
室内環境の最後は換気です。ここは知識問題というより計算問題の回で、必須・理論・実践のどこにでも顔を出します。
ただし、覚えることはごくわずかです。3つの濃度と2本の式、これだけです。しかも式は導出をたどればその場で作れます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
なぜ換気するのか
まず意義から。
そこで生活する人が呼吸によって室内へ排出する二酸化炭素や、建築用資材から徐々に蒸発する有害物質を除去し、建物の室内空気を正常に保つため
前回のシックハウス症候群の記事で出てきた「高気密化でVOCがこもる」問題と、ここで裏側からつながります。換気はシックハウス対策でもあるわけです。
覚えるべき3つのCO2濃度
計算問題の材料になるのが、この3つです。

| 濃度 | 記号 | |
|---|---|---|
| 呼気中のCO2濃度 | 5% | — |
| 外気中のCO2濃度 | 0.04% | C₀ |
| CO2の許容濃度 | 0.1% | Cs |
「5・0.04・0.1」の3つ。順番に「吐く息・外の空気・室内の上限」です。
そしてもう1つ、学校は0.15%以下という別枠の基準があります。学校環境衛生基準のほうの値で、学校薬剤師が絡む問題で出てきます。
測定法
CO2の測定法は2つです。
- 検知管法 — 吸引すると検知管が薄い桃色に変色する
- 赤外線吸収法
赤外線吸収法は、大気環境の記事の語呂「野ザル ピカチュウ 戸せき そうどう」の「戸せき(CO=赤外線吸光法)」で出てきたものと同じです。COもCO2も赤外線吸収法で測れる、とつなげておいてください。
必要換気量の式:導出すれば覚えなくていい

公式をそのまま覚えるのが苦手な人向けに、図の導出をたどっておきます。
部屋を1つの箱だと思って、入ってくるCO2と出ていくCO2が釣り合っている状態を考えます。
- 入ってくる:外気に乗って入るCO2(C₀V)+ 室内で人が出すCO2(M)
- 出ていく:室内の空気ごと出ていくCO2(CsV)
釣り合っているので、
C₀V + M = CsV
Vでくくると、
M = (Cs − C₀) V
したがって、
V = M / (Cs − C₀)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| V | 必要換気量(m³/h) |
| M | 室内でのCO2排出量(m³/h) |
| Cs | CO2許容濃度 → 0.1% |
| C₀ | 外気のCO2濃度 → 0.04% |
覚え方

図のとおり、タバコを吸っている人の絵で覚えます。
発 ÷(内 − 外)
- 分子は発生量(M)
- 分母は内側の濃度(許容濃度Cs)− 外側の濃度(外気C₀)
CO2なら分母は 0.1 − 0.04 = 0.06% と自動的に決まります。問題文で与えられるのは発生量Mだけというパターンがほとんどです。
換気回数

必要換気量Vが出たら、次はそれを部屋の大きさで割るだけです。
換気回数 = 1時間あたりの換気量(m³/h) ÷ 室内気積(m³)
「1時間で部屋の空気を何回入れ替えるか」という意味なので、割り算になるのは自然です。
簡単な例:室内気積50m³の部屋で、換気量が200m³/hなら、
200 ÷ 50 = 4回/h
国試ではこう問われる
この単元の出題は、ほぼ計算です。実際に出た3問で手順を確認しておきます。
① 換気回数を出すだけ(第97回)
必要換気量90m³/hの病室。床面積60m²、高さ3mの直方体。必要換気回数は?
室内気積 = 60 × 3 = 180m³ 換気回数 = 90 ÷ 180 = 0.5回/h
床面積ではなく気積(体積)で割る、という一点だけです。
② 逆算して人数を出す(第106回)
床面積36m²、高さ2.2mの部屋。1時間あたり2回の換気。1人あたり30m³/hの必要換気量を確保するとき、在室可能な人数は最大何名か?
室内気積 = 36 × 2.2 = 79.2m³ 1時間あたりの換気量 = 79.2 × 2 = 158.4m³/h 人数 = 158.4 ÷ 30 = 5.28 → 最大5名
換気回数の式を逆に使うパターンです。割り切れないときは切り捨てになります(6名にすると確保できないため)。
③ 発生量から通しで解く(第111回)
児童20名の教室。床面積80m²、高さ2.5m。石油ファンヒーターから1時間あたり0.02Lのガス A が発生。ガス A の濃度を学校環境衛生基準である0.06ppmに保つのに必要な換気回数は?(外気中のガス A は0.01ppm)
必要換気量の式と換気回数の式を、続けて使います。
- M = 0.02 L/h = 2 × 10⁻⁵ m³/h(1m³ = 1000L)
- Cs − C₀ = 0.06 − 0.01 = 0.05 ppm = 5 × 10⁻⁸
- V = 2 × 10⁻⁵ ÷ 5 × 10⁻⁸ = 400m³/h
- 室内気積 = 80 × 2.5 = 200m³
- 換気回数 = 400 ÷ 200 = 2回/h
ここでの山場は単位の変換です。Lをm³に直す(÷1000)、ppmを小数に直す(×10⁻⁶)。この2つを落ち着いてやれば、あとは「発÷(内−外)」と「気積で割る」の2手で終わります。
なお、この問題ではCO2ではなく別のガスが題材ですが、式はまったく同じです。濃度の数値は問題文が指定してくるので、CO2の0.1%・0.04%を機械的に当てはめないよう注意してください。
まとめ
- 換気の意義は、呼吸によるCO2と建材から出る有害物質を除去して室内空気を正常に保つこと
- 覚える濃度は3つ:呼気中5%・外気中0.04%・許容濃度0.1%。学校は0.15%以下
- CO2の測定法は検知管法(薄い桃色に変色)と赤外線吸収法
- 必要換気量 V = M / (Cs − C₀)。覚え方は「発 ÷(内 − 外)」
- CO2なら分母は 0.1 − 0.04 = 0.06% で固定
- 換気回数 = 1時間あたりの換気量 ÷ 室内気積。床面積ではなく体積で割る
- 計算問題の落とし穴は単位換算(L→m³は÷1000、ppm→小数は×10⁻⁶)
- 人数を求めるときは切り捨て
これで室内環境は終わりです。次は生活環境の最後、産業廃棄物と一般廃棄物の違い|20品目・処理責任・特別管理廃棄物に進みます。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
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