安全性評価と適正使用

化管法(PRTR法)とは|PRTR制度・SDS制度と化審法との役割分担【薬剤師国家試験】

化審法と化管法のマインドマップ
化審法と化管法のマインドマップ

前の記事でやった化審法は、危ないものを世に出さないための法律でした。でも、すでに世の中で使われている化学物質は山ほどあります。禁止するほどではないけれど、環境中に出ていっているもの。

それを「どこから、どれだけ出ているのか」見えるようにするのが、化管法です。

正式名称は長いです。「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」。国試の問題文では必ず注釈で正式名称が示されるので、丸暗記の必要はありません。読むべきは「排出量の把握」「管理の改善」の2語です。

化審法と化管法は、名前が似ているぶん役割で覚える。

化審法 = 審査 = 危ないものは流通させない(入口を止める) 化管法 = 管理 = 出ている量を把握して、自主的な管理を促す(流れを見える化する)

化管法は、禁止する法律ではありません。届け出させて、公表して、事業者が自分で減らすように仕向ける。この性格の違いが、そのまま選択肢の作られ方になります。

この記事の核は①PRTR制度とSDS制度の2本立て、②第一種と第二種の指定化学物質で適用される制度が違う、この2つです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

化管法は2つの制度でできている

化管法は、PRTR制度とSDS制度という2つの制度をひとまとめにした法律です。通称のPRTR法は、片方の名前が法律全体の呼び名になったものです。

制度 何をする制度か 向いている方向
PRTR制度 化学物質の排出量・移動量を、事業者が国に届け出る 事業者 → 国 → 国民
SDS制度 化学物質の性質や取扱方法を書いたSDSを付けて、他の事業者に渡す 事業者 → 事業者

PRTRは「国に報告する」、SDSは「相手に渡す」。方向が違うので、ここを混同しなければ選択肢は切れます。

PRTRは Pollutant Release and Transfer Register の略で、Release=排出、Transfer=移動。略語の中に、届け出る2つの量がそのまま入っています。

SDSは Safety Data Sheet(化学物質等安全データシート)。薬でいう添付文書だと思ってください。「この物質は何なのか、どう扱えばいいのか」を書いた紙を、出荷するときに付ける。

PRTR制度|排出量と移動量を分けて届け出る

排出量と移動量の違い
排出量と移動量の違い

届け出るのは2種類の量です。ここを分けて理解してください。

  • 排出量……環境中に出ていった量。大気へ、公共用水域へ、土壌へ、事業所内での埋立
  • 移動量……事業所の外へ出ていった量。下水道へ流した分、廃棄物として運び出した分

「環境に出たか、よそへ渡したか」です。ゴミとして処理業者に渡した分は、環境に出たわけではないので移動量。下水に流した分も、下水処理場へ行くので移動量です。

講義では排出量の90%以上が大気中へ、そしてトルエンの排出量が最も多いという傾向を紹介しています。残りは埋立が約5%、公共用水域が約4%という配分です。

数字は年度で動きます。 最新は令和6(2024)年度分で、2026年2月27日に公表されました。届出排出量・移動量の合計は408,237トンです。国試に出たのは令和3(2021)年度データ(第109回 問135)なので、「大気が9割以上、トルエンが最多」という構造を覚えておいて、具体的な数値は「何年度のデータか」とセットで扱ってください。順位そのものを暗記する必要はありません。

届け出たあと、どう使われるか

PRTR制度で得をする三者
PRTR制度で得をする三者

届け出られたデータはホームページで公表されます。これによって三者それぞれに意味が生まれる、というのが制度の設計です。

  • 事業者……自社が扱う化学物質の量と種類を把握でき、自己管理・削減目標が立てやすい
  • 行政……環境への排出量が分かるので、対策が打てる
  • 市民……気になる化学物質がどこからどれだけ出ているか一目で分かる

この「公表することで自主的な管理を促す」という仕組みが、化管法の本質です。国が上限値を決めて取り締まるのではなく、見えるようにすることで動かす。だから条文の目的にも「事業者による自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止する」と書かれています。

対象物質|第一種と第二種で、適用される制度が違う

化管法の対象物質は2つに分かれます。ここが最大の出題ポイントです。

第一種指定化学物質

指定される条件は、次の①〜④のどれか1つでも当てはまり、かつ環境中に継続して存在することです。

  1. ヒトの健康に影響があるもの
  2. 動植物の生息に影響があるもの
  3. 排出後、簡単に化学変化して影響を及ぼすもの
  4. オゾン層を破壊するもの

④が入っているのがポイントで、フロン類(CFC・HCFC)はここに入ります。③は「それ自体は無害でも、環境中で変化して有害になる」ものを拾うための条件です。

  • 適用制度……PRTR制度 + SDS制度(両方)

特定第一種指定化学物質

第一種の中でも発がん性・生殖毒性・変異原性があるもの。ダイオキシン類などが該当します。

取扱量の届出要件がより厳しくなりますが、「第一種の中に、発がん性などがある特定第一種という枠がある」という程度を押さえておけば十分です。

第二種指定化学物質

条件は第一種と同じ①〜④。違うのは排出量が多くないことです。

  • 適用制度……SDS制度のみ(PRTR制度の届出は不要)

排出量が少ないなら、わざわざ量を集計させる意味が薄い。でも、扱う相手には情報を渡してもらう必要はある。だからSDSだけ。これも理屈でつながります。

区分 PRTR制度 SDS制度
第一種指定化学物質 ○ ○
第二種指定化学物質 × ○

物質数(2023年4月1日施行)。 第一種指定化学物質515物質、うち特定第一種23物質、第二種指定化学物質134物質。改正前は第一種462・第二種100だったので、それぞれ増えています。数そのものが問われた実績はありませんが、「増えた」ことだけ知っておくと、古い教材の数字に出会ったときに迷いません。

化審法と化管法を、1枚で見分ける

この表を復元できれば、この2記事分は終わりです。

化審法 化管法(PRTR法)
正式名称のキーワード 化学物質の審査及び製造等の規制 環境への排出量の把握等及び管理の改善
やること 危ないものは流通させない 出ている量を把握・公表する
タイミング 製造・輸入の前(事前審査・許可制) 製造・使用の後(事後の届出)
分類 第一種特定/監視/第二種特定/優先評価 第一種指定/第二種指定
契機 カネミ油症事件(PCB) —
性格 禁止・制限する法律 見える化して自主管理を促す法律

「特定」と「指定」で言葉が違う。 化審法は第一種特定化学物質、化管法は第一種指定化学物質。似た名前の別物です。問題文を読むときは、まずどちらの法律の話かを先に確定させてください。

国試ではこう問われる

化管法は化審法とセットで出ることがほとんどです。聞かれ方は3つです。

① PRTRとSDSを入れ替える(最頻出)

出題回 選択肢 正誤 どこが違うか
第108回 SDS制度は、対象となる事業者が対象化学物質の排出・移動量を国に届け出る制度である 誤 それはPRTR制度
第108回 PRTR制度の対象物質は、SDS制度の対象物質に指定されている 正 第一種は両方の対象
第105回 化管法では、指定された化学物質について、SDSによる事業者への情報提供が義務付けられている 正 —
第105回 PRTR制度の対象事業者は、環境中への排出量及び廃棄物としての事業所外への移動量を国に届け出なければならない 正 2つの量の定義がそのまま出る
第97回 PRTR法で定められている第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質は、ともにPRTR制度の対象である 誤 第二種はSDSのみ
第99回 PRTR制度は、第一種指定化学物質と第二種指定化学物質の両方に適用される 誤 同上

「第二種指定化学物質もPRTRの対象だ」という誤り選択肢が、複数回にわたって繰り返し出ています。ここだけは確実に。

② データを読ませる

  • 第109回 問135……令和3年度のPRTR届出排出量・移動量の上位10物質のグラフを示し、化合物A〜Cを特定させる問題。塩化メチレン・エチルベンゼン・ノルマルヘキサンといった有機溶剤が並ぶので、有機溶剤の記事の知識がそのまま効きます

③ 化審法との役割分担

  • 第97回……「監視化学物質の設定は、化学物質の環境への放出量を把握することを目的としている」→ 誤。放出量の把握は化管法の仕事

まとめ

  • 化管法 =「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」。通称PRTR法
  • 化審法が入口(審査)、化管法が流れ(管理)。化管法は禁止する法律ではなく、見える化して自主管理を促す法律
  • 化管法は2制度。PRTR制度(排出量・移動量を国に届け出る)とSDS制度(情報を付けて相手に渡す)
  • 排出量 = 環境中へ出た量、移動量 = 事業所の外へ出た量(下水・廃棄物)
  • 排出量の9割以上は大気へ。トルエンが最多という構造。具体的な数値は年度を必ず明記する
  • 第一種指定化学物質 → PRTR + SDS の両方。第二種指定化学物質 → SDSのみ。ここが最頻出の引っかけ
  • 指定条件は①健康影響②動植物影響③排出後の化学変化④オゾン層破壊のいずれか1つ+環境中に継続存在
  • 特定第一種は第一種の中で発がん性などがあるもの(ダイオキシン類など)
  • 化審法は「特定」、化管法は「指定」。用語が1文字違う

化学物質と毒性の話は、ここでいったん区切りです。

次は放射線の分類を読んでみてください。同じ「化学物質・放射線の生体への影響」という単元の、放射線側に移ります。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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