生体内で使う物質の生合成を阻害して細菌の合成を抑えます。それには、3つの方法があります。
- タンパク質の合成を阻害する
- 葉酸合成を阻害する
- 核酸合成を阻害する
1.タンパク質の合成を阻害する方法は抗菌薬のタンパク合成阻害系で扱いました。
今回は葉酸合成阻害と核酸合成阻害についてみていきます。
細胞の増殖方法とくすりの関係
細胞はDNAをコピーして増殖していくので、細菌特有のDNA複製過程を止めてれば最近の増殖を抑えられます。主な作用点は2つです。
- 葉酸合成阻害薬でDNAの材料となる核酸を作らせない
ピリミジン塩基、プリン塩基を作るのに欠かせない葉酸の合成を阻害するのがスルホンアミド系です。
- 核酸合成阻害薬でDNAを解けなくする
細胞増殖の際、DNAの二重らせんをほどいて複製します。ほどく酵素を阻害するのがニューキノロン系です。
葉酸合成阻害:スルホンアミド系
DNAの材料になるのは核酸(プリン塩基、ピリミジン塩基)です。
国試の参考書には、葉酸の合成法は書いてあるのですが、核酸を作る過程のどこで葉酸が必要になるのかは生物を勉強するまで勉強しません。今回は核酸合成の流れと絡めて薬の作用点を説明します。
スルホンアミド系の薬
薬の名前に「スルファ」が入ります。スルファメトキサゾール、(サラゾスルファピリジン※)などです。これらの薬はパラアミノ安息香酸(PABA)に似てるので、PABAと拮抗しジヒドロ葉酸の前駆物質の合成酵素を阻害します。
いちばん有名な薬はST合剤です。これはスルファメトキサゾール(S)とトリメトプリム(T)の合剤です。トリメトプリムはジヒドロ葉酸→テトラヒドロ葉酸の合成酵素のジヒドロ葉酸還元酵素を阻害します。
ST合剤は葉酸合成過程の別の場所をSとTがそれぞれ阻害するので高い抗菌力を持っています。日和見感染症のニューモシスチス肺炎に第一選択で使います。
※サラゾスルファピリジン
サラゾスルファピリジンはスルホンアミド系ですが、実は抗菌薬としては使われてません。クローン病・潰瘍性大腸炎、関節リウマチに使われています。作用機序は潰瘍性大腸炎の治療に書いてあるので参考にしてください。
核酸合成阻害薬:ニューキノロン系の薬
薬の語尾に「~キサシン」がつきます。レボフロキサシン、ノルフロキサシンなどです。
DNAの複製の際、二重らせんを解いて複製します。二重らせんをほどく酵素がDNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣです。ニューキノロン系はこの2つの酵素を阻害して、DNA合成を阻害します。
副作用には、光線過敏症があります。湿布で有名になりましたが、ニューキノロン系の薬を飲んでいる状態で日光に当たると皮膚が炎症を起こすのが光線過敏症です。
また薬剤でも出てきますが、酸性のNSAIDs(フルルビプロフェンなど)と併用すると抗GABA作用で痙攣が起きることがあります。かぜなどで頭が痛いときに解熱鎮痛剤のロキソニンなどのNSAIDsが処方されることはよくあります。そのときにスペクトラムの広い抗菌薬もとりあえず出され、併用されることがあるので注意が必要です。