食中毒・食品汚染

動物性自然毒|フグ・シガテラ毒と貝毒4種の覚え方【薬剤師国家試験】

自然毒のマインドマップ
自然毒のマインドマップ

ここから自然毒に入ります。動物性自然毒は、毒成分・原因動物・機序または症状の3点セットで出題されるので、語呂でその3つを同時に固定するのがいちばん速い攻め方です。

扱うのは6つ。フグ毒・シガテラ毒の2つと、貝毒4種(麻痺性・下痢性・記憶喪失性・葉緑素分解物)です。

そして通して見えてくる共通項が2つあります。

① 毒はほとんど耐熱性。加熱しても消えない。 ② 魚や貝は毒を作っていない。プランクトンや細菌が作った毒を、食物連鎖で溜め込んでいるだけ。

この2点は、選択肢の正誤判定で何度も効きます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

フグ毒:テトロドトキシン

動物性自然毒でいちばん有名で、いちばん多いのがフグ毒です。

項目 内容
毒成分 テトロドトキシン
機序 Na⁺の細胞内流入を遮断 → 運動神経麻痺
症状 口唇のしびれ、呼吸困難
性質 耐熱性
由来 細菌が産生 → 食物連鎖で蓄積

機序はNaチャネルの遮断です。神経の活動電位はNa⁺が細胞内へ流れ込むことで立ち上がるので、そこを塞げば神経が興奮できなくなる=麻痺します。だから症状が口唇のしびれから始まり、呼吸筋の麻痺による呼吸困難に至る。

「遮断」であって「開口」ではありません。ここを入れ替えた選択肢が実際に出ています(後述)。

そしてフグ自身が毒を作っているわけではありません。海洋細菌が産生したテトロドトキシンが、食物連鎖を通じてフグの体内に蓄積します。だから養殖で餌を管理すると毒を持たないフグができる、という話につながります。

シガテラ毒:シガトキシン

シガテラ毒の語呂
シガテラ毒の語呂

先生! 白髪、モッサリ

語呂 内容
先生 ドライアイスセンセーション
白髪 シガトキシン
モッサリ 藻類(有毒渦鞭毛藻)
項目 内容
毒成分 シガトキシン
由来 有毒渦鞭毛藻が産生 → 食物連鎖で濃縮
原因動物 タイやハタなど
症状 ドライアイスセンセーション

ドライアイスセンセーションは、冷たいものに触れると電気が流れるような感覚になるという独特の知覚異常です。名前が特徴的なので、そのまま出題のフックになります。

そしてもう1つ重要な注意。

シガトキシンの「シガ」と、赤痢菌の志賀毒素(シガトキシン)はまったくの別物。

腸管出血性大腸菌の記事で「ベロ毒素 ≒ 赤痢菌の志賀毒素」と書きましたが、あちらはタンパク合成阻害。こちらのシガテラ毒は渦鞭毛藻由来の知覚異常。名前が似ているだけで無関係です。

貝毒4種

貝毒はムラサキイガイなどの二枚貝が主役で、麻痺性・下痢性・記憶喪失性の3つが並びます。これにアワビの葉緑素分解物を加えて4種です。

麻痺性貝毒

麻痺性貝毒の語呂
麻痺性貝毒の語呂

まっさきに ゴーゴー

語呂 内容
まっ 麻痺性貝毒
さき サキシトキシン
に 二枚貝
ゴーゴー ゴニオトキシン
項目 内容
原因動物 二枚貝(ムラサキイガイなど)
毒成分 サキシトキシン・ゴニオトキシン
由来 有毒渦鞭毛藻が産生
性質 耐熱性
機序 テトロドトキシンと構造も機序もほぼ同じ(Naチャネル遮断)

テトロドトキシンと同じ機序というのが最大のポイントです。だから症状もしびれ・呼吸困難とフグ毒に似ます。フグ毒とセットにして「Naチャネル遮断コンビ」として覚えてください。

下痢性貝毒

下痢性貝毒の語呂
下痢性貝毒の語呂

下痢で ジの 岡田さん

語呂 内容
下痢で 下痢性貝毒
ジの ジノフィシストキシン
岡田さん オカダ酸
項目 内容
原因動物 二枚貝(ムラサキイガイなど)
毒成分 ジノフィシストキシン・オカダ酸
由来 有毒渦鞭毛藻が産生
性質 耐熱性

オカダ酸は、強力な発がんプロモーターとしても知られています。これは化学物質の毒性の単元(イニシエーション/プロモーション)と直結する論点で、実際に必須問題で問われています(後述)。食中毒の毒として覚えるだけでなく、発がんプロモーターの代表例としても引き出せるようにしておいてください。

記憶喪失性貝毒

記憶喪失性貝毒の語呂
記憶喪失性貝毒の語呂

どうもいかんな、記憶がない。なぜ紫の下着が? うー気持ち悪い

語呂 内容
どうもいかんな ドウモイ酸
記憶がない 記憶喪失性貝毒
紫 ムラサキイガイ
下着 下痢
うー気持ち悪い 吐き気
項目 内容
原因動物 ムラサキイガイなど
毒成分 ドウモイ酸
症状 記憶喪失(海馬などを傷害するため)、下痢、吐き気

記憶喪失の理由が「海馬を傷害するから」という因果まで押さえておくと、症状が忘れにくくなります。海馬は記憶の中枢であり、ドウモイ酸はグルタミン酸受容体(カイニン酸受容体)のアゴニストとして神経を興奮毒性で傷害します。

なお、ドウモイ酸を産生するのは渦鞭毛藻ではなく珪藻(Pseudo-nitzschia属など)です。麻痺性・下痢性が渦鞭毛藻由来であるのに対し、記憶喪失性だけ由来が違うので、まとめて「渦鞭毛藻」と覚えてしまわないよう注意してください。また日本では、記憶喪失性貝毒の規制値は定められておらず、国内での中毒事例も報告されていません(厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」)。

葉緑素分解物(アワビ)

緑の中で笛を吹いて、光を浴びよう

語呂 内容
緑 葉緑素分解物
笛を吹いて フェオホルビド
光を浴びよう 光過敏性皮膚炎 / アワビ
項目 内容
原因動物 アワビ
毒成分 フェオホルビド
症状 光過敏性皮膚炎

貝毒の中で唯一、二枚貝ではなくアワビ、そして症状が消化器でも神経でもなく皮膚です。1つだけ毛色が違うので、逆に覚えやすいはずです。

アワビが食べた海藻の葉緑素(クロロフィル)が分解されてできるのがフェオホルビド。光に反応する構造なので、摂取後に日光を浴びると皮膚炎を起こします。

全体の比較表

毒成分 原因動物 由来 機序・症状
フグ毒 テトロドトキシン フグ 細菌 Naチャネル遮断→運動神経麻痺、呼吸困難
シガテラ毒 シガトキシン タイ・ハタ 有毒渦鞭毛藻 ドライアイスセンセーション
麻痺性貝毒 サキシトキシン・ゴニオトキシン 二枚貝 有毒渦鞭毛藻 Naチャネル遮断(テトロドトキシンとほぼ同じ)
下痢性貝毒 ジノフィシストキシン・オカダ酸 二枚貝 有毒渦鞭毛藻 下痢。オカダ酸は発がんプロモーター
記憶喪失性貝毒 ドウモイ酸 ムラサキイガイ 珪藻 記憶喪失(海馬傷害)、下痢、吐き気
葉緑素分解物 フェオホルビド アワビ (海藻の葉緑素) 光過敏性皮膚炎

国試ではこう問われる

① 自然毒の総合問題

第104回・問120「自然毒による食中毒に関する記述のうち、正しいのはどれか」は、この単元のほぼ全体を1問で問う良問でした。誤りの選択肢を見ると、狙われている点がはっきりします。

  • 「フグ毒テトロドトキシンは、神経や筋肉のNa⁺チャネルを開口することにより神経症状を引き起こす」→ 誤り。遮断する
  • 「サンゴ礁に生息する魚の肝臓で生合成されるシガトキシンは、シガテラを引き起こす」→ 誤り。魚が生合成するのではなく、有毒渦鞭毛藻が産生したものを食物連鎖で蓄積する
  • 「青梅の種子中のアミグダリンから発生する青酸は、メトヘモグロビン血症を引き起こす」→ 誤り(シトクロムオキシダーゼ阻害。植物性自然毒の記事参照)

「開口か遮断か」「魚が作るのか、溜め込むのか」——この2つが出題者の狙いどころです。

② 動物由来か植物由来か

第105回・問18(必須)「食中毒を引き起こす自然毒のうち、植物に由来するのはどれか」→ チャコニン。誤りの選択肢はサキシトキシン・シガトキシン・ジノフィシストキシン・テトロドトキシンで、すべてこの記事の動物性自然毒です。

第107回・問17(必須)は逆向きで「自然毒のうち、魚介類による食中毒の原因となるのはどれか」→ テトロドトキシン。アコニチン・ソラニン・アミグダリン・チャコニンが植物性です。

動物性と植物性の振り分けは、必須問題で繰り返し出ています。どちらの向きで聞かれても答えられるようにしておいてください。

③ 毒成分・動物・症状の3点組合せ

第108回・問131「食中毒の原因となる自然毒の成分とそれらを含有する動植物及び中毒症状の組合せのうち、正しいのはどれか」では、

  • 「オカダ酸 / ムラサキイガイ / 下痢」→ 正しい
  • 「シガトキシン / フグ / 痙れん」→ 誤り(シガトキシンはタイ・ハタ)
  • 「ソラニン / チョウセンアサガオ / 記憶喪失」→ 誤り(ソラニンはジャガイモ)

成分・動植物・症状のどれか1つをすり替えるのが定番です。だから語呂でも、3つを同時に固定するものが役に立ちます。

④ オカダ酸=発がんプロモーター

第100回・問20(必須)「強力な発がんプロモーターとして知られている化学物質はどれか」→ オカダ酸。誤りの選択肢はアフラトキシンB₁・ジメチルニトロソアミン・サイカシン・プタキロシドで、これらはイニシエーター(発がん物質)です。

イニシエーターとプロモーターの区別を聞く問題で、プロモーター側の代表としてオカダ酸が置かれる——この構図は覚えておく価値があります。

⑤ 食物連鎖と生物濃縮

第103回・問136「食物連鎖及び生物濃縮に関する記述のうち、正しいのはどれか」では、「食物連鎖の結果、有毒渦鞭毛藻を摂食した貝類が麻痺性貝毒を蓄積し、ヒトに中毒を起こすことがある」が正しい記述として出題されました。生活環境(生態系)の単元からも同じ内容が問われるので、相互に引き出せるようにしておいてください。

⑥ シガテラは日本でも起こる

第103回・問124「シガテラの原因となる魚類は主に熱帯から亜熱帯にかけて生息しているため、我が国ではシガテラ発症の報告はない」→ 誤り。日本でも沖縄などで発生しています。「日本では起こらない」という断定は、たいてい誤りの選択肢です。

⑦ 解毒薬

第109回・問87(必須)「ペニシラミンを解毒薬として使う中毒の原因物質はどれか」→ 鉛。テトロドトキシンが誤りの選択肢として置かれていました。テトロドトキシンに特異的な解毒薬はなく、対症療法(人工呼吸など)が基本です。

まとめ

  • 動物性自然毒は毒成分・原因動物・機序/症状の3点セットで問われる。毒はほとんど耐熱性で、魚や貝は毒を作らず食物連鎖で溜め込んでいるだけ
  • フグ毒テトロドトキシン——細菌が産生。Naチャネルを遮断(開口ではない)して運動神経麻痺・呼吸困難。耐熱性
  • シガテラ毒シガトキシン——語呂は「先生! 白髪、モッサリ」。有毒渦鞭毛藻が産生しタイ・ハタに蓄積。ドライアイスセンセーション。赤痢菌の志賀毒素とは無関係
  • 麻痺性貝毒——「まっさきにゴーゴー」。サキシトキシン・ゴニオトキシン、二枚貝、有毒渦鞭毛藻。テトロドトキシンと機序がほぼ同じ
  • 下痢性貝毒——「下痢でジの岡田さん」。ジノフィシストキシン・オカダ酸。オカダ酸は強力な発がんプロモーター
  • 記憶喪失性貝毒——「どうもいかんな、記憶がない」。ドウモイ酸が海馬を傷害して記憶喪失。産生するのは渦鞭毛藻ではなく珪藻。日本では規制値がなく中毒事例の報告もない
  • 葉緑素分解物——「緑の中で笛を吹いて、光を浴びよう」。アワビのフェオホルビドで光過敏性皮膚炎。貝毒で唯一、二枚貝でも消化器症状でもない

次は毒キノコ食中毒の4分類|α-アマニチン・イボテン酸・イルジンS・サイロシビンを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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