安全性評価と適正使用

化審法の4分類と試験方法|どの試験が何を見ているか【薬剤師国家試験】

化審法と化管法のマインドマップ
化審法と化管法のマインドマップ

前の記事では、毒性試験で出た値を基準値に翻訳する話をしました。でも、基準値を決めるだけでは間に合わなかった事件があります。カネミ油症です。

PCBとPCDFが食用油に漏れて、人に健康被害が出た。このとき国が考えたのは、こういうことでした。

「PCBという物質を、世に出す前に検査しておけばよかったんじゃないか」

そこで1973年にできたのが化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)です。新しく製造・輸入する化学物質は、事前に審査して許可制にする。名前のとおり「審査」の法律です。

化学物質のライフサイクルで見ると、化審法は入口(製造)を押さえ、次の記事でやる化管法は途中(排出)を押さえます。まず入口からいきましょう。

この記事の核は2つです。①4つの分類を、性状の○×表で読む。②どの試験が何を見ているかを対応づける。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

4つの分類は、2つずつのペアで覚える

化審法の攻略は、この表を読めるようになることが9割です。

化審法の分類と性状の対応
化審法の分類と性状の対応

見るべき列は4つだけです。難分解性・高蓄積性・ヒトへの長期毒性・動植物への毒性。

そして4つの分類は、いきなり4つ覚えようとしないこと。2つずつのペアに割ってください。

ペア①(高蓄積性グループ)……第一種特定化学物質と監視化学物質 ペア②(低蓄積性グループ)……第二種特定化学物質と優先評価化学物質

ペア① 第一種特定化学物質と監視化学物質 — 違いは「毒性が分かっているか」

第一種特定化学物質は、いわばレジェンドです。いちばんやっかいなことが証明されてしまった物質。

  • 難分解性 ○(環境中で分解されない)
  • 高蓄積性 ○(生物の体内にたまる)
  • ヒトへの長期毒性 または 高次捕食動物への長期毒性 ○

規制は最も厳しく、製造・輸入・使用が原則禁止(許可制)。政令で指定された製品の輸入禁止や、回収措置命令まであります。

監視化学物質は、この「毒性のところだけが不明」な物質です。

  • 難分解性 ○
  • 高蓄積性 ○
  • 長期毒性 不明

なぜ「不明」という区分がわざわざあるのか。長期毒性の判定には動物の一生を使うので、何年もかかるからです。分解もせず体にたまることは分かっているのに、毒性の結果待ちで野放しにするわけにはいかない。「毒性が証明された瞬間に第一種になる危ないやつ」を、それまで監視しておく。だから監視化学物質。

監視化学物質の位置づけを、目的と取り違えない。 第97回に「監視化学物質の設定は、化学物質の環境への放出量を把握することを目的としている」という選択肢が出ました。これは誤りです。放出量の把握は化管法(PRTR制度)の仕事で、化審法ではありません。

ペア② 第二種特定化学物質と優先評価化学物質 — 蓄積しないほうのグループ

第二種特定化学物質は、難分解性か高蓄積性のどちらかが×——実際には難分解性で低蓄積性の物質です。

  • 難分解性 ○ または ×(○かつ○を除く)
  • ヒトへの長期毒性 または 生活環境動植物への長期毒性 ○
  • 備考:相当広範な地域の環境中に相当程度残留している

「毒性があるのに第二種でいいのか」と思うところですが、体にたまらないなら、濃度が上がらないかぎりそこまで危なくないという発想です。ただし広い地域に相当量が残っているなら話は別で、そのときは無視できない。だから備考欄に条件が付いています。

規制は第一種より緩く、製造・輸入予定数量の届出、実績報告、技術指針の遵守などです。

代表物質はトリクロロエチレン・テトラクロロエチレン・四塩化炭素・有機スズ化合物(TBTOを除く)。有機溶剤の記事でやった肝障害を起こすハロゲン化炭化水素が、そのままここに並びます。

優先評価化学物質は、「難分解性も高蓄積性もなさそうだが、毒性がちょっと怪しい」物質です。表では難分解性が「?」、高蓄積性が「×」、そして「怪しいので優先的に調査を」と書かれています。

リスク評価を優先的に進める対象で、詳細用途別の出荷量などの届出義務があります。ここで長期毒性が確認されれば、第二種特定化学物質に上がります。

4分類を1枚に

分類 難分解性 高蓄積性 長期毒性 ひとことで
第一種特定化学物質 ○ ○ あり(ヒト または 高次捕食動物) 最悪。原則禁止
監視化学物質 ○ ○ 不明 第一種の予備軍
第二種特定化学物質 ○(高蓄積性は×) × あり(ヒト または 生活環境動植物) 広域残留が条件
優先評価化学物質 ? × 怪しい 優先的に評価する

「高次捕食動物」と「生活環境動植物」の違いに注目。 第一種は高次捕食動物(食物連鎖の上位。蓄積するから上位で濃縮される)、第二種は生活環境動植物。蓄積するかしないかが、見るべき生き物を変えているわけで、ここも理屈でつながります。

ダイオキシンは化審法で規制されていない。 ダイオキシン類は非意図的に生成する物質なので、「製造・輸入を審査する」という化審法の枠組みに乗りません。第110回 問21がそのまま「主に非意図的に生成することから化審法で規制されていないのはどれか」と聞いており、正解がポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシンです。ダイオキシン類はダイオキシン類対策特別措置法のほうで扱われます。

第一種特定化学物質には、見覚えのある名前が並ぶ

第一種特定化学物質は、この科目でさんざん出てきた物質ばかりです。新しく覚えるというより、回収する感覚で読んでください。

物質 用途 どこで出てきたか
PCB(ポリ塩化ビフェニル) 絶縁油 カネミ油症事件
ポリ塩化ナフタレン 機械油 PCBの親戚
ヘキサクロロブタジエン 溶媒 —
ヘキサクロロベンゼン 殺虫剤 有機塩素系農薬
DDT 殺虫剤 有機塩素系農薬とPOPs
TBTO(ビス(トリブチルスズ)オキシド) 船底塗料 内分泌撹乱物質。イボニシのインポセックス
PFOS・PFOA 撥水剤など 近年追加された

PCBは「ポリ塩化ビフェニル」です。ポリ塩化ビニル(PVC)ではありません。第105回の問題文でも「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」と明記されています。

マインドマップの注意点。 手元のマインドマップの第一種特定化学物質の一覧図で、PCBが「ポリ塩化ビニル」と書かれています。正しくはポリ塩化ビフェニルです。この図は記事には載せず、上の表で代替しました(誤記リストM-107)。

TBTOだけは「有機スズ化合物」の中で例外扱いになります。有機スズ化合物は一般には第二種特定化学物質ですが、TBTOだけは第一種。「有機スズ化合物(TBTOを除く)が第二種」という書かれ方をするのは、そのためです。

試験方法|見たい性状が4つなら、試験も4グループ

ここが第2の核です。見たい性状が4つある以上、試験も4グループに分かれます。「どの試験が何を見ているか」を対応づけるだけで、この節は終わります。

見たい性状 試験 使うもの
分解性 微生物等による化学物質の分解度試験 活性汚泥
蓄積性 魚介類の体内の濃縮度試験 メダカ・コイ
〃(簡易法) 1-オクタノール/水 分配係数(log Pow)測定試験 —
ヒトへの長期毒性 変異原性試験・反復投与毒性試験(慢性毒性) —
動植物への毒性 藻類生長阻害試験(植物) 藻類
〃 ミジンコ繁殖試験(プランクトン) ミジンコ
〃 ミジンコ急性遊泳阻害試験 ミジンコ
〃 魚類急性毒性試験 魚類

それぞれ、名前が中身を説明しています。

  • 分解性に活性汚泥……微生物のかたまりです。下水処理でも同じものが出てきます(下水処理の記事)。「微生物に食べさせて分解するか見る」と読めば、そのまま
  • 蓄積性に魚……水銀の生体濃縮の話と同じ発想です。食物連鎖で濃縮される物質は、魚の体内から出ていかない
  • 蓄積性に log Pow……脂溶性が高いほど体にたまる。魚を飼うより速くて安い簡易法です。第105回 問24が「生物濃縮を受けやすいかどうかを調べるのに適した試験」を聞いており、これが答えの軸になります

ミジンコが2回出てくるのが引っかけ

ミジンコを使う試験が2つあることに気をつけてください。

試験 何を見るか
ミジンコ繁殖試験 繁殖が抑えられるか(慢性的な影響)
ミジンコ急性遊泳阻害試験 泳げなくなるか(急性の影響)

第101回 問23では、「ミジンコを用いた急性遊泳阻害試験」が蓄積性の試験として誤り選択肢に置かれました(正解はコイを用いた濃縮度試験)。ミジンコは毒性を見る試験であって、蓄積性ではありません。

魚類も同じ構図です。メダカ・コイを使う濃縮度試験は蓄積性、魚類急性毒性試験は毒性。同じ生き物でも、見ているものが違います。

国試ではこう問われる

化審法は15年で12回以上登場している最頻出テーマの一つです。聞かれ方は次の3つに集約されます。

① 性状の○×を入れ替える(最頻出)

出題回 選択肢 正誤 どこが違うか
第105回 第二種特定化学物質は、難分解性で高蓄積性であり、人又は高次捕食動物への長期毒性を有する 誤 それは第一種。第二種は低蓄積性
第108回 監視化学物質は、難分解性、低蓄積性であり、ヒト及び生活環境動植物に対して長期毒性を有する 誤 監視は高蓄積性で毒性は不明
第102回 監視化学物質とは、分解性があり、蓄積性が認められなくても…長期毒性のおそれのある物質 誤 監視は難分解性・高蓄積性
第102回 第二種特定化学物質は、難分解性、低蓄積性で、ヒト及び生活環境動植物への長期毒性をもつ 正 —
第97回 第二種特定化学物質は、高蓄積性を有し、ヒトへの長期毒性又は高次捕食動物への長期毒性… 誤 第一種の説明
第100回 問21 難分解性、高蓄積性及びヒト又は高次捕食動物への長期毒性を有する分類はどれか — 答えは第一種特定化学物質

「第一種と第二種を入れ替える」「監視と優先評価を入れ替える」——この2パターンだけです。ペアで覚えていれば、ペアの中の違いだけ見ればよくなります。

② 試験方法を入れ替える

  • 第101回 問23……蓄積性の判定に用いる試験は? → コイを用いた濃縮度試験
  • 第105回 問24……生物濃縮を受けやすいか調べる試験は? → log Powまたは魚類の濃縮度試験の軸
  • 第108回……「化審法において、分解性の判定には活性汚泥が用いられる」→ 正

③ 制度そのもの

  • 第108回……「化審法の対象となる物質は、新規化学物質のみであり、既存化学物質は対象とはならない」→ 誤。既存化学物質も対象です
  • 第105回……「化審法は、PCBによる環境汚染及び人での健康被害の発生を契機として制定された」→ 正
  • 第105回……「新規化学物質を製造又は輸入するにあたって、事前に安全性の審査を受けることが義務付けられている」→ 正

まとめ

  • 化審法は、カネミ油症事件(PCB・PCDF)を契機に制定された「入口」の法律。新規化学物質は製造・輸入の前に事前審査
  • 4分類は2つずつのペアで覚える。高蓄積性グループ=第一種特定/監視、低蓄積性グループ=第二種特定/優先評価
  • 第一種 vs 監視の違いは「長期毒性が分かっているか、不明か」だけ。毒性が証明されれば監視は第一種に上がる
  • 第二種 vs 優先評価の違いは「長期毒性が確認済みか、怪しいだけか」。確認されれば優先評価は第二種に上がる
  • 第一種は「高次捕食動物」、第二種は「生活環境動植物」。蓄積するかどうかが、見る生き物を変えている
  • PCBはポリ塩化ビフェニル。ポリ塩化ビニルではない
  • TBTOだけは第一種。だから「有機スズ化合物(TBTOを除く)が第二種」
  • ダイオキシン類は非意図的生成物なので化審法の対象外
  • 試験は見たい性状に1対1で対応する。分解性=活性汚泥、蓄積性=メダカ・コイの濃縮度試験/log Pow、ヒトへの長期毒性=変異原性・反復投与、動植物への毒性=藻類・ミジンコ・魚類
  • ミジンコは2種類(繁殖試験/急性遊泳阻害試験)、しかもどちらも「毒性」の試験。蓄積性ではない

次は化管法(PRTR法)とはを読んでみてください。化審法が入口を止める法律なら、化管法はすでに世に出ているものの流れを見える化する法律です。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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