消化性潰瘍は攻撃と防御のせめぎ合い

   

消化性潰瘍のマインドマップ

消化性潰瘍pdf

全体像

消化性潰瘍は、胃酸が胃壁を攻撃して、胃壁が負けた時に発症します。

なので薬は攻撃系(胃酸)を抑えるか、防御系(胃粘膜)を強化する薬を使います。

攻撃系抑制

胃酸分泌の機構から薬につなげていきます。

分泌機構

胃酸は壁細胞から分泌されます。壁細胞にはムスカリン受容体、ガストリン受容体、ヒスタミン受容体が付いていて、外からの刺激されることにより H⁺⇔K⁺ ATPase(プロトンポンプ)が駆動し胃酸が分泌されます。

なので胃酸を抑制するためには、3パターン考えられます。

  1. それぞれの受容体を塞ぐ
  2. ガストリンやヒスタミン自体の分泌細胞を抑える
  3. 最終的に胃酸を出すATPaseを抑える

ガストリンとヒスタミンの分泌

ガストリンはガストリン細胞から分泌され、ヒスタミンはECL細胞から分泌されます。

ECL細胞にはガストリン受容体とムスカリン受容体がついています。なので、ガストリンは胃酸を出す壁細胞とそれを刺激するECL細胞を刺激します。

攻撃抑制系の薬

PPI(プロトンポンプ インヒビター)

壁細胞のATPaseを阻害して胃酸が出るのを止めます。最終的な出口を止めてしまうので最強の胃酸分泌抑制薬になります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などに使われますが、最強の薬なので腸内細菌や食べ物の吸収にまで影響を及ぼすと言われています。そのため胃潰瘍には8週間十二指腸潰瘍には6週間までしか原則使えません。(何週間使えるのかテストで聞かれることがあるので、十二→6の倍数とおぼえておきましょう)

語尾は「〜ゾール」で、ランソプラゾールやオメプラゾールなどがあります。

類似薬としてボノプラザンという薬があります。
通常のPPIは腸で吸収され全身循環に乗ってから胃で胃酸に触れて活性化しATPaseを止めます。ボノプラザンは活性化が要らずATPaseを阻害するので即効性があり、個体差もありません。(PPIはCYP2C19で代謝される→個体差の原因)

ガストリン系

ガストリン系には、2パターンあります。

  • ガストリン細胞からの分泌を抑える
    セクレチンのみ
  • ガストリン受容体を塞ぐ
    プグルミド、オキセサゼイン

オキセサゼインは局所麻酔の「アオキの子は表面のみ、バカとアホは深い」で出てきた「オキ」の部分ですね。

H₂ブロッカー

ヒスタミン遮断薬です。ECL細胞から分泌されたヒスタミンは、壁細胞のH₂受容体に結合し胃酸分泌を促進します。

薬は、ファモチジン、シメチジンなど語尾に「~チジン」が付きます。

薬剤の分野で頻出(厄介)なのがシメチジンです。この薬は代謝酵素のCYPに結合し代謝阻害し、排泄のところではOAT(有機アニオントランスポーター)を邪魔します。

抗コリン

抗コリンは、効果器(胃壁やECL細胞)で効く薬と、もうちょっと上位で効く薬があります。
効果器に効くのはプロパンテリンなどですが、「抗コリン」とだけ覚えておけばいいです。

上位で効くのはピレンゼピンです。AChを放出する神経を抑制します。

図★

制酸薬

この薬の機序は簡単で、酸がたくさん出てるからアルカリ入れて中和するだけです。

弱アルカリなので、金属との塩を使います。

  • Ca系では沈降炭酸カルシウム
  • Mg系は酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム
    Mg系は下痢になりやすいです。
  • Al系はスクラルファート、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミニウム
    Al系は逆に便秘になりやすいです。スクラルファートは多機能な薬で後でも出てきます。
  • Na系は炭酸水素ナトリウム

その他:抗ペプシン、異運動促進薬

  • 抗ペプシン薬
    抗ペプシンとしては先程出てきたスクラルファートです。主細胞から分泌されたペプシンはペプチド(タンパク質)を分解するので潰瘍でやられている部分には辛い物質です。なので、抗ペプシン薬のスクラルファートを使います。
  • 胃運動促進薬
    AChの放出を促進するのがD₂遮断薬のスルピリドです。ACh出しちゃっていいの?と思いますよね。私は習った時に思いました。この薬の理屈としては、効果は 胃酸↑<胃内滞留時間↓ ということで、
    胃酸は多少多く出るけど、AChは胃から小腸に送るスピードも早めるから、胃内の食物が潰瘍に当たる時間を少なくできるメリットのほうが大きいってことらしいです。

防御系増強薬

胃粘膜の強化法は、胃粘膜の血流を増やすこと、胃粘膜自体を強化することの二通りがあります。

胃粘膜(副細胞)は何をやっているかというと、アルカリ性の粘液を出して胃酸を中和し自分の体を守っています。

胃粘膜血流強化

ここでのキーワードはプロスタグランジンです。プロスタノイドEP受容体が胃粘膜の血流に関与しています。EP受容体を刺激すると血流が良くなり、粘膜も強化されます。

EP受容体を刺激する物質はプロスタグランジン(PG)です。これを増やすには、身体の中で作っている(内因性)プロスタグランジンを増やすか、プロスタグランジン自体を外から薬として補充するやり方があります。

外因性PG製剤

この分類の薬は一つだけです。ミソプロストールを覚えておきましょう。

子宮収縮作用があるので妊婦には禁忌です。しかし内因性と違い、直接外からPGを入れるので効果は高いです。

内因性PG増強薬

身体にもっとPGをふやして!!とお願いするのがこの薬のイメージです。

結構、薬の種類が多いのでゴロを使いましょう。

ゴロ:レバーセットのゲップのテープのA面

レバミピド、セトラキサート、ゲファルナート、テプレノン、エカベドです。

アスピリンなどの抗炎症薬NSAIDsはPGの生成を抑えることで炎症を抑えます。そのため[PG]↓→胃粘膜↓→NSAIDs潰瘍が副作用として起きることがあります。その予防のためアスピリンなどとレバミピドが共に処方されることがよくあります。

胃粘膜保護薬

胃潰瘍の時、胃壁のタンパクが露出しています。生体(タンパク)はマイナスに帯電しています。そこに電荷が3+のAl³⁺の製剤を投与して胃粘膜を保護します。

制酸薬で出てきた薬と全く同じです。スクラルファート、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミニウムです。

最後にピロリ除菌について

この分野は病態で頻出の部分なので触れておきます。

ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんの原因になる感染症です。ピロリ菌の除菌は抗菌薬とPPIを使って行われます。

PPIを使う理由は、胃潰瘍や慢性胃炎の治療のためではないです。胃の中は強酸性です。抗菌薬は中性付近で効果を発揮します。逆に、酸性では抗菌薬が十分に作用が発揮できずピロリの除菌がうまくできません。そのため最強の胃酸抑制薬であるPPIを使うことで胃内のpHを中性付近まで持っていき抗菌薬の効果を高めています。

 - 薬理

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