水環境

不連続点塩素処理法の覚え方|塩素要求量と塩素消費量【薬剤師国家試験】

消毒のマインドマップ
消毒のマインドマップ

ここは、浄化方法のマインドマップの中でも一番のハイライトです。講義でも「一番出やすい、出しやすいところ」と話している単元で、グラフと用語の定義さえ組み合わされば、そのまま得点になります。

逆に言うと、ここを「グラフの形を丸暗記」で乗り切ろうとすると必ず崩れます。a点・b点・c点のどれが要求量でどれが消費量か、水の種類ごとに全部入れ替わるからです。覚えるのは定義2つと水の分類4つだけ。グラフはその結果として描けます。順番に行きましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

そもそも何がしたい処理なのか

前の記事の結論を一行で言うと、こうでした。

水道水の殺菌力を維持したい → 殺菌力の強い遊離残留塩素を多く残したい → でも不純物があると消費され、結合残留塩素(クロラミン)になってしまう

そして、そのクロラミンもさらに反応するとN₂になって飛んでいってしまいます。つまり、水の中に余計なものが入っているうちは、いくら塩素を入れても遊離残留塩素として残ってくれない。

そこで、「余計なものを全部やっつけきるまで塩素を入れ続ける」というのが不連続点塩素処理法の発想です。入れ続けていくと、どこかの時点で不純物が尽きて、そこから先は入れた塩素がそのまま遊離残留塩素として積み上がっていく。そのターニングポイントを見つけるのがこの単元です。

覚えるのは定義2つだけ

この単元の用語は2つしかありません。ここだけは正確に覚えてください。

  • 塩素要求量:初めて遊離残留塩素が増加し始める注入量
  • 塩素消費量:初めて残留塩素が増加し始める注入量

違いは「遊離」がつくかつかないか、それだけです。そして残留塩素には遊離と結合の2種類があるので、結合残留塩素(クロラミン)ができ始めた時点でも「残留塩素はできた」ことになる——ここが引っ掛けポイントになります。

水道水として欲しいのは殺菌力のある遊離残留塩素なので、実務上重要なのは要求量のほうです。

水を4つに分類して、1つずつ追いかける

不純物として何が入っているかで、水を4つに分けます。

①純水:何も邪魔するものがない

H₂O + Cl₂ → HClO + HCl

塩素を入れれば、その分がそのまま次亜塩素酸になります。最初から遊離残留塩素が直線的に増えていくので、

  • 消費量 = 0
  • 要求量 = 0

グラフでは原点から伸びる1本の直線になります。以降のグラフで、この直線が比較の基準線になります。

②還元水:還元性物質が塩素を食う

還元水のグラフ
還元水のグラフ

鉄イオン(Fe²⁺)や亜硝酸イオン(NO₂⁻)といった還元性物質が入っている水です。

HClOは酸化力で菌を殺すわけですが、水の中に還元性物質がいると、菌に出会う前にそちらと反応して消費されてしまいます。

HNO₂ + HClO → HNO₃ + H⁺ + Cl⁻

還元性物質が尽きるまでは残留塩素が増えません。尽きた瞬間(グラフのa点)から、純水と同じように直線的に増えていきます。

  • 消費量 = a
  • 要求量 = a

この水では、初めてできる残留塩素がいきなり遊離残留塩素なので、消費量と要求量が一致します。

③アミン類含有:一度増えて、また減る

アミン類含有水のグラフ
アミン類含有水のグラフ

アンモニアなどのアミン類が入っている水です。ここが一番ややこしいので、ゆっくり追いかけてください。

ステップ1:クロラミンができて、残留塩素は増える

NH₃ + HClO → NH₂Cl + H₂O

クロラミンは結合残留塩素です。遊離ではありませんが、残留塩素ではあります。つまり、塩素を入れ始めた瞬間から「残留塩素」としてはカウントされて増えていきます。

ステップ2:クロラミンが窒素になって飛んでいき、残留塩素が減る

NH₂Cl + HClO → N₂↑ + HCl

アミン類が全部クロラミンに変わり終わったあと、さらに塩素を入れると、今度はそのクロラミンが分解されてN₂として大気中に逃げていきます。残留塩素量のグラフはここで下り坂になります。

ステップ3:アミン類が尽きて、遊離残留塩素が増え始める

クロラミンも飛び切ったところ(グラフのb点)が谷底です。これが不連続点で、ここから先は入れた塩素が遊離残留塩素としてそのまま積み上がります。

  • 消費量 = 0(最初からクロラミン=残留塩素ができているため)
  • 要求量 = b

「消費量が0」に違和感があるかもしれませんが、定義に戻れば当然です。残留塩素は最初からできているのですから。

④還元水+アミン:実際の水はこれ

不連続点塩素処理法の4本のグラフ
不連続点塩素処理法の4本のグラフ

現実の水には、還元性物質もアミン類も両方入っています。起こることは②と③を順番につなげただけです。

  1. まず還元性物質が塩素を消費する(a点まで)
  2. 次にクロラミンができて、残留塩素が増える
  3. そのクロラミンがN₂になって飛び、残留塩素が減る
  4. アミン類が尽きたところ(c点)から、遊離残留塩素が直線的に増える
  • 消費量 = a
  • 要求量 = c

4つを表で一気に確認する

塩素要求量と塩素消費量の表
塩素要求量と塩素消費量の表
水の種類 消費量(残留塩素ができ始める量) 要求量(遊離残留塩素ができ始める量)
①純水 0 0
②還元水 a a
③アミン類含有 0 b
④還元水+アミン a c

表の形で丸暗記しようとすると、試験本番でaとbとcが入れ替わります。そうではなく、

  • 消費量を聞かれたら「残留塩素(遊離でも結合でも)が初めてできるのはどこ?」と自問する
  • 要求量を聞かれたら「遊離残留塩素が初めて増え始めるのはどこ?」と自問する

この2つの問いを立てるだけで、その場で表を再現できます。定義に戻れば、不連続点塩素処理法は恐るるに足りません。

まとめ

  • 目的は、殺菌力の強い遊離残留塩素を水道水に残すこと。不純物が尽きるまで塩素を入れ続けるのが不連続点塩素処理法
  • 塩素要求量=初めて遊離残留塩素が増加し始める注入量
  • 塩素消費量=初めて残留塩素が増加し始める注入量。クロラミン(結合残留塩素)も残留塩素に含まれる点が引っ掛け
  • ②還元水ではFe²⁺やNO₂⁻が塩素を消費する(HNO₂ + HClO → HNO₃ + H⁺ + Cl⁻)
  • ③アミン類含有では、クロラミンが増えたあとN₂として飛んで減り、谷底が不連続点になる
  • 4分類の答えは①0/0、②a/a、③0/b、④a/c。表を覚えるのではなく、定義から復元する

次は浄水の高度処理と水道水の問題物質|トリハロメタン・カビ臭を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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