一般法の2つめ、個人情報の保護に関する法律です。前々回の記事で触れたとおり、この法律のもとになっているのは憲法13条(個人の尊重と公共の福祉)です。
薬局は、患者さんの氏名・住所から服用している薬、そこから推測できる病名まで、かなり踏み込んだ情報を日常的に扱う場所です。だからこの法律は、国試の知識であると同時に、明日からの実務そのものでもあります。国試で問われるのは、定義(何が個人情報か、誰が個人情報取扱事業者か)と事業者の義務の2つ。特に「本人の同意が要らない例外」は繰り返し出るので、そこを軸に整理していきましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「個人情報の保護に関する法律」

左下に伸びているのが個人情報の保護に関する法律の枝です。概要 / 定義 / 個人情報取扱業者の義務の3本に分かれています。
概要 ─ なぜこの法律が必要になったのか
理由はシンプルで、データ化に伴い、大量の情報が簡単に動かせる世の中になったからです。紙のカルテしかなかった時代は、情報を持ち出すにも物理的な限界がありました。今はそうではありません。だからこそ、個人情報をきちんと取り扱うことが求められています。
定義 ─ 「個人情報」と「個人情報取扱業者」
個人情報とは
特定の個人を識別することができるもの。
ここで押さえておきたいのが、故人の情報は個人情報ではないという点です。この法律が守るのは生きている人の情報だけ、と覚えてください。
ただし、だからといって亡くなった方の情報を雑に扱ってよいわけではありません。ぞんざいには扱わないようにという通知も出ています。法律上の定義と、現場での振る舞いは別の話だと理解しておきましょう。
個人情報取扱業者とは
個人情報データベース等を事業の用に供している者。
薬局は当然、個人情報取扱業者にあたります。次に見る義務は、そのまま薬局が負っている義務ということになります。
個人情報取扱業者の義務
義務は大きく3つです。
1. 個人データの内容の正確性の確保
要するに、持っているならちゃんとアップデートしろということです。引っ越したのに古い住所のまま、アレルギー歴が更新されないまま、という状態は望ましくありません。
2. 利用目的の特定と制限
薬局では、患者さんから個人情報をうかがいます。このとき「お薬の調剤のため」といった利用目的をきちんと定めて、その目的の範囲で使う必要があります。原則として、それ以外の目的で使ってはいけません。
そして、ここが国試の頻出ポイントです。
本人の同意が不要で個人情報を利用できる例外がある。
代表的なのが、次の2つです。
| 本人の同意が不要な例 | 場面 |
|---|---|
| 疑義照会 | 処方内容に疑わしい点があるとき、処方医に問い合わせる |
| 副作用・感染症等報告 | 医薬品による副作用や感染症が疑われる事例を報告する |
どちらも、患者さん本人の安全、あるいは社会全体の医薬品の安全性のために必要な行為です。だから、いちいち同意を取らなくてもよい、という整理になっています。
「原則は目的外利用禁止。ただし疑義照会と副作用・感染症等報告は同意不要」。この形で覚えてしまいましょう。
3. 第三者提供の制限
原則として本人の同意が必要です。
分かりやすいのは、薬局に勤めていて、患者さんの職場から「この人はどういう疾患で、どういう薬を使っているのか教えてほしい」と問い合わせが来るケースです。これはまさに第三者提供にあたるので、制限されます。職場だけでなく、学校や民間保険会社などからの照会も同じです。
こうした場合は、本人の同意をきちんと取ってからでなければ答えられません。実務では即答したくなる場面もありますが、ここは法律上はっきりしています。
同意が要るもの・要らないものを1枚で
混乱しやすいので、最後に並べておきます。
| 場面 | 本人の同意 |
|---|---|
| 定めた利用目的の範囲での利用(調剤のためなど) | 目的の範囲内なので問題なし |
| 疑義照会 | 不要 |
| 副作用・感染症等報告 | 不要 |
| 上記以外の目的外利用 | 原則不可 |
| 職場・学校・民間保険会社などへの情報提供(第三者提供) | 必要 |
まとめ
- 個人情報の保護に関する法律のもとになっているのは憲法13条
- 個人情報=特定の個人を識別することができるもの。故人の情報は個人情報ではない(生きている人だけ)。ただし、ぞんざいに扱ってよいという意味ではない
- 個人情報取扱業者=個人情報データベース等を事業の用に供している者。薬局もこれにあたる
- 義務は①正確性の確保 ②利用目的の特定と制限 ③第三者提供の制限の3つ
- 目的外利用は原則不可だが、疑義照会と副作用・感染症等報告は本人の同意が不要
- 第三者提供は原則として本人の同意が必要(職場・学校・民間保険会社などからの照会)
これで法律の土台となる「法律の構成と一般法」は終わりです。次からはいよいよ特別法に入ります。まずは身分法の中心、薬剤師法「免許編」:絶対的欠格事由・相対的欠格事由・薬剤師名簿の暗記整理から見ていきましょう。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
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