労働衛生

労働衛生の3管理とは|作業環境管理・作業管理・健康管理【薬剤師国家試験】

労働衛生のマインドマップ
労働衛生のマインドマップ

労働衛生は毎年のように出る単元です。そして、出題の中心はほぼこれ一つ——「この対策は3管理のどれに当たるか」。

第108回、第110回、第111回と3年連続で、この形式が出ています。逆に言えば、3つの管理の線引きさえ体に入れば、確実に1点取れる単元です。

線引きの考え方はシンプルです。有害物質が、発生源から労働者の体に届くまでの道のりのどこで止めるか。

発生源で止める → 作業環境管理。途中(労働者の手前)で止める → 作業管理。体に入ったあとを診る → 健康管理。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

土台になる2つの法律

法律 役割
労働基準法 労働条件の最低基準を定める
労働安全衛生法 労働者の安全と健康の確保。3管理はこちらが定めている

衛生の分野で主に扱うのは労働安全衛生法です。第99回でそのまま「作業環境管理・作業管理・健康管理の3管理を定めている法令はどれか」が問われ、答えは労働安全衛生法でした。

注意:マインドマップと講義では「労働安全法」と表記されていますが、正式名称は「労働安全衛生法」です。「衛生」が抜けています。試験の選択肢は正式名称で書かれるので、労働安全衛生法で覚えてください。

① 作業環境管理:発生源を断つ

作業環境そのものを良くする管理です。

  • 衛生管理者を置く:常時50人以上の労働者を使用する事業場では選任が義務
  • 発生の抑制:環境気中濃度の測定(作業環境測定)、局所排気装置の設置、有害な原材料をより害の少ないものに変更する

キーワードは「測定」と「設備」と「原材料」です。空気中の濃度を測る、排気装置をつける、そもそも有害物質を使わない——いずれも労働者に届く前、発生源の側での対策です。

「50人以上」という数字は単独で問われます。全事業場ではありません。第97回で「すべての事業所に対して衛生管理者を置くことが義務づけられている」という誤り選択肢が出ています。

② 作業管理:曝露を減らす

作業のやり方を変えることで、労働者への曝露を減らす管理です。

  • 侵入の抑制:曝露量・作業負荷の軽減
  • 呼吸用保護具はちゃんとあるか? 曝露濃度は指標以下か?
  • 作業の手順や方法を最適化する
  • 曝露時間を短縮する
  • 化学防護手袋・防護服を着用させる

キーワードは「保護具」と「作業手順」と「時間」です。環境はそのままでも、マスクをする・手袋をする・作業時間を短くする・やり方を工夫することで、体に入る量を減らす。

作業環境管理との境目がまぎらわしいのは「局所排気」です。局所排気は設備なので作業環境管理。呼吸用保護具は身につけるものなので作業管理。設備か、身につけるものかで切ってください。

③ 健康管理:人を診る

労働者の健康状態を把握し、異常を早期に見つける管理です。

内容
定期健康診断 普通の職場の健康診断のこと。全労働者が対象
特殊健康診断 有害業務に従事する労働者に対して、有害因子ごとに定められた項目で実施
ストレスチェック 心理的負担の程度を把握する検査

キーワードは「健診」と「検査」です。人の体を調べるものは健康管理、と覚えれば迷いません。

特殊健康診断は「健康管理」に分類されるという点は、第108回・第111回でそのまま出ています。名前に「診断」が入るので、直感でも当たります。

ストレスチェックも健康管理です(第111回)。心の健康も「人を診る」行為だからです。

3管理の見分け方:一覧

対策 分類
作業環境測定を実施する 作業環境管理
局所排気を行う 作業環境管理
有害な原材料を無害なものへと変更する 作業環境管理
衛生管理者を選任する(50人以上) 作業環境管理
呼吸用保護具を着用させる 作業管理
化学防護手袋を使用する 作業管理
曝露時間を短縮する 作業管理
作業の手順や方法を最適化する 作業管理
定期健康診断を実施する 健康管理
特殊健康診断を実施する 健康管理
ストレスチェックを実施する 健康管理

迷ったら「モノか、ヒトか」。設備・原材料・測定は環境側(作業環境管理)。身につける・手順・時間は行動側(作業管理)。健診・検査は人そのもの(健康管理)。

補足:実際には「5管理」という枠組みもあります。3管理に総括管理と労働衛生教育を加えたものです。第110回・問18では「労働衛生の5管理のうちどれに該当するか」という聞き方がされ、選択肢に総括管理・労働衛生教育が並びました(答えは作業管理)。講義とマインドマップは3管理で説明していますが、5管理の枠で出題されることがあるので、残り2つの名前だけは知っておいてください。

特殊健康診断の対象業務

健康管理の中身として、ここは単独でも問われます。

実施義務がある業務:

  • 粉じん作業
  • 潜函(せんかん)・潜水業務
  • 放射線業務
  • 特定化学物質の取扱い
  • 鉛、四アルキル鉛
  • アスベスト(石綿)
  • 特定の有機溶剤を扱う業務

そして実施頻度は、原則として6か月以内ごとに1回です。定期健康診断は年1回、特殊健康診断は半年に1回——この違いが問われます。

第109回・問18では、選択肢に「重量物を取り扱う業務」「著しく暑熱な場所における業務」「電子計算機への入力を反復して行う業務」「著しい騒音を発する場所における業務」が並び、義務があるのは「石綿(アスベスト)の粉じんを発散する場所における業務」だけでした。

紛らわしい業務が並ぶのがこの問題の特徴です。騒音・暑熱・VDT作業・重量物は、行政指導による健診の対象ではありますが、労働安全衛生法上の特殊健康診断(法定)の対象ではありません。上のリストに載っているかどうかで切ってください。

国試ではこう問われる

回 問われ方 ポイント
第108回・問126 作業管理に該当するのはどれか(2つ) 作業の手順や方法を最適化する、作業者が呼吸用保護具を着用する。特殊健康診断は健康管理、作業環境測定と局所排気は作業環境管理
第111回・問125 健康管理に該当するのはどれか(2つ) ストレスチェックを実施する、特殊健康診断を実施する
第110回・問18 経皮曝露を防ぐ化学防護手袋は5管理のどれか 作業管理。選択肢に総括管理・労働衛生教育が入る
第99回・問235 3管理を定めている法令はどれか 労働安全衛生法
第109回・問18 特殊健康診断の実施義務がある業務 石綿(アスベスト)の粉じんを発散する場所における業務
第97回・問128 労働衛生に関する記述(2つ) 作業環境管理や健康管理は職業病予防の基本、作業管理は曝露濃度を指標として実施が正しい。「すべての事業所に衛生管理者」「薬剤師は業務内容にかかわらず特殊健康診断が義務」は誤り

3年連続(第109・110・111回)で労働衛生管理が出ています。出題パターンが固定しているので、上の一覧表を見て即答できる状態にしておけば、ほぼ確実に得点できます。

まとめ

  • 根拠法は労働安全衛生法(労働基準法は労働条件の最低基準)
  • 作業環境管理 = 発生源を断つ。作業環境測定・局所排気・原材料の変更・衛生管理者(50人以上)の選任
  • 作業管理 = 曝露を減らす。呼吸用保護具・化学防護手袋・曝露時間の短縮・作業手順の最適化
  • 健康管理 = 人を診る。定期健康診断・特殊健康診断・ストレスチェック
  • 迷ったら「設備か、身につけるものか、人そのものか」
  • 特殊健康診断の対象は、粉じん・潜函潜水・放射線・特定化学物質・鉛・四アルキル鉛・アスベスト・特定の有機溶剤。6か月以内ごとに1回
  • 3管理に総括管理・労働衛生教育を足した5管理の枠で出題されることもある

次は特殊健康診断と曝露バイオマーカー|金属・有機溶媒を尿中代謝物で覚えるを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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