
前回の記事で、産業廃棄物と一般廃棄物の入れ子構造を作りました。その中に感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物があったのを覚えていると思います。
今回はその2つを合わせた医療廃棄物の話です。薬剤師の実務に直結するので、実践問題でもよく出ます。しかも「注射針は?」「ガーゼは?」という具体的な仕分けを聞かれるので、得点源にしやすい単元でもあります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
医療廃棄物とは
定義はこうです。
医療機関の事業から出る廃棄物のうち、特別管理一般廃棄物または特別管理産業廃棄物に該当するもの
つまり、「医療機関から出た」だけでは医療廃棄物にはなりません。前回の分類でいう特別管理の枠に入ったものだけが該当します。
そして実際には、その大半が感染性産業廃棄物です。
特別管理産業廃棄物管理責任者:薬剤師がなれる
医療機関には、特別管理産業廃棄物管理責任者を置くことが定められています。
そしてこの責任者には、医師・歯科医師・薬剤師がなれます。
薬剤師は、感染性廃棄物に係る特別管理産業廃棄物管理責任者になることができる
これは第102回で正しい記述として出題されています。薬剤師の職能に関わる話なので、国試でもよく聞かれます。「医療機関に置く義務がある」「薬剤師がなれる」の2点をセットで押さえてください。
感染性廃棄物かどうかの判断
フローチャート:3段階で絞る
感染性廃棄物にあたるかどうかは、フローチャートで判断します。上から順に、当てはまるか当てはまらないかで階層分けしていく形式です。
| 順番 | 判断基準 | 中身の例 |
|---|---|---|
| ① | 形状 | 血液、血清などの体液/病理診断に用いられたもの/鋭利なもの |
| ② | 排出場所 | 結核病棟など、感染のおそれがある場所からの排出か |
| ③ | 感染症の種類 | 感染症法の一類・二類・三類など |
①形状 → ②排出場所 → ③感染症の種類。この順番で覚えてください。どこかで当てはまれば感染性廃棄物と判断されます。
第111回では「感染症法により入院措置が講ぜられる病床から排出された廃棄物は、感染性廃棄物である」という記述が出ました。これは②と③にあたる判断です。
滅菌したらどうなるか
実務でいちばん迷うのがここです。
院内で滅菌処理してから捨てるなら、非感染性廃棄物。 ただし注射針など鋭利なものは、感染性廃棄物と同等に扱え
滅菌すれば感染のおそれはなくなりますが、鋭利なものは刺さる危険がそのまま残るので、扱いは変わらない——という理屈です。
ここは第102回と第108回で、ほぼ同じ形で2回出題されています。
高カロリー輸液の調製時に出る廃棄物のうち、感染性廃棄物と同等に取り扱うべきものはどれか
という問題で、選択肢はガラス製アンプル・注射筒(シリンジ)・注射針・アルコール消毒に用いたガーゼ・プラスチックグローブ。答えは注射針です。
「血液がついているか」ではなく「鋭利かどうか」で判断する、というのがこの問題のポイントです。調製に使っただけで血液は付いていませんが、それでも注射針は同等扱いになります。
補足:インフルエンザ患者の紙おむつ
インフルエンザ患者の紙おむつは、感染性廃棄物ではない
過去に出題があったので、これも押さえておいてください。フローチャートに当てはめると、形状(血液・体液・鋭利)にも該当せず、感染症の種類としても一類〜三類に入らないためです。
梱包の方法
感染性廃棄物を入れる容器には、3つの条件があります。
密閉できる/収納しやすい/損傷しにくい容器に入れること
「密閉」がいちばん問われます。漏れないこと、が最優先だからです。
表示とバイオハザードマーク

容器には、感染性廃棄物であることを識別できる表示が必要です。その方法としてバイオハザードマークの使用が推奨されています。
色は中身の形状で3つに分かれます。
| 色 | 対象 |
|---|---|
| 赤色 | 液状・泥状のもの(血液等) |
| 橙色 | 固形状のもの(血がついたガーゼなど) |
| 黄色 | 鋭利なもの(注射針等) |
「赤=液体、橙=固形、黄=鋭利」です。ここは色と対象を入れ替えた選択肢が出ます。実際、第111回では「注射針を廃棄する場合、容器には赤色のバイオハザードマークをつけることが推奨されている」という記述が出ましたが、誤りです。注射針は鋭利なので黄色が正解になります。
覚え方としては、血の色=赤が液状、信号と同じで黄色は「危ない・気をつけろ」=鋭利、残った橙が固形、という順で引くと迷いません。
国試ではこう問われる
- 薬剤師は特別管理産業廃棄物管理責任者になれる(第102回・正しい記述)
- 感染性廃棄物と同等に扱うもの = 注射針(第102回・第108回)。血液の付着ではなく鋭利かどうか
- バイオハザードマークの色(第111回)。注射針は黄色(赤は誤り)
- 感染性産業廃棄物もマニフェスト制度の対象(第102回)。「契約業者に委託するから対象外」は誤りです
- 滅菌処理した後も全て指定された容器に分別しなければならない(第102回)——これは誤り。滅菌すれば非感染性廃棄物として扱えます(鋭利なものを除く)
まとめ
- 医療廃棄物=医療機関の事業から出る廃棄物のうち、特別管理一般廃棄物または特別管理産業廃棄物に該当するもの
- 医療機関には特別管理産業廃棄物管理責任者を置く義務がある。医師・歯科医師・薬剤師がなれる
- 感染性廃棄物の判断は①形状 → ②排出場所 → ③感染症の種類のフローチャート
- 院内で滅菌処理すれば非感染性廃棄物。ただし注射針など鋭利なものは感染性廃棄物と同等に扱う
- インフルエンザ患者の紙おむつは感染性廃棄物ではない
- 容器は密閉できる・収納しやすい・損傷しにくいもの
- 容器には識別できる表示が必要で、バイオハザードマークが推奨される
- 色分けは赤=液状・泥状(血液)/橙=固形状(ガーゼ)/黄=鋭利(注射針)
次は廃棄物の処分とリサイクル|最終処分場の問題・マニフェスト制度・3Rです。廃棄物単元の締めくくりになります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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