水環境

下水処理|下水の定義と浮遊生物法・生物膜法の違い【薬剤師国家試験】

下水処理のマインドマップ
下水処理のマインドマップ

ここからは下水処理です。上水が「飲むための水を作る」話だったのに対して、下水は「使った水を自然に返せる状態にする」話になります。

この単元は、用語の定義と二次処理の分類の2か所が出題の中心です。とくに下水の定義は、条文の言い回しがそのまま問われることがあるので、一字一句のレベルで押さえておきたいところです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

下水の定義:「排水または雨水」がよく出る

下水とは、生活や事業に起因し、もしくは付随する排水または雨水のことです。

ここで落とさないでほしいのが、雨水も下水に含まれるという点です。「排水だけ」と思い込んでいると引っ掛かります。実際、この部分は出題されやすいところです。

そして、雨水が含まれていることには意味があります。薬学部で下水というと活性汚泥法のような処理技術の話になりがちですが、下水道にはもうひとつ、

都市に降った大雨を川や海に素早く導き、水害から守る

という役割があります。処理する役割と、流す役割。この2つをセットで覚えておいてください。

全体の流れ:標準活性汚泥法

標準活性汚泥法の流れ
標準活性汚泥法の流れ

日本で最も使われているのが標準活性汚泥法です。まず全体を通しで見ます。

下水 → スクリーン → 沈砂池 → 第一沈殿池 → 曝気槽 → 第二沈殿池 → 消毒槽 → 放流

この流れが、処理の段階で3つに区切られます。

段階 場所 目的
一次処理 スクリーン、沈砂池、第一沈殿池 浮遊物質の除去
二次処理 曝気槽、第二沈殿池 BODの除去(溶けている有機物を微生物に食べてもらう)
三次処理 — NとPの除去(富栄養化の防止)

一次処理は「大きいものと浮いているものを物理的に取る」段階です。ここまでは上水の浄水処理と発想が似ています。

二次処理からが下水処理の本番で、水に溶けている有機物を、微生物に好気的に食べてもらう段階になります。有機物を食べた微生物は活性汚泥となって溜まっていくので、これを第二沈殿池で沈めて分離します。沈んだ汚泥の一部は返送汚泥として曝気槽に戻し、いい菌が増えるようにコントロールします。

なお、曝気槽の中で沈殿しにくい粘度の高い状態になってしまうことをバルキングといいます。これが起きると第二沈殿池で汚泥が沈んでくれなくなるため、曝気槽の管理が必要になります。

余った汚泥(余剰汚泥)と三次処理については、次の記事で扱います。

二次処理は「浮遊生物法」と「生物膜法」の2つ

ここが分類問題の本丸です。二次処理のやり方は大きく2つに分かれます。

浮遊生物法:微生物が水の中に浮遊した状態で有機物を食べる 生物膜法:微生物を担体に貼り付けて膜を作らせ、そこで有機物を食べさせる

そして、この2つの決定的な違いが汚泥の発生量です。

浮遊生物法 生物膜法
微生物の状態 水中に浮遊 担体に貼り付いた生物膜
膜の内外 — 外は好気性、内は嫌気性
汚泥 沈殿してできる汚泥を定期的に処理する必要がある 汚泥が少ない

なぜ生物膜法は汚泥が少ないのか

生物膜は、外側が好気性、内側が嫌気性という層構造になっています。そのため、汚染物質を好気的に食べた微生物を、さらに別の微生物が食べるという段階が生まれます。微生物が微生物を処理してくれるので、最終的に残る汚泥が少なくて済むわけです。

ここが生物膜法の最大のメリットで、対比としてそのまま出題されます。

浮遊生物法の2つ

活性汚泥法

活性汚泥法
活性汚泥法

標準活性汚泥法で見たとおりです。曝気槽の底からエアレーション(ブクブクと空気を送る)を行い、活性汚泥と有機物がミキシングされた状態を作ります。第二沈殿池で沈めて上澄みを消毒槽へ送り、沈んだ汚泥の一部を返送汚泥として戻します。

オキシデーションディッチ法

オキシデーションディッチ法
オキシデーションディッチ法

小規模な下水処理場で最も使われている方法です。

流れるプールのような環状の水路で水をぐるぐる回しながら、たくさんの酸素を与えます。やっていること自体は曝気槽とほぼ同じで、そのあと第二沈殿池に入れて余剰汚泥を返送する流れも共通です。「小規模ならオキシデーションディッチ法」と押さえておきましょう。

生物膜法の3つ

生物膜法は3つ覚えてください。共通点はどれも生物膜があることです。

散水ろ床法

散水ろ床法
散水ろ床法

ろ材に汚水のシャワーを振りかけ、生物膜で分解しつつ砂床でろ過も行う方法です。上水の緩速ろ過池のイメージに近く、上からシャワー状に汚水をまき、好気性の生物膜を通しながら下へ落として処理水を得ます。

回転円板法

回転円板法
回転円板法

生物膜を付けた円板を回転させる方法です。円板が空気中に出ているときに酸素に触れ、水中に入っているときに汚水に触れる——この繰り返しで微生物に処理してもらいます。

接触曝気法

接触曝気法
接触曝気法

ろ材(接触材)のすき間に生物膜が形成され、そこに空気を送り込んで汚水を浄化する方法です。担体を沈めて、下からブクブクと空気を入れるイメージです。

散水ろ床法・回転円板法・接触曝気法の3つ。名前と絵が一致していれば十分です。

まとめ

  • 下水とは生活や事業に起因し、もしくは付随する排水または雨水。雨水も含まれるのが頻出
  • 下水道には、処理する役割のほかに都市の大雨を川や海に導いて水害から守る役割がある
  • 標準活性汚泥法の流れはスクリーン→沈砂池→第一沈殿池→曝気槽→第二沈殿池→消毒槽→放流
  • 一次処理=浮遊物質の除去、二次処理=BODの除去、三次処理=NとPの除去
  • 二次処理は浮遊生物法(活性汚泥法・オキシデーションディッチ法)と生物膜法(散水ろ床法・回転円板法・接触曝気法)
  • 両者の最大の違いは汚泥の発生量。生物膜法は外が好気性・内が嫌気性で、微生物を微生物が食べるため汚泥が少ない
  • 曝気槽で汚泥が沈まなくなる現象がバルキング

次は下水の三次処理|窒素とリンの除去法とメタン発酵を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

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