法律の構成と一般法

製造物責任法(PL法)のポイント(調剤は対象外・添付文書の欠陥・免責事由)【薬剤師国家試験】

前の記事で、法律には一般法と特別法があり、この単元で扱う一般法は製造物責任法と個人情報の保護に関する法律の2つだとお話ししました。今回はそのうちの1つ、製造物責任法(PL法)です。

国試での問われ方はかなりはっきりしています。何が対象で何が対象外なのか、欠陥とは何か、免責事由は何か。この3つです。特に「調剤は対象になるのか」「添付文書の記載不備は欠陥にあたるのか」は繰り返し問われるところなので、理由とセットで押さえてしまいましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

マインドマップで見る「製造物責任法(PL法)」

法律の構成と一般法のマインドマップ(製造物責任法の概要・用語・対象・免責事由)
法律の構成と一般法のマインドマップ(製造物責任法の概要・用語・対象・免責事由)

左上に伸びているのが製造物責任法の枝です。概要 / 用語 / 対象 / 免責事由の4本に分かれています。この順番どおりに見ていきます。

概要 ─ 「過失」ではなく「欠陥」で足りるようになった

PL法の意義は、この一文に尽きます。

民法の不法行為責任と違い、過失を証明しなくても良くなった。

これだけだと何のことか分かりにくいので、具体例で考えましょう。

電気ポットを買ったところ、それが発火して家が燃えてしまったとします。PL法がなかった時代は、民法の不法行為責任で争うことになります。このとき消費者側は、製造業者の過失を証明しなければなりませんでした。「工場のチェックがとても甘かった」といったことを、買った側が立証しなければならないわけです。これは現実的にかなり大変です。

PL法ができたことで、製造物に欠陥があれば損害賠償責任が認められる形になりました。

消費者が証明すべきこと
民法の不法行為責任 製造業者の過失
PL法 製造物の欠陥

つまり、立証のハードルが大きく下がったことがPL法の意義です。ここを押さえておくと、この後の「欠陥とは何か」「免責事由がなぜ設けられているか」が自然につながります。

用語の定義 ─ 製造業者等と欠陥

製造業者等

PL法でいう「製造業者等」には、次のようなものが含まれます。

  • 輸入業者も製造業者に含まれる
  • 一般的なメーカー(自動車メーカーなど)
  • 医薬品でいえば製造販売業者(いわゆる製薬メーカー)

医薬品の製造販売業者は、自分で製造していなくても製造業者等にあたります。「作っている人」ではなく「市場に出す責任を負っている人」というイメージで捉えておくとズレません。

欠陥

欠陥の定義はそのまま覚えてください。

製造物が通常備えるべき安全性を欠いていること。

対象になるもの・ならないもの

ここが一番出るところです。

具体例 理由
対象 動産(動かせるもの)。家電、自動車、医薬品、薬局製剤 薬局製剤は不特定の客に売るものだから
対象外 不動産、調剤 調剤は特定の患者に対して行う医療サービスの一環だから
微妙 院内製剤 何人分かまとめて作るため、不特定と言えるかどうかが微妙

調剤が対象外になる理由

PL法の対象は動産、つまり動かせる「物」です。ところが調剤は、特定の患者さんに対して行うもので、医療サービスの一環にあたります。医師の診察と同じ扱いだと考えると分かりやすいでしょう。だから対象外です。

一方で、薬局製剤は対象に含まれます。同じ薬局の中の話なのに扱いが分かれるのは、薬局製剤が不特定の客に売るものだからです。「特定の患者に対する医療サービス=対象外」「不特定の相手に売る物=対象」という線引きで覚えてください。

添付文書の記載不備は「欠陥」

医薬品はPL法の対象です。そして、医薬品の添付文書の記載不備も欠陥にあたります。これはよく出るので注意してください。物としての薬そのものに問題がなくても、使い方の情報が足りなければ「通常備えるべき安全性を欠いている」と評価される、ということです。

「微妙」なものも知っておくと得

院内製剤は、教科書でも「微妙」と言われているところです。理由は、何人分かをまとめて作るため、不特定と言えるのかどうかがはっきりしないからです。

国試で院内製剤が対象か対象外かを直接問われることはまず無いと思いますが、「なぜ微妙なんだったか」を思い出せるようにしておくと、何が対象で何が対象外なのかという線引きそのものが記憶に残りやすくなります。頭の片隅に置いておいてください。

免責事由 ─ メーカーに厳しすぎないための逃げ道

ここまで「立証のハードルがすごく下がった」という話をしてきましたが、それだと製造業者側に厳しすぎる場面も出てきます。そこで免責事由が設けられています。よく出るのは次の2つです。

開発危険の抗弁

その時の科学力では分からなかった場合です。典型例は医薬品の副作用で、当時の科学水準では予見できなかったものについてまで責任を取れというのは酷だよね、という考え方です。

部品・原材料製造業者の抗弁

親会社の設計・指示のもとで下請けが部品を作っているケースです。たとえば医療機器の部品に欠陥があって被害が出たとしても、下請け会社は親会社の指示どおりに作っているのだから免責される、というものです。

免責事由はこの2つだけではありませんが、国試で問われるのはこの2つです。「開発危険」と「部品・原材料製造業者」、セットで覚えてしまいましょう。

まとめ

  • PL法の意義は、過失の証明が不要になり、欠陥の証明で足りるようになったこと(立証のハードルが下がった)
  • 欠陥=製造物が通常備えるべき安全性を欠いていること
  • 製造業者等には輸入業者も含まれる。医薬品では製造販売業者が該当し、自分で製造していなくても対象
  • 対象は動産。医薬品、薬局製剤(不特定の客に売る)は対象
  • 調剤は対象外(特定の患者に対する医療サービスの一環)。院内製剤は微妙な扱い
  • 医薬品の添付文書の記載不備も欠陥にあたる(頻出)
  • 免責事由は開発危険の抗弁と部品・原材料製造業者の抗弁の2つを押さえる

次は、もう1つの一般法である個人情報保護法の薬局実務での押さえどころに進みます。疑義照会と副作用報告がなぜ本人の同意なしでできるのか、という薬局実務に直結する話が出てきます。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

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