生活習慣病などの予防

特定健診とメタボリックシンドローム|健診の基準値と診療の診断基準の違い【薬剤師国家試験】

生活習慣病の予防・対策のマインドマップ
生活習慣病の予防・対策のマインドマップ

いわゆるメタボ健診の話です。この単元でいちばん大事なのは、基準値が2種類あるという事実です。

病院で「あなたはメタボですね」と診断するときの基準と、メタボ健診で保健指導の対象を拾い上げるときの基準は、別物です。しかも健診のほうがきつく設定されています。理由は目的が違うから。診断は病名をつける行為ですが、健診は早期に気づかせるための網です。網は粗くないほうがいい。

この「2つの基準値」が、講義でも強調されている引っ掛けポイントです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

制度の骨格

内容
根拠法 高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)
実施義務 医療保険者にある
対象 40歳以上75歳未満(=40〜74歳)の医療保険加入者
目的 生活習慣病の発症・重症化の予防のため、該当者・予備群の減少に向けて特定保健指導が必要な者を抽出する

根拠法がよく問われます。健康増進法でも国民健康保険法でもなく、高齢者の医療の確保に関する法律です。名前と中身が一致しにくいので、ここだけは丸暗記してください。「メタボ健診の根拠法は高齢者医療確保法」。

実施義務は医療保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保など)にあります。事業者でも市町村でもなく保険者、という点も選択肢になります。

対象年齢40〜74歳も頻出です。75歳以上は後期高齢者医療制度に移るので、この健診の枠から外れます。

流れ:健診 → 階層化 → 保健指導

特定健康診査から特定保健指導までの流れ
特定健康診査から特定保健指導までの流れ

① 特定健康診査

まず基本的な健診を行います。質問票・身体測定・血圧・血液検査・尿検査など。そこから健診項目を洗い出し(階層化)ます。

  • 腹囲は? BMIは?
  • 血圧、血糖、脂質は?
  • 喫煙の有無は?

② 階層化

腹囲(またはBMI)を入口にして、追加リスク(血圧・血糖・脂質)がいくつ当てはまるか、そして喫煙歴があるかで、支援レベルを振り分けます。

腹囲/BMI 追加リスク レベル
腹囲が基準値以上 2つ以上該当 積極的支援
腹囲が基準値以上 1つ該当 動機付け支援
腹囲は基準値未満だがBMI 25以上 3つ該当 積極的支援
腹囲は基準値未満だがBMI 25以上 1〜2つ該当 動機付け支援

喫煙歴は、追加リスクが1つ以上ある場合に1つとしてカウントされます。また、65〜74歳は、積極的支援の対象であっても動機付け支援とするという年齢の扱いがあります(=階層化で年齢は考慮される)。

③ 特定保健指導

内容
動機付け支援 面談を行い、行動目標を立てさせて生活習慣の改善を促す
積極的支援 動機付け支援+継続的な支援(電話などでのフォロー)

そして半年やって評価し、保険者・国に報告する。この報告があるので実施率が統計として出ます。

実施率の現状

数字を持っておくと、選択肢の妥当性を判断しやすくなります。

  • 令和5(2023)年度の特定健診の実施率は59.9%、特定保健指導の実施率は27.6%(いずれも過去最高を更新)
  • 第4期(令和6〜11年度)の目標は、特定健診70%以上・特定保健指導45%以上

目標にはまだ距離がある、というのが現状です。

2つの基準値:ここが最大の引っ掛け

メタボリックシンドロームの診断基準(病院で使うほう)

メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドロームの診断基準
基準
必須項目 腹囲 男性85cm以上/女性90cm以上
選択項目
(2つ以上でメタボ、1つで予備群)
血圧:収縮期130mmHg以上 または 拡張期85mmHg以上
血糖:空腹時血糖110mg/dL以上
脂質:TG 150mg/dL以上 または HDL-C 40mg/dL未満

腹囲が必須項目である点が重要です。腹囲が基準未満なら、他が全部引っかかってもメタボとは診断されません。内臓脂肪型肥満を土台とする概念だからです。

男性85cm・女性90cmという、女性のほうが大きい数字の並びも狙われます。逆に覚えないように。

メタボ健診の階層化で使う基準値(健診のほう)

違うのは血糖です。

診断基準 メタボ健診
空腹時血糖 110mg/dL以上 100mg/dL以上

病院の診断は110、健診の階層化は100。 健診のほうが10mg/dL きつい。

理由は繰り返しになりますが、目的が違うからです。診断は病名をつける行為なので、基準を下げすぎると過剰診断になります。一方、健診は「このままだと危ないですよ」と気づかせるのが目的なので、早めに引っかけるほうが制度として正しい。

なお、健診の階層化ではHbA1c(5.6%以上)も血糖のリスクとして用いられます。

「110と100、どちらがどっちか」を取り違えると1問落とします。診断=110、健診=100。健診のほうが小さい(きつい)。 ここだけ確実に。

国試ではこう問われる

回 問われ方 ポイント
第105回・問314 特定健康診査はどの法律に基づくか 高齢者の医療の確保に関する法律。健康増進法・国民健康保険法との区別
第107回・問231 特定健康診査における階層化として正しいもの 腹囲基準値以上+追加リスク2つ該当 → 積極的支援
第107回・問230/第105回・問236 検査値を示し、特定保健指導の対象となった原因でない検査項目を選ぶ 腹囲・血圧・TG・HDL-Cは該当するが、空腹時血糖は基準未満というパターンが繰り返し出る
第105回・問237 検査値からどの支援段階かを選ぶ BMI30・腹囲100cm・155/95mmHg・TG220・HDL-C35 → 追加リスク2つ以上で積極的支援
第111回・問123 我が国の健康増進対策(2つ) 「特定健診・特定保健指導は30〜64歳を対象」は誤り。正しくは40〜74歳
第108回・問124 メタボの診断基準 腹囲が基準値以上+血圧・血糖・脂質のうち2項目以上でメタボ

第105回・第107回はどちらも同じ作りです。検査値の一覧を渡され、「特定保健指導の対象になった原因でないもの」を選ばせる。空腹時血糖だけが基準を下回っているという設定が2回続いています。血糖の基準値(健診100mg/dL)を覚えているかどうかが、そのまま得点差になります。

まとめ

  • 特定健診(メタボ健診)の根拠法は高齢者の医療の確保に関する法律。実施義務は医療保険者
  • 対象は40歳以上75歳未満(40〜74歳)の医療保険加入者
  • 流れは特定健康診査 → 階層化 → 動機付け支援/積極的支援 → 半年後に評価 → 保険者・国に報告
  • 腹囲基準値以上+追加リスク2つ以上 → 積極的支援、1つ → 動機付け支援
  • メタボの診断基準は腹囲が必須項目(男性85cm以上/女性90cm以上)。選択項目2つ以上でメタボ、1つで予備群
  • 選択項目は血圧130/85、血糖110、TG150またはHDL-C40未満
  • 健診の階層化で使う空腹時血糖は100mg/dL。診断基準の110より10きつい
  • 令和5年度の実施率は健診59.9%・保健指導27.6%。第4期の目標は70%・45%

次は労働衛生の3管理とは|作業環境管理・作業管理・健康管理を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

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