水環境

下水の三次処理|窒素とリンの除去法とメタン発酵【薬剤師国家試験】

下水処理のマインドマップ
下水処理のマインドマップ

前の記事で、二次処理までで有機物(BOD)は除去できることを見ました。ではなぜ三次処理が必要なのか。通常の活性汚泥法では、窒素とリンが除去できないからです。

窒素とリンをそのまま流してしまうと、閉鎖性水域で富栄養化を起こし、水の華や赤潮につながります。三次処理は、この富栄養化を防止するための工程です。

この記事では三次処理(NとPの除去)と、あわせて余剰汚泥の処理(メタン発酵)を扱います。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

窒素の除去:生物学的脱窒素法

生物学的脱窒素法
生物学的脱窒素法

窒素の除去には生物学的脱窒素法(硝化脱窒素法)を使います。2段階に分かれていて、好気と嫌気が切り替わるのが特徴です。

ステップ1:硝化(好気)

NH₄⁺ →(酸化)→ NO₃⁻

硝化菌が、酸素を使ってアンモニウムイオンを硝酸イオンまで酸化します。酸化する=酸素が要るので、好気的な条件です。

ステップ2:脱窒(嫌気)

NO₃⁻ →(脱窒)→ N₂↑

脱窒素菌が、硝酸イオンから窒素ガスを作ります。こちらは嫌気的な条件です。できた窒素ガスは気体として大気中に放出され、水から窒素が抜けます。

好気で硝化菌、嫌気で脱窒素菌。 菌の名前と条件をセットで覚えてください。「硝化」「脱窒」という言葉自体が何をしているかを表しているので、矢印の向きを思い出せれば式は書けます。

なお、この処理法は硝化脱窒素法とも呼ばれますが、最近は生物学的脱窒素法という名称で出題されることが多くなっています。どちらの名前で出ても対応できるようにしておきましょう。

リンの除去:化学的か、生物学的か

リンの除去には2つのアプローチがあります。

化学的:凝集沈殿法

硫酸アルミニウムや石灰を加えて、リンを沈殿させて除去する方法です。上水の薬品凝集沈殿と同じ発想で、薬品で沈めてしまおうというものです。

生物学的:嫌気好気活性汚泥法

こちらのほうがよく出題されます。リンを蓄積する性質をもつ細菌を利用した、少し変わった方法です。

しくみはこうです。

  1. まず嫌気的条件(O₂がない状態)に置く。すると細菌は、細胞内に溜め込んでいたリンを放出する
  2. 次に好気的条件にする。すると細菌は、下水中のリンを過剰に取り込む

嫌気で吐き出させてから好気に切り替えると、細菌がリンをめちゃくちゃ溜め込む、という性質を利用しているわけです。一度吐き出させる工程に意味があります。

  1. リンを溜め込んだ微生物を処分すれば、水からリンが除去される

嫌気で放出 → 好気で過剰摂取。この順番が逆にならないよう注意してください。名前も「嫌気好気活性汚泥法」と、順番がそのまま入っています。

余剰汚泥の処理:メタン発酵

メタン発酵で得られるもの
メタン発酵で得られるもの

最後に、溜まった余剰汚泥をどうするかです。余剰汚泥は消化槽で嫌気的に処理します。これがメタン発酵です。

ポイントは、ただ処分するのではなく再利用できるという点にあります。元素ごとに、何になるかが決まっています。

元素 生成物 用途
C(炭素) メタン(CH₄) 燃料
N(窒素) アンモニア(NH₃) 肥料
P(リン) リン酸 肥料
S(硫黄) メルカプタン 肥料

CはメタンでNPSは肥料、という形で押さえるとシンプルです。下水処理場が、処理施設であると同時に資源回収の場でもある、という視点を持っておくと記憶に残ります。

まとめ

  • 三次処理の目的は富栄養化の防止。通常の活性汚泥法ではNとPは除去できない
  • 窒素は生物学的脱窒素法(硝化脱窒素法)で除去。好気で硝化菌がNH₄⁺→NO₃⁻、嫌気で脱窒素菌がNO₃⁻→N₂↑
  • リンの除去は化学的な凝集沈殿法(硫酸アルミニウム・石灰)と、生物学的な嫌気好気活性汚泥法
  • 嫌気好気活性汚泥法は、嫌気的条件で細菌にリンを放出させ、好気的条件で過剰に取り込ませる
  • 余剰汚泥は消化槽で嫌気的に処理=メタン発酵。C→メタン(燃料)、N→アンモニア、P→リン酸、S→メルカプタン(肥料)

ここまでで、上水と下水の話は終わりです。次は、人の手を離れた自然の水そのものを扱う「水質汚濁」に進みます。

次は水質汚濁に係る環境基準|河川・湖沼・海域・地下水で項目が違う理由を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

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