神経・筋の疾患

くも膜下出血の病態、治療をわかりやすく解説【薬剤師国家試験】

今回は脳出血のくも膜下出血について勉強します。

本記事の内容

  • くも膜下出血の病態
  • くも膜下出血の症状
  • くも膜下出血の治療

くも膜下腔の構造はクモの巣に似てる

 まず、くも膜下とはどこのことか確認しましょう。

脳と脊髄は髄膜で覆われています。
髄膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3種類から構成されます。
くも膜と軟膜の間がくも膜下腔です。
くも膜下腔は脳脊髄液で満たされてます

くも膜と軟膜の間は蜘蛛の巣のように架橋されているのでこのように命名されています。

くも膜下出血は出血により脳脊髄液中に血が混じる

 くも膜下腔内は出血が起こり脳脊髄液中に血液が混入した病態です。

脳動脈が破裂し、動脈血が急激にくも膜下腔に流入します。流入した血液により脳が圧迫し、短時間で頭蓋内圧亢進します。
また血管が破綻することで脳血流量の低下がひこおこされます。

組織に血液が十分送り込めなくなるなるので脳虚血がおきます。
意識低下や脳幹に圧がかかることで呼吸障害やなどが生じることもあります。

亜急性期では再出血、(脳動脈の再破裂)、脳血管攣縮でさらに障害が悪化します。

くも膜下出血では一番多いのは動脈瘤破裂

 くも膜下腔内の原因で最も多いのが動脈瘤破裂です。

40から60歳の中高年で好発します。

 次いで多いのが脳動静脈奇形の破裂です。
「脳動静脈奇形」とは、血管奇形の一つです。
脳の中で異常な動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、この部分がとぐろを巻いたような塊になっています。
正常な血管に比べて壁が薄く、破れやすいです。破れると脳出血、くも膜下出血となります。

好発部位はウィリス動脈輪

 好発部位はウィリス動脈輪の前側です。

ウィリス動脈輪では動脈瘤ができやすいためです。

 血行力学的な負荷が関与しているとかんがえられます。
ウィリス動脈輪には分岐があり、そこにずっと血液があたるため動脈瘤ができます。

検査はCTと髄液検査で色が大切

『CTのシーはしゅっけつのしー』

 検査は髄液検査、CTが有効です。

脳内出血でもCTが有効でしたが、同じくくも膜下出血でも有効です。

『CTのシーはしゅっけつのしー』
で覚えましょう!

髄液検査では色が重要

 髄液検査では色が重要です。

発症1週間は血液髄液は淡いピンク色を示します。
これは無色透明の髄液に血液が混じるためです。

その後、黄色の髄液になります。
赤血球中のヘモグロビンがビリルビンに変わるためです。

くも膜下出血は脳血管攣縮に注意

 くも膜下出血の症状には

  • 激しい頭痛→突然の激しい頭痛。バッドで殴られたような感じ
  • 嘔吐→脳圧亢進で嘔吐中枢が刺激
  • 意識障害→約半数に出現
  • 血管攣縮

などがあります。

特に再出血と血管攣縮は亜急性期にみられ、症状の悪化のリスクがあるので早急に対処する必要があります。

血管攣縮は混入した血液が脳血管を刺激して発症

 血管攣縮 は髄液に混入した血液成分が、脳血管を刺激することで起こります。

血管が攣縮することで狭くなり、脳虚血→意識障害などを起こします。
72時間以内に起こります。脳虚血が生じて約半数に脳梗塞。予後不良です。

治療は外科的治療が主役で薬物治療は補助的

 再出血を防ぐ&血腫除去による脳血管攣縮を防ぐために外科的処置が行われます。

代表的なのが

クリッピング:開頭して直接動脈瘤をクリップで挟んで止血

コイル塞栓:カテーテルでプラチナコイルを動脈瘤内に詰めて塞栓

です。名前だけ知っておきましょう。

 

薬物治療は攣縮をおさえるのが重要

攣縮治療にはオザグレル、ファスジル

 くも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳虚血症状に

 オザグレルナトリウム

 ファスジル

が使われます。

機序は

オザグレルはこちらを参照してください。

ファスジルはRhoキナーゼを阻害することでミオシン軽鎖の脱りん酸化を促進することで血管を弛緩させます。

正常時はミオシン軽鎖がMLCK(ミオシン軽鎖キナーゼ)でリン酸化され血管が収縮
逆にMLCP(ミオシン軽鎖ホスファターゼ)で脱リン酸されて血管が弛緩します。

つまりリン酸化反応でバランスをとっています。

くも膜下出血が起こるとロトニンやエンドセリンなどの物質がMLCKを活性化しリン酸化が進みます。また、Rhoキナーゼ活性化されてMLCPを抑制します。

この二つに働きでリン酸化方向に傾き、血管の異常収縮が起こります。

ここでファスジルを投与するとRhoキナーゼが抑制され、MLCPの働きが回復するので脱リン酸が起こり異常収縮が改善されていきます。

脳浮腫

 脳浮腫の改善のためには

濃グリセリン、果糖注射液、20% Dマンニトール液

を使います。脳浮腫とその治療薬の機序はこちらを参考にしてください。

 

まとめ

くも膜下出血について勉強しました。ポイントは

  • くも膜下出血は出血が起こり脳脊髄液中に血液が混入した病態
  • 原因は脳動脈瘤が一番多く、ウィリス動脈輪が好発部位
  • 血管攣縮にはオザグレル、ファスジルが使われる

 

同じ脳出血疾患の脳内出血をセットで勉強するとわかりやすいです。

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参考脳内出血の病態、治療をわかりやすく解説【薬剤師国家試験】

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