわたします

ここでもプロトン(H⁺)が汲み出されます

ATPシンターゼは水力発電と同じ

いよいよATPを生成する段階です。

複合体Ⅰ~Ⅳの反応で生じたミトコンドリア内膜を挟んでのプロトン濃度勾配がポイントです。

 

ミトコンドリア内膜を貫通するルートがあり、プロトンはその道を通りマトリックス内に戻ります。

このルートがATPシンターゼです。

 

例えると、水力発電です。

高いところから低いところヘ水が移動する力(プロトンが濃→低いに移動)で水車(ATPシンターゼ)を回すイメージです。

この濃度勾配のちからによりATPが得られます。

できるATPの数

グルコース1molからできるATPの数は30or32です。

 

この違いはNADHかFADH₂かの違いです。もっと言えばシャトルの違いです。

解糖系で出てきたリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルは、
サイトゾルからミトコンドリア内へ電子(正確にはNADHではない)を運びます。

ここで利用されるのがNADHで2.5molのATPを産生します。

 

グリセロール-リン酸シャトルは、リンゴ酸シャトルと同じく電子をマトリックス内に伝達する手段です。
リンゴ酸~シャトルとの違いは、電子がNADHでなくFADH₂の形で伝達されるということです。

FADH₂からは、1.5molのATPを得られます。

シャトルは組織により発現する場所が違うので、最終的なATPの収量が異なるというわけです。

阻害するやつはゴロと関連付けで効率よく覚える

ATPの産生を阻害する物質も国試で問われます。

 

何がどこを阻害するのか覚えればOKです。
↓を参考にすると覚えやすいかも

  • ロッテ一番:ロテノン→複合体ⅠからCoQへの電子伝達を阻害
  • アンチマイシン:「アンチ」→3文字→複合体Ⅲ内への電子の動きを阻害
  • シアン(CN⁻)化合物、CO:C(しー)→複合体ⅣからO₂への阻害

他に、

バリノマイシンはH⁺勾配を消失、
オリゴマイシンはATP合成酵素に作用してH⁺の流入を阻害

することで電子伝達系,ATPの合成を阻害します。

複合体と電子伝達体はゴロで覚える

電子伝達体と複合体は覚えましょう!

ナイフにくしざし、塩

ナ:NADH
イ:複合体Ⅰ
フ:FADH₂
に:複合体Ⅱ
ク:補酵素Q
ざ:複合体Ⅲ
し:シトクロムc
し:複合体Ⅳ
お:O₂

 

まとめ

ポイント

  • 電子を伝達することでプロトン(H⁺)を膜間腔へ汲み出す
  • プロトン勾配を利用してATPを産生
  • 電子供与体と複合体はゴロで覚える

解糖系、酸化的脱炭酸反応が苦手な人はこちらで確認↓

 

次は糖新生を見ていきましょう!

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