はじめに
前立腺肥大症の勉強のポイントは
- 前立腺がんとの見分け方
- 治療(尿を出しやすくする)
の二つです。 男性ホルモンが関わっているので抗アンドロゲン薬と頻尿の薬を合わせて使います。
前立腺肥大症は病態や薬理、実務でも頻出の分野です。治療に使う薬も限定されているので、薬理のマインドマップも活用して学んでください。
前立腺肥大症とは
簡単に言うと前立腺肥大症とは前立腺内の内腺部分にできた良性の腫瘍が肥大して排尿困難を引き起こしている病態のことです。
この腫瘍の肥大には男性ホルモンが関与しています。また加齢も前立腺肥大症のリスクファクターの一つです。
まずは前立腺自体とその周辺の成り立ちを見てみましょう。
前立腺は尿道の周りに巻き付くような形で存在しています。前立腺には内腺、外腺と呼ばれる部分があり、内腺の内側には尿道があります。
男性ホルモンであるテストステロンが前立腺細胞に取り込まれると、テストステロンがジヒドロテストステロンへと変換されます。このジヒドロテストステロンが前立腺細胞の増殖に関与します。ジヒドロステロンの影響により肥大した前立腺の内腺部分は外線と尿道を圧迫します。尿道が圧迫されることにより排尿困難を引き起こします。
病期
前立腺肥大症の病期は刺激期⇨残尿発生期⇨(慢性)尿閉期とたどっていきます。
第一期にあたる刺激期は軽度の排尿困難が見られます。そしてもう一つ特徴的なのが夜間頻尿です。前立腺肥大症は尿が出づらく病態ではありますが、初期には逆に頻尿が見られることがよくあります。
尿閉期では尿閉、尿失禁、腎機能の低下が見られます。
完全尿閉になってしまうと腎機能障害、尿毒症といった症状が出る場合もあります。
検査
国家試験でよく聞かれるものの中に検査方法がありので必ず押さえておきましょう。
直腸内触診と血液検査です。これらの検査を行うことで、前立腺肥大症か判断すると同時に、前立腺がんとの識別を行っています。
直腸内触診での特徴は前立腺肥大症は表面がなめらかで、腫大に弾力があります。一方前立腺がんでは表面がゴツゴツと硬いという違いがあります。
血液検査では前立腺特異抗原(PSA)と前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が取り上げられます。両者ともに上昇するのですが、上がり方は前立腺がんの方が高いです。特にPSAは10ng/ml以上は前立腺がんの疑いがあります。
両方Pがつくのですぐおぼえられてしまいますが
パパ(PAPA)前立腺
で覚えましょう。
薬物治療
薬物治療で使われるのはα1遮断薬、抗アンドロゲン作用薬、5α還元酵素阻害薬、PDE5阻害薬です。
α1遮断薬は第一選択薬の位置づけです。α1遮断薬の目的は排尿促進です。α1受容体を遮断することで尿道括約筋が弛緩して排尿を促します。α1遮断薬は副作用で起立性低血圧がありますがタムスロシンやシロドシン、ナフトピジルは血管α1B阻害作用がよわいためこの副作用が生じにくいとされています。
抗アンドロゲン薬にはクロルマジノンがあります。黄体ホルモン製剤で男性ホルモンの働きを抑えることで作用します。
デュタステリドは5α還元酵素阻害作用を持ち、テストステロンがジヒドロテストステロンになるのに必要な酵素を阻害することで前立腺肥大を抑制します。
詳しい薬理作用は薬理のページに有るのでそちらで確認してください。