薬理の基礎

腎臓の機能と構造をわかりやすく解説【薬剤師国家試験】

腎臓の機能って他の分野でも絡めて聞かれるから大切!! 解剖も結構聞かれるよね。

 

この記事では生物の泌尿器系分野、「腎臓の構造と働き」についてまとめます。
生物の知識は他分野とも深く関わっているので、総合的な得点UPに繋がりますよ!!

泌尿器系の解剖は腎、尿管、膀胱、前立腺の位置をざっくり理解

 泌尿器系は腎臓、尿管、膀胱、尿道から構成されています。
男性の場合は尿道の周りに前立腺がくるっとつきます。

腎臓でできた尿は尿管を通り、膀胱に溜まり、尿道を通り排泄されます。

腎臓はソラマメの形をした器官で左右に一つずつ存在しています。
右腎は肝臓の直下なので左腎に比べると少し低い位置です。

腎臓と尿管:上部尿路
膀胱と尿道:下部尿路

といいます。

 

膀胱や尿道、前立腺についてはこの記事では詳しくしませんが、薬理と一緒に理解すると覚えやすいです。
排尿障害や頻尿の薬と一緒に覚えると効率的で、理解が深まります。

 

腎臓の機能は体液の恒常性を保つこと

 腎臓の機能は一言で言うと体液の恒常性を保つことです。

そのために

  • 水分・電解質の調節
  • 酸・塩基平衡の調節
  • 代謝産物の排泄
  • ホルモンの調節

 

の4つの働きをしています。

物質の排泄量を調節することで体液の恒常性を保ちます。
その結果として尿ができます。
最初の3つは尿生成に関連する機能です。

原尿は約150〜180L/日できます。
ほとんどが再吸収されて、最終的にできる尿量は1.5L位です。

腎臓のホルモン調節はレニン、エリスロポエチン、ビタミンD3活性化の3つ

レニンの分泌は血圧の調節に重要

ホルモンの調節といいましたが、レニンはホルモンでなく酵素です。(分かり易くするためにこの分類にしてあります。)

レニンは輸入細動脈の傍糸球体細胞から分泌されます。もう少し先で詳しく見ますが、レニンには血圧を調節する働きがあります。

 

エリスロポエチンの分泌は貧血に関わる

腎では赤血球の産生を促進するエリスロポエチンが分泌されます。

腎機能が低下すると、エリスロポエチンの産生も低下するので貧血になります。
貧血に関してまとめてあるのでこちらを参照してください。

 

活性型ビタミンD₃(カルシトリオール)の生成

活性型ビタミンD₃(カルシトリオール)の活性化は骨の形成に関連します。

腎機能が低下すると、骨粗鬆症のリスクも上がります。

 

 

腎臓の構造

 腎臓の内部は皮質と髄質に分けられれます。

髄質の部分は断面図だと三角形に見えますが、実際は底面を皮質側に向けた円錐形をしているので腎錐体といいます。

腎錐体の先っちょは袋様の構造をした腎杯で覆われています。
腎杯同士が合体して腎盂という一つの大きな袋になります。

集合管は腎杯に向かって開いており、尿は最終的に腎杯に集められて、腎盂を経由して尿管、膀胱に溜まります。

 

腎臓の上部には副腎が位置してます。ステロイドやカテコールアミンの分泌に関連します。

 

腎小体=糸球体+ボーマン嚢

腎皮質には腎小体があります

腎小体は糸球体+ボーマン嚢から構成され、糸球体がボーマン嚢という袋によって覆われて存在しています。

血液が糸球体を通ると限外濾過(加圧濾過)され、濾過でできた原尿は尿細管へ流れていきます。

 

ネフロン=腎小体+尿細管で腎臓の構造的機能単位

尿細管は

  • 近位尿細管
  • ヘンレ係蹄
  • 遠位尿細管

から構成されます。
尿細管では再吸収と分泌が起きています。

腎小体と尿細管を合わせてネフロンと言い、腎臓の構造的機能単位として働きます。

 

腎臓の血管の流れは覚えなくていいけど知っていると理解しやすい

 尿は血液からできているので、血管との関係を理解すると理解が深まります。
血液は腎動脈から腎臓内部に入ります。

腎動脈は枝分かれして、腎錐体に沿うように弓状に走る(弓状動脈)。
ここから枝分かれし、輸入細動脈ができます。

毛細血管の束ができると、これが糸球体になります。

毛細血管が集合して輸出細動脈ができる。輸出細動脈はまた毛細血管になり、尿細管周囲を網目状に走行。

静脈系にたどり着き、腎静脈からまた戻っていきます。

 

糸球体の働きは濾過すること

糸球体濾過はチャージバリアとサイズバリア

 糸球体は毛細血管がループ状構造をしており糸玉状になった塊です。

糸球体の毛細血管壁は濾過膜として機能します。

糸球体に入る血管が輸入細動脈、出ていく血管は輸出細動脈です
輸入細動脈(入り口)は太く、輸出細動脈(出口)は狭くなっているので糸球体は加圧状態になります。
これが濾過の原動力になります。

糸球体毛細血管壁は内側から、血管内皮細胞、基底膜、糸球体上皮細胞の3つがあり、サイズバリアとチャージバリアで濾過をしています。

血球などの分子量が大きいものや、基底膜が陰性に荷電しているために陰性に荷電した蛋白などは透過性が悪くなります。

 

糸球体が損傷され、尿タンパクが出てしますのがネフローゼ症候群です。

 

傍糸球体細胞はGFRの維持に重要

 遠位尿細管には輸入・輸出細動脈と接触する部分があります。この部位周辺の細胞群を傍糸球体装置と言います。

傍糸球体装置は濾過量や、血圧の調節に関わります。

遠位尿細管には緻密斑というNa(Cl)を感知するセンサーがあります。これがNaの低下を感知すると傍糸球体細胞からレニンが分泌される仕組みです。

詳しい機序は割愛しますが、レニンの分泌によりRA系が活性化され、アンギオテンシンⅡによる輸出細動脈の収縮などがが起こりGFR(糸球体濾過量)は正常に保たれます。

 

尿細管

 濾過された原尿は尿細管で必要な成分が再吸収、逆に体内に不要な物質が分泌されます。

前提として間質の浸透圧が皮質側は低く、髄質側は濃くなっているのを知っていると、原尿の濃度がどう変化するか理解しやすいです!

近位尿細管は水と溶質を大量に再吸収

 近位尿細管はグルコースやアミノ酸、水など多くのものを再吸収します。

どのように再吸収が行われているか少し具体的に見ます。

管腔側(原尿側)、尿細管上皮細胞、間質側(血管側:間質に出たものは大体が毛細血管に吸収されるので血管側と考える)に分けて考えましょう。

Na⁺-K⁺-ATPaseにより3Naが間質側(血液側)、2K⁺は尿細管細胞に輸送されます。細胞内のNa⁺濃度が低下し、K⁺もチャネルよって細胞外へ出るので細胞内は負電荷が維持されます。電気化学ポテンシャル勾配を利用してNa⁺が管腔側から上皮細胞内に移動。この時、共輸送体を利用するので一緒にグルコース(SGLT1、2を利用)やアミノ酸も一緒に細胞内に輸送されます。H⁺は逆輸送されるので管腔側に分泌されます。

上皮細胞に移動したグルコースやアミノ酸が単輸送されます。この時グルコースはGLUT1、2が関わります。

 

ヘンレ係蹄は向かい合って高張尿を作る

 ヘンレループは下降脚と上行脚が向かい合って存在してます。
前提として、腎髄質は皮質に比べて浸透圧勾配が大きくなっていることを抑えましょう。

下降脚は水チャネルが豊富で水を透過しやすいです。下降するにつれて間質の浸透圧は高くなるので受動的に水は間質側に流れます

ヘンレループの先端では原尿は濃くなっており高張尿になっています。

上行脚では水の透過性は低いですがNaの透過性が高いです。上につれて間質の浸透圧が低くなるので濃度勾配に従って出ていきます。さらに太い上行脚ではNa⁺-K⁺-2Cl共輸送体が存在し、能動的にNa⁺が再吸収されます。

これが下降脚での水の間質への流れをアシスト(上の図参照)していますよ。

 

遠位尿細管~集合管ほホルモンが重要

 遠位尿細管にはサイアザイド系(チアジド系)の薬が働くNa⁺-Cl共輸送体があります。
またすでに、説明しましたが、緻密斑によりNaを感知し、傍糸球体細胞からレニンが分泌され、GFRや血圧を調節します。

アルデステロンはNaと水の再吸収

遠位尿細管〜集合管ではアルデステロンによるNaチャネルの活性化→Naと水の再吸収促進作用があります。
この時、二次的にKの排泄も増えます(Na⁺が再吸収されて電位差が生じるのでK⁺は分泌される)。

バソプレシンは後葉から分泌で水の再吸収

バシプレシンは抗利尿ホルモンです。下垂体後葉から分泌されます。

集合管のV2受容体に作用して水を再吸収させます。
このため尿は濃縮され再び高張尿に戻ります。

 

 ANP(心房性Na利尿ペプチド)は水を排泄

ANP(心房性Na利尿ペプチド)は上二つとは逆で、Na⁺、水の排泄促進方向に働きます。

集合管のANP受容体に結合するとNaチャネルが不活性化、Naの再吸収が抑制されて、管腔の浸透圧が高くなるので水の再吸収も抑制されます。

 

 

尿細管は利尿薬とセットで抑えましょう。

 

 

まとめ

ポイント

  • 腎臓の機能は尿の生成とホルモン分泌(エリスロポエチン、レニン分泌、ビタミンD3の活性化)を抑える
  • 糸球体はサイズバリアとチャージバリアで濾過
  • 尿細管はNa⁺の動きに着目

 

腎の構造や働きがわかっていると、衛生や病態、薬理でも役立ちますよ!!

関連する分野をまとめて理解するのが効率的です!

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