循環器系疾患

心不全は悪循環を断て!分かりやすく解説【薬剤師国家試験】

心不全の勉強のポイント

心不全の病態・薬を理解するには、心不全に陥る悪循環を理解することが一番手っ取り早いです。悪い状況が更に悪い状況を呼ぶのが心不全なので、流れが分かれば薬の作用点が見えてきます。

悪循環

心不全は心臓が全身に血液を十分に送り出せていない状態です。

その理由は3つあります。

心臓をポンプに例えると、

  1. 水を送るホースが細すぎる(後負荷大)
  2. 送る水量が多すぎる(前負荷大)
  3. ポンプの力が弱い(心筋症など)

3.ポンプの力が弱い原因は虚血性心疾患や心筋のリモデリングです。今回は原因1,2の前負荷、後負荷について主にやっていきます。虚血性心疾患については次のリンクを参照ください。

 

では、心不全の悪循環についてみていきましょう。

心不全 全体像  悪循環

青の2つのループがあります。

青のループ:後負荷

心不全 悪循環 後負荷

心不全で心拍出量が減ると血圧が下がります。身体は血圧を保とうとがんばり、交感神経系を亢進させ血管を収縮させます。(後負荷↑)
血管が収縮するので、心臓が血液を送り出すのが更に大変になり悪循環に繋がります。

赤のループ:前負荷

心不全 悪循環 前負荷

先ほどの後負荷とスタートは同じです。まず、心不全で心拍出量が減るので腎血流量も減少します。今度は腎臓が血流量を上げようとレニンを分泌し、レニン-アンギオテンシン系が動きアンギオテンシンが作られます。アンギオテンシンの作用は血管収縮(後負荷)とアルドステロンを介した体液貯留でした。今回、前負荷でターゲットとなるのは体液貯留の流れです。結果、体液貯留が起こり前負荷が高くなます。

心臓は入ってきた血液が多いほど収縮力が強くなります。そのため前負荷が高いと収縮力が強くなりますが、心不全を起こしている状態の心臓は弱っています。弱った心臓を無理矢理叩いて頑張らせるわけですから、いつか限界がきます。そして、心不全は悪化します。

症状

心不全によって引き起こされる症状はチアノーゼ肺静脈うっ血の2つを抑えましょう。

心拍出量が減って全身の血流不足から生じるのがチアノーゼです。

また、心臓から血液を出しにくい状態なので、酸素を補給した血液が心臓に戻れなくなります。それが肺うっ血です。

心不全の薬は強心系と心負荷軽減の薬に分かれます。悪循環を止める作用点は以下のとおりです。

心不全 薬 作用点 悪循環

強心薬系

心臓を強くすることで心拍出量を増加させ悪循環を断ち切ります。

しかし、弱った心臓にもっと働け!と畳み掛けるので、長期的に見ると生命予後は悪化します。一時的に使ってQOLをあげる薬だと認識しておいてください。

ジギタリス系

薬はジゴキシン、メチルジゴキシン、(デスラノシド)を抑えておきましょう。

薬の特徴は「ゆっくり強く」です。ジギタリスは基本的には毒なのでものすごく少量を使います。

作用機序はNa⇔K交換系を止めることによりNa⇔Ca交換系がストップします。結果、細胞内[Ca²⁺]が上昇し心筋が興奮し強心作用を発揮します。

低K血症or高Ca血症になると作用が強くなるので副作用が発現しやすく注意が必要です。

Kが入るのを阻害して作用しているので、ただでさえKが少ない状態だと効果が強く出すぎてしまうのです。

また高K血症で薬を使うと、さらにCaが細胞内に多くなり効果が出すぎてしまいます。極少量で使う薬なのでコントロールが大切です。

β刺激、PDE阻害薬など

通常の細胞興奮のメカニズムに則った薬です。

アドレナリン作動薬でも勉強した横紋筋の興奮の流れをみていきます。

心臓にはβ₁受容体が多く発現しています。β受容体はGs共役型なのでAd→β受容体→"Gs"活性化→アデニル酸シクラーゼ(AC)→cAMP→"pkA"活性化→[Ca²⁺]↑→Ca+トロポニン→収縮

の流れでした。

この流れを促進させるところが薬の作用点になります。

心負荷軽減薬

こちらの薬は心臓の負荷を下げてあげて、悪循環を切ることが目的です。利尿薬とACE阻害/ARB系は生命予後を改善する効果があります。

利尿薬系

循環血液量を減らすことで前負荷を軽減します。中でもスピロノラクトンは心筋のリモデリングを改善する作用もあるのでうっ血性心不全の生命予後を改善します。

ペプチド製剤

カルペリチドを覚えておきましょう。心房から分泌される生理活性物質です。心不全になると心臓もやばい!と思って血管拡張、利尿作用のある物質を分泌します。機序はcGMPを生成増加させることにより発現します。

硝酸薬

ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジルを使います。詳しくは狭心症のところを参考にしてください。

ACE阻害薬、ARB

レニン-アンギオテンシン系の作用は、血管収縮とアルドステロン分泌亢進でした。

ACE阻害薬、ARBで抑えることで 血管拡張+静脈還流量減少 の作用が見込めます。心筋リモデリングも抑制するので慢性心不全患者の予後を改善します。薬の詳しい作用機序は下のリンクからどうぞ。

β遮断薬

心拍出量下がってるのにβ遮断薬なんて使っていいの?と思いませんか?

作用機序的に意外だからこそ国試にもよく聞かれます。

強心薬でも書きましたが、弱った心臓に鞭打っても長期的に見ると良くないんですね。逆に心臓を少し休ませてあげるのがβ遮断薬です。休ませすぎると血液が周らなくなるので高血圧などで使うよりも少量投与します。(だいたい高血圧の1~2割くらいの量)

β受容体を遮断することで、

  • 心機能低下→酸素消費量↓
  • レニン分泌抑制→静脈還流量↓

の作用が見込めます。

β1受容体選択的なのがビソプロロール、α₁β受容体を遮断するのがカルベジロールです。

ビソプロロールはビ→β₁で覚えてみてください。カルベジロールはβ₂受容体もブロックするので気管支喘息患者には禁忌ですが、ビソプロロールには使えます(慎重投与)

しかしカルベジロールはα₁受容体も遮断するので、血管平滑筋弛緩→後負荷↓の作用も見込めます。

 

 

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