廃棄物

廃棄物の処分とリサイクル|最終処分場の問題・マニフェスト制度・3R【薬剤師国家試験】

廃棄物のマインドマップ
廃棄物のマインドマップ

廃棄物の最後は、捨てたあとの話です。分類ができたところで、実際にどう処理され、どこで詰まっているのかを見ていきます。

数字が2つと、制度が2つ。覚える量は多くありませんが、そのぶん狙い撃ちされます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

産業廃棄物はどれくらい出て、どこへ行くのか

産業廃棄物の排出量の内訳
産業廃棄物の排出量の内訳

まず排出量の内訳です。多い順に、

汚泥 → ふん尿 → がれき類

汚泥がダントツの1位で、全体の4割強を占めます。この順番だけ押さえておけば十分です。

そして行き先ですが、ここにこの単元でいちばん問われる数字があります。

約55%がリサイクルなどで再利用され、最終処分場へ行くのはたったの2%(令和5年度実績:再生利用54.7%・最終処分2.4%)

「ごみは埋め立てられている」というイメージとは、ずいぶん違う数字だと思います。中間処理で減量化されたり、再生利用されたりで、最終処分まで到達するのはごくわずかなのです。

この2%は必ず覚えてください。 第99回では「産業廃棄物の総排出量の約50%が最終処分されている」という選択肢が出ましたが、誤りです。50%はリサイクル側の数字で、最終処分は2%——ここを入れ替えた引っかけです。

最終処分場の問題

わずか2%とはいえ、その行き先である最終処分場にはいくつも問題があります。

不適正処分

法整備以前に作られた最終処分場(講義作成時の資料で全体の約3割)から、汚染浸出水が地下水へ、そして河川へと流れ出し、環境汚染につながっています。

昔の処分場は、今のような遮水構造になっていません。あとから法律を整えても、すでに作られてしまったものは残り続ける——という問題です。

有害廃棄物の越境移動

先進国から発展途上国へ有害廃棄物が持ち出され、現地で不適切な処理が行われて環境汚染が起こる、という国際問題です。

これに対応する国際条約がバーゼル条約です。あわせて、海洋への廃棄物投棄を規制するのがロンドン条約。第99回でこの組み合わせがそのまま正しい記述として出ています。条約の詳細は後の記事で扱いますが、ここでは「越境移動=バーゼル、海洋投棄=ロンドン」とだけ結びつけておいてください。

場所不足

そして場所不足です。ここで登場するのが残余容量と残余年数という2つの言葉です。

用語 意味
残余容量 最終処分場にまだ捨てられる場所がどれだけあるか
残余年数 あと何年くらい使えるか
産業廃棄物の最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(環境省「平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」より引用)
産業廃棄物の最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(環境省「平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」より引用)

産業廃棄物のグラフです。残余容量は横ばいなのに、残余年数は右肩上がりになっています。

一見おかしく見えますが、理由はシンプルです。リサイクルが好調で、新しく捨てられる量が減っているからです。捨てるペースが落ちれば、同じ容量でも「あと何年もつか」は伸びます。

一般廃棄物の最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(資料:環境省)
一般廃棄物の最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(資料:環境省)

一般廃棄物も、残余年数は増加傾向です。ただしこちらは残余容量が少しずつ減っています。

残余容量 残余年数
産業廃棄物 横ばい(近年は微減) 増加
一般廃棄物 少しずつ減少 増加

国試で問われるのは数値そのものではなく、この「向き」です。 第99回では「我が国の一般廃棄物最終処分場の残余容量と残余年数は、2000年以降減少し続けている」という選択肢が出ましたが、誤りです。残余年数は伸びています。

なお、グラフの数値は掲載時点のもの(産業廃棄物は2015年度まで、一般廃棄物は2016年度まで)です。最新の値は、産業廃棄物が残余容量1億7,741万m³・残余年数20.3年(令和6年4月1日現在)、一般廃棄物が残余容量9,329万m³・残余年数24.9年(令和6年度末)で、どちらも前年より容量は減り、年数は伸びています。傾向を押さえておけば国試では対応できます。

不法投棄

正規の処分場に持ち込まず捨ててしまう不法投棄も、依然として問題になっています。これを防ぐための仕組みが、このあとのマニフェスト制度です。

マニフェスト制度

目的

・産業廃棄物の委託処理における排出事業者責任の明確化 ・不法投棄の未然防止

言い回しが硬いので、イメージで持っておくのがおすすめです。

基本、産廃は出したやつが処理しろ。 人に頼むなら、 ・マニフェストを交付して、産廃に添付しろ(=産廃の情報を提供しろ) ・ちゃんと処理されているか確認しろ

前回までに出てきた「産業廃棄物の処理責任は排出事業者」という原則を、委託したときにも貫くための仕組みです。委託したから責任も移る、とはならない——ここが制度の芯にあります。

産業廃棄物管理票(=マニフェスト)

項目 内容
保管期間 5年間
交付義務 すべての産業廃棄物
例外 排出事業者が自ら処理するときは交付不要

「5年」と「自己処理なら不要」、この2つが出ます。

第98回では「マニフェストを発行しなければならない場合はどれか」という問題で、排出事業者が自ら処理(自己処理)する場合が誤りの選択肢として並びました。自分で処理するなら、誰かに頼む必要も、頼んだ先を確認する必要もないからです。

また第111回では「産業廃棄物の運搬から処分場までのプロセスを記録するシステムとしてPRTR制度がある」という選択肢が出ましたが、誤りです。これはマニフェスト制度の説明。PRTRは化学物質の排出量を届け出る制度なので、別物です。

リサイクル関連法規と3R

押さえるのは3つの法律だけで十分です。

  • 循環型社会形成推進基本法
  • 容器包装リサイクル法
  • 家電リサイクル法

中身まで細かく問われることはほとんどありません。循環型社会形成推進基本法だけ、しっかり押さえておいてください。3Rの処理の優先順位を決めた法律です。

Reduce(リデュース) > Reuse(リユース) > Recycle(リサイクル)

日本語にすると、

  1. まず減らす(発生抑制)
  2. 次に再利用する(そのままもう一度使う)
  3. 最後に再生利用する(資源に戻して作り直す)

リサイクルが最優先ではない、というのがこの順位の主張です。作り直すにもエネルギーがかかるので、そもそも出さないのがいちばん——という考え方になっています。第109回でもこの法律が問われています。

まとめ

  • 産業廃棄物の排出量は汚泥 > ふん尿 > がれき類。汚泥が最多
  • 約55%がリサイクル等で再利用され、最終処分場へ行くのはたったの2%(最頻出)
  • 最終処分場の問題は①不適正処分(法整備以前の処分場が約3割、汚染浸出水が地下水→河川へ)②有害廃棄物の越境移動(先進国→途上国)③場所不足、そして不法投棄
  • 越境移動=バーゼル条約、海洋投棄=ロンドン条約
  • 残余年数は産業廃棄物・一般廃棄物ともに増加傾向(リサイクル好調のため)。残余容量は産業廃棄物が横ばい(近年は微減)、一般廃棄物は少しずつ減少
  • マニフェスト制度の目的は排出事業者責任の明確化と不法投棄の未然防止
  • マニフェスト(産業廃棄物管理票)の保管は5年間。すべての産業廃棄物に交付義務があるが、自ら処理する場合は交付不要
  • 記録システムはマニフェスト制度。PRTR制度と取り違えない
  • 循環型社会形成推進基本法が3Rの優先順位を定めた。Reduce > Reuse > Recycle

これで廃棄物、そして生活環境の主要な単元がひととおり終わりました。次は生態系の構成員と窒素循環|生産者・消費者・分解者です。ここから地球環境(窒素循環・国際条約・オゾン層・地球温暖化)の話に移ります。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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