
ここからは廃棄物です。衛生の講義としては最後の単元にあたります。
この単元は分類が入れ子になっているのが特徴で、それを図として持てているかどうかで、選択肢の正誤判断のスピードがまったく変わります。まずは枠組みから作っていきましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
大枠:ごみは2つに分かれる
まず、すべての廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物の2つに分かれます。
そして、この2つは処理の責任者が違います。ここが最初の分かれ目です。
| 産業廃棄物 | 一般廃棄物 | |
|---|---|---|
| 定義 | 事業に伴って出る廃棄物のうち、20品目に指定されたもの | 産業廃棄物以外の廃棄物 |
| 処理の責任 | 排出事業者 | 市町村 |
| マニフェスト | 処理時に交付する | — |
一般廃棄物の定義が「産業廃棄物以外」という引き算になっているのがポイントです。20品目から漏れたものが、全部こちらに来るという構造になっています。
産業廃棄物(20品目)
品目は「大きな括り」
産業廃棄物は、事業に伴って出る廃棄物のうち20品目が指定されています。
代表的なものを挙げると、燃え殻、汚泥、がれき類、廃油、動物のふん尿などです。見て分かるとおり、いずれも大きな括りになっています。
そのうえで、各品目の中に個別の廃棄物が振り分けられている、というイメージを持ってください。たとえば「廃油」という品目の中に「PCB廃油」がある、という入れ子構造です。
この感覚があると、次の特別管理産業廃棄物の話がすっと入ります。
特別管理産業廃棄物:品目ではない
ここがこの単元の理解の核です。
「特別管理産業廃棄物」という品目があるわけではない
20品目の中から、感染性・毒性・爆発性のあるものを横断的にひっくるめた呼び名が特別管理産業廃棄物です。21番目の品目ではありません。
「産業廃棄物という大きな箱の中に、危ないものだけを集めて色を塗った」——そんなイメージで捉えてください。
中身の分類
特別管理産業廃棄物には、次のようなものが含まれます。
| 分類 | 中身 |
|---|---|
| 廃油・廃酸・廃アルカリ | 化学物質系のもの |
| 感染性産業廃棄物 | 医療機関等から排出された血液、使用済み注射針、破損したガラス容器、血液の付着した手袋など |
| 特定有害産業廃棄物 | PCBやその汚染物、廃石綿、有害産業廃棄物 |
このうち感染性産業廃棄物が、次の記事で扱う医療廃棄物の主役になります。
一般廃棄物
特別管理一般廃棄物
一般廃棄物の側にも、産業廃棄物とまったく同じ発想で特別管理一般廃棄物が設けられています。
感染性・毒性・爆発性など、健康や生活環境に被害を出しそうなものとして政令で定めるもの
具体例としては、
- PCBを使っている部品
- ばいじん
- 感染性一般廃棄物
感染性・毒性・爆発性という3つのキーワードが、産業廃棄物側と一般廃棄物側の両方で共通しているところを押さえてください。
感染性一般廃棄物
医療機関等から排出された、血液が付着したガーゼやペーパータオル、包帯などがこれにあたります。
ガーゼ類は普通ならそのまま捨てられますが、感染の疑いがあるものはこちらに分類される、という区別です。
注射針やガラス容器は感染性「産業」廃棄物、ガーゼや包帯は感染性「一般」廃棄物——この対応は問題文でも狙われるので、硬くて鋭いものは産業、柔らかい布モノは一般という覚え方で仕分けておくとラクです。
全体像を1枚で
ここまでを入れ子の形でまとめます。
- 廃棄物
- 産業廃棄物(20品目・処理責任は排出事業者)
- 特別管理産業廃棄物(感染性・毒性・爆発性)
- 廃油・廃酸・廃アルカリ
- 感染性産業廃棄物 ← 血液、注射針、ガラス容器、手袋
- 特定有害産業廃棄物(PCB、廃石綿 など)
- 特別管理産業廃棄物(感染性・毒性・爆発性)
- 一般廃棄物(産業廃棄物以外・処理責任は市町村)
- 特別管理一般廃棄物(感染性・毒性・爆発性)
- PCB使用部品、ばいじん
- 感染性一般廃棄物 ← 血液の付着したガーゼ、ペーパータオル、包帯
- 特別管理一般廃棄物(感染性・毒性・爆発性)
- 産業廃棄物(20品目・処理責任は排出事業者)
国試ではこう問われる
- マニフェストの交付義務(第98回) 「排出事業者が、特別管理産業廃棄物の処理を他人に委託する場合」は交付が必要。逆に自ら処理する場合は交付不要です。詳しくはマニフェスト制度の記事で扱います
- 特別管理産業廃棄物は、必須・理論・実践のどこにでも出る頻出語です。「品目ではなく、危険性による横断的な区分」という理解があれば、たいていの選択肢は判断できます
- 処理責任の主体(産業廃棄物=排出事業者、一般廃棄物=市町村)は、そのまま正誤問題になります
まとめ
- 廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に分かれる。一般廃棄物の定義は「産業廃棄物以外」
- 処理の責任は、産業廃棄物=排出事業者、一般廃棄物=市町村
- 産業廃棄物は20品目。燃え殻・汚泥・がれき類・廃油・動物のふん尿など大きな括りで、各品目の中に個別の廃棄物(PCB廃油など)が振り分けられている
- 特別管理産業廃棄物という品目はない。20品目の中から感染性・毒性・爆発性のあるものを横断的にまとめた呼び名
- 中身は廃油・廃酸・廃アルカリ/感染性産業廃棄物/特定有害産業廃棄物(PCB・廃石綿)
- 一般廃棄物側にも同じ発想で特別管理一般廃棄物がある(PCB使用部品、ばいじん、感染性一般廃棄物)
- 感染性産業廃棄物=血液・使用済み注射針・破損したガラス容器・血液の付着した手袋
- 感染性一般廃棄物=血液が付着したガーゼ・ペーパータオル・包帯
次は医療廃棄物と感染性廃棄物|判断フローチャートと梱包方法です。薬剤師の仕事に直結する、いちばん実務寄りの回になります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
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