麻薬?非麻薬?
今回はオピオイド系の鎮痛薬について説明していきます。
青本など国家試験の参考書を見ていくと、麻薬性鎮痛薬と非麻薬性鎮痛薬に分類されているのですが、
私が最初に勉強した時、
「両方ともオピオイド受容体に作用しているのにトラマドールとか麻薬じゃないの?」と思っていました。
結論から言いますと、この「麻薬」という言葉は国が麻薬に指定したかどうかで、薬効とは関係ないということです。
ということで早速みていきましょう。
麻薬性鎮痛薬
麻薬性鎮痛薬にはモルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、メサドンなどがあります。
この4種類は「WHO三段階除痛ラダー」の三段目(強オピオイド)です。
作用や副作用は同じなので、麻薬の代表例モルヒネを例にみていきます。
モルヒネの作用点
モルヒネの作用点を見るために、痛みの伝わり方を確認します。
- 侵害刺激を知覚神経が受け取り、脊髄後角まで伝わる
- 脊髄後角から脳に伝える神経にバトンタッチ。(上行性痛覚伝導)
- 脳が侵害刺激を痛みと捉える。
ここまでが、人が痛みを認識する流れです。
その後、脳が「もう十分伝わった!」ということで、脳から痛みを抑える方向に指令が出ます。(下行性痛覚抑制系)
痛みを抑える方法は2つです。
- 上行性を抑えて侵害刺激を伝わりにくくする。
- 下行性を活性化させて、侵害刺激の伝達を抑えさせる。
この2つに関与してくる受容体がオピオイド受容体です。
オピオイド受容体は、脊髄後角と脳(延髄など)にあります。
①脊髄後角オピオイド受容体で上行性を止め、②延髄オピオイド受容体で下行性を活性化させます。
ちなみにオピオイド受容体にはサブタイプがあります。μ、κ、δ受容体です。全て鎮痛作用がありますが、μ受容体が最強の鎮痛効果をあらわします。
モルヒネの作用、副作用
中枢系の抑制
中枢系の抑制により、鎮痛、鎮咳、呼吸抑制があります。
モルヒネ中毒での死因は呼吸抑制です。μ受容体の拮抗薬のナロキソンやレバロルファン を使って対処します。
中枢系の興奮
催吐作用、縮瞳作用が起きます。
脳の化学受容器(CTZ)にとってモルヒネは毒と認識されるので、防衛本能として吐いて出そうとするため催吐が起きます。
末梢
- 止瀉作用
末梢のμ受容体が刺激され腸管のACh遊離抑制→蠕動運動↓→便秘になります。
- 胆汁分泌抑制
Oddi括約筋収縮が起こり、胆汁酸が分泌されにくくなります。
- ヒスタミン遊離作用
かゆみの誘発、喘息の悪化が起こります。
非麻薬性鎮痛薬
「非麻薬」と書いてありますが、行政的な分類なので麻薬と同じようにμ受容体を刺激する薬もあります。
トラマドール
μ受容体刺激薬です。作用、副作用などは同じです。効果が麻薬性鎮痛薬より弱いため非麻薬に入っています。
麻薬拮抗性鎮痛薬
ブプレノルフィンとペンタゾシンがこのグループに入ります。
2つとも向精神薬の第二種です。
ブプレノルフィンはμ受容体部分刺激薬、
ペンタゾシンは2つの作用があります。
- κ受容体の完全刺激
- μ受容体部分刺激と弱い拮抗作用
その他
麻薬拮抗薬
レバロルファンとナロキソンです。
モルヒネ様鎮痛作用はなく、作用はμ受容体の完全拮抗作用のみです。
モルヒネ中毒のときに使います。
鎮痛補助薬
鎮痛補助薬として、抗てんかん薬、抗うつ薬、局所麻酔薬、あとプレガバリンを用いることがあります。
- 脳が興奮していると鎮痛効果が弱くなることが有るため抗てんかん薬を。
- セロトニンやノルアドレナリンを増やすことで下行性を不活化できるので抗うつ薬(デュロキセチンなど)を。
- 興奮系の電気依存性Caチャネルを抑制するプレガバリンを。