
前回の記事で、気温・気湿・気流という3つの指標をそろえました。今回はそれを組み合わせて、人が実際にどう感じるかを1つの数字にまとめます。それが感覚温度です。
そして感覚温度には、輻射熱を考慮しない版(感覚温度)と、考慮する版(補正感覚温度)の2つがあります。この2つの違いが、そのまま国試の出題ポイントです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
感覚温度とは何か
定義から見ておきます。
感覚温度:試料空気(部屋の空気)と同じ暖かさの、気流0・湿度100%の空気温度のこと
……これだけだと「何のことだ」となると思います。少し言い換えてみます。
湿度も風も気温もバラバラの部屋を比べても、どちらが暑いのか分かりません。そこで基準になる部屋を1つ決めてしまおう、という発想です。その基準が「気流0・湿度100%の部屋」です。
どうやって決めたのか
実験のイメージで考えると腑に落ちます。
- 基準の部屋(湿度100%・気流0m/秒)と、試験の部屋(たとえば湿度10%・気流0.5m/秒・気温30℃)を用意する
- 被験者に試験の部屋に入ってもらい、暖かさを体感してもらう
- 次に基準の部屋に移動してもらい、「さっきの部屋と同じ暖かさ」になる温度を探す
- それが20℃だったなら、「湿度10%・気流0.5m/秒・気温30℃の部屋の感覚温度は20℃」と決まる
これを条件を変えながら膨大に繰り返して表にまとめたのが、次の感覚温度図表です。
感覚温度図表の読み方

この図表があるおかげで、私たちは実験をやり直さなくても、乾球温度・湿球温度・気流の3つが分かれば感覚温度を読み取れます。
図の例でたどってみます。乾球32℃・湿球21℃・気流1.0m/秒の部屋です。
- 左の軸で乾球温度32℃、右の軸で湿球温度21℃を決め、その2点を直線で結ぶ
- 左下に伸びている気流の目盛りから1.0m/sの線をたどる
- 2本が交わったところを、斜めに走っているET(有効温度)の線で読む → 25℃
これが「(乾球、湿球、気流)=(32℃、21℃、1m/秒)の感覚温度は25℃」という読み方です。
感覚温度を求めるのに必要なのは、アスマン通風乾湿計(乾球・湿球)とカタ温度計(気流)です。ここに黒球温度計は入りません。この点はあとで効いてきます。
補正感覚温度:輻射熱まで入れる
感覚温度には、実は弱点があります。輻射熱が入っていないことです。
同じ部屋にいても、窓際で日がバンバン当たっている場所と、内側の日陰では体感がまるで違います。ところが気温・湿度・気流だけを測ると、この差がほとんど出ません。
そこで、乾球温度計の代わりに黒球温度計を使って作り直した図表が補正感覚温度(CET)です。
黒球温度計

構造は図のとおりで、黒く塗った銅板の球の中に温度計を差し込み、コルク栓で固定しただけのものです。
ポイントは黒塗りであることです。黒は熱を吸収するので、直射日光や熱輻射の影響をしっかり拾います。
前回出てきたアスマン通風乾湿計は、銀メッキで輻射熱を「防ぐ」構造でした。黒球温度計はその正反対で、輻射熱を「集める」ための器具です。この対比で覚えると混ざりません。
当然、黒球温度計の示度は乾球温度計より高く出ます。
必要な器具は3つ
補正感覚温度を求めるには、次の3つが要ります。
- アスマン通風乾湿計(気温・気湿)
- カタ温度計(気流)
- 黒球温度計(輻射熱)
感覚温度に黒球温度計を1つ足した形です。
| 使う器具 | 輻射熱 | |
|---|---|---|
| 感覚温度(ET) | アスマン通風乾湿計 + カタ温度計 | 考慮しない |
| 補正感覚温度(CET) | アスマン通風乾湿計 + カタ温度計 + 黒球温度計 | 考慮する |
実効輻射温度
補正感覚温度とセットで出てくるのが実効輻射温度です。これは単純で、
実効輻射温度 = 黒球温度 − 乾球温度(気温)
黒球が拾った熱のうち、気温では説明がつかない上乗せ分——つまり輻射熱の寄与だけを取り出した値、と考えてください。
国試ではこう問われる
この単元は計算・図表読み取りの両方で出ます。
- 感覚温度に黒球温度計は使わない(第104回) 「感覚温度は、アスマン通風乾湿計及び黒球温度計を用いて求めることができる」という選択肢が出ました。誤りです。黒球温度計が要るのは補正感覚温度のほう。ここを入れ替えた選択肢は定番なので、器具の3点セットで覚えておいてください
- 補正感覚温度図表の読み取り(第101回) 乾球21.0℃・湿球15.0℃・黒球温度22.5℃・相当湿球温度16.0℃・気流1.0m/秒という数値が与えられ、補正感覚温度と実効輻射温度を答えさせる形式。実効輻射温度は22.5 − 21.0 = 1.5℃と、引き算1回で出ます。図表が読めなくてもこちらは取れるので、必ず拾ってください
- WBGT(暑さ指数)(第110回・第111回) 近年2年続けて出ています。湿球黒球温度と呼ばれるとおり、湿球温度と黒球温度から計算します。
- 屋内(および日射のない屋外):WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
- 日射のある屋外:WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度 どちらも湿球温度の係数が0.7で最大です。熱中症の指標なので、汗が蒸発できるかどうか(=湿度)が一番重いのだ、と理解しておくと係数を取り違えません。屋外の式だけ乾球が0.1で顔を出す、という形で覚えてください
まとめ
- 感覚温度は、試料空気と同じ暖かさの気流0・湿度100%の空気温度
- 求めるのに必要なのは乾球温度・湿球温度・気流の3つ。器具でいえばアスマン通風乾湿計 + カタ温度計
- 感覚温度図表は、乾球と湿球を結んだ線と気流の線の交点をET線で読む
- 補正感覚温度(CET)は、乾球温度計の代わりに黒球温度計を使って輻射熱を考慮したもの
- 黒球温度計は黒塗りの銅板の球で熱輻射を吸収する。アスマン(銀メッキで輻射熱を防ぐ)とは正反対。示度は乾球温度計より高く出る
- 補正感覚温度に必要な器具はアスマン通風乾湿計・カタ温度計・黒球温度計の3つ
- 実効輻射温度 = 黒球温度 − 乾球温度
- 感覚温度に黒球温度計は使わない。ここを入れ替えた選択肢が頻出
次は室内環境と健康|シックハウス症候群・レジオネラ・ハウスダストです。測定の話から、実際に室内で起こる健康被害の話に移ります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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