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分布容積とは、理論上の体液量のこと
薬理作用の強さを考える上で、血中濃度は重要な指標ですが、血中と組織中で薬の濃度が全然違うことはよくあります。
同じ量(42mg)の薬A,B,Cが全身循環に入ったとしても、
血中濃度を測ってみると、A:1mg/L、B:0.1mg/L、C:10mg/Lなど、かけ離れていることがあります。
分布容積とは、「体中全ての場所の濃度=血中濃度」とした時の理論上の体液量です。血中濃度が基準です。
分布容積を全体液量と比較して理解しよう
全部、均一に混ぜ合わさった状態が基準
薬42mgを42Lのビーカー(全体液)に溶かすと1mg/L
薬A,B,Cそれぞれ42mgが入った時の血中濃度が、
- A:1mg/Lだったら分布容積Vd=42L
全体液量と分布容積が同じ。
おそらく血中・組織中に均一に分布してる - B:0.1mg/Lだったら分布容積はVd=420L
血中が低い→組織中に多く入っている - C:10mg/Lだったら分布容積はVd=4.2L
血中が高い→組織にあまり行っていない
このように、分布容積を見ることで、大雑把に薬の組織移行性など、薬の傾向を掴むことができます。
分布容積ごとの薬のごろは後半で。
タンパク結合は、分布容積の変動要因!
血中にはアルブミンなどのタンパクがたくさんいます。
一部の薬はそれらのタンパクと結合しています。その割合がタンパク結合率です。
つまり、組織への移行性は、非結合形の割合がキーポイントです。
時間が経つと、血中と組織中の非結合形濃度が同じになります。
分布容積とタンパク非結合率の関係式の覚え方は、小魚捕獲の罠のイメージ
この式を覚えてもらうのですが、
式を覚えるときのコツは、式の導出から理解しつつ、式の感覚でも理解することです。
イメージは、入ったら出られない小魚用のペットボトルトラップです。
血漿中非結合薬が多く(fp大)、組織中の結合薬が多い(ft小)と、入ったら出られない→分布容積が大きくなります。
式を確認してみましょう。
Vpは血液量なので不変です。
非結合率が低い薬をゴロで紹介
血漿中の非結合率が低い薬は、割合が少し変わるだけで、薬理作用が大きく変わってしまうので要注意です。
非結合率fpが1%→2%に変わるだけで、Vtの項→2倍→薬理作用↑↑→副作用
みたいなことになってしまいます。
国試でも聞かれるところなので、結合率が低い薬は覚えておきましょう。
ゴロ
ゴロは「ジワってふえとる」で覚えましょう。
ジ:ジアゼパム
ワ:ワーファリン
テ:テイコプラニン
ふえ:フェニトイン
とる:トルブタミド
分布容積別に薬をゴロで紹介
全液体量を超える薬のゴロは「チョー地獄の闇組織」
ポイント
ゴロは、「チョー地獄の闇組織」で覚えましょう
- チョー:チオペンタール
- 地獄:ジゴキシン
- 闇→やあみ→アミトリプチン
- 組織:組織移行性
Vdが大きいので、血漿容積Vpは無視でき、
として計算できます。
全体液量と同じ薬のゴロは「チンピラの全体液」
ゴロは「チンピラの全体液」
- チンピラ:アンチピリン
- チンピラ→チン→尿素
- チンピラ→酒(エタノール)
血漿中濃度も組織中濃度も同じなので、
で計算できます。
血管の中だけ(血漿容積)の薬は、ゴロ「青と緑の血」
ゴロ:青と緑の血
- 青:エバンスブルー
- 緑:インドシアニングリーン
血漿中タンパクと強く結合するので、血管外にほぼ出ません。
心拍出量や肝の代謝機能の測定に使われます。
まとめ
今回は分布容積の定義から、タンパク結合率との関係を解説しました。
数式は覚えにくいですが、イメージをつけることで、覚えやすくなります。
次回は、血漿中のタンパク質について解説していきます。