
ここまでで、原水を浄水処理して消毒するところまで終わりました。では、できあがった水道水は何をクリアしていれば水道水と名乗れるのか。それを決めているのが水質基準です。
この単元は数字が多く、暗記の色が濃い場所です。ただ、覚えるべき数字は語呂で4つに絞れますし、項目のグループ分けも「病原生物・無機物・有機物・消毒副生成物・味」と発想の順に並んでいます。丸暗記ではなく、構造から入りましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
「水質基準」と「管理目標」は別物
まず、混ざりやすい2つを最初に切り分けます。
| 水質基準 | 水質管理目標設定項目(管理目標) | |
|---|---|---|
| 決めているもの | 国の52項目(2026年4月から。それまでは51項目) | より質の高い水道水を目指すための目標値 |
| 性格 | 飲用の可否。最低限これはクリアせよ | 目標。ここを目指していこう |
たとえばpHは、水質基準では5.8〜8.6と幅で決められていますが、管理目標のほうにもpHがあって、そちらは7.5程度というより望ましい値が示されています。「最低ライン」と「理想値」の二段構えになっている、と考えるとわかりやすいと思います。
残留塩素は管理目標のほうに入っている、という点も押さえておいてください。
数字は語呂で4つだけ押さえる

水質基準の数値はたくさんありますが、国試で狙われるのはほぼこの4つです。
「100さい 天皇 にっこり 降参」
| 語呂 | 項目 | 基準値 |
|---|---|---|
| 100さい | 一般細菌 | 100コロニー/mL以下 |
| 天皇 | 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素(NO) | 10mg/L以下 |
| にっこり | 塩化物イオン(Cl⁻) | 200mg/L以下 |
| 降参 | 硬度 | 300mg/L以下 |
「100さい」で一般細菌100、「天皇」で10とNO、「にっこり」で200とCl⁻、「降参」で硬度300。ここだけは声に出して覚えてしまってください。数字問題はこの4つでかなりカバーできます。
なおpHは5.8〜8.6です。これも頻出なので、語呂とは別に覚えておきましょう。
水質基準の項目を5グループで整理する
病原生物
- 一般細菌:100コロニー/mL以下
- 大腸菌:検出されないこと
一般細菌には数値の基準がありますが、大腸菌は「検出されないこと」です。ゼロでなければいけません。この違いは後述の理由から来ています。
無機物
硝酸態窒素と亜硝酸態窒素です。メトヘモグロビン血症を起こす物質なので基準に入っています。詳しくは次の記事で扱います。
一般有機物
四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンの4つ。
「またこの4つか」と思った人は正解です。化学物質の毒性の単元でも出てくる、ハロゲン化炭化水素で肝障害を起こすグループです。科目内で何度も顔を出すので、この4つはセットで覚えておくと効率がいいところです。
消毒副生成物
高度処理の記事で出てきたトリハロメタンです。メタン(CH₄)の水素が塩素や臭素に置換されたもので、次の4つに個別の基準値があり、さらに総トリハロメタン量としても0.1mg/L以下という基準があります。
- クロロホルム(=トリクロロメタン)
- ブロモジクロロメタン
- ジブロモクロロメタン
- ブロモホルム(=トリブロモメタン)
名前を丸暗記するのではなく、中心に炭素があって、水素がCl(クロロ)とBr(ブロモ)に置き換わっているという構造で見ると、4つの名前は自力で並べられます。アミン類と塩素から生成するホルムアルデヒドも消毒副生成物に含まれます。
味に関する項目
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| ナトリウム(Na⁺) | 味に関係する |
| 塩化物イオン(Cl⁻) | 200mg/L以下。しょっぱさはCl⁻で感じる。海水や尿でも値が上がる。モール法で測定 |
| 蒸発残留物 | ミネラル量のこと。多いと苦くなる |
| 全有機炭素(TOC) | 汚染の指標にもなる。有機物が多いと渋みが増す |
そして忘れやすいのがカビ臭です。ジェオスミンと2-メチルイソボルネオールも水質基準に入っています。
微生物の試験法:なぜ2つに分かれているのか
ここからは試験法です。一般細菌と大腸菌で方法が違うので、分けて押さえます。
一般細菌:標準寒天培地法
標準寒天培地法で測定し、100コロニー/mL以下が基準です。
では、一般細菌を測って何を見ているのか。きちんと塩素消毒ができているか、菌の数が減っているかです。特定の病原菌を探しているのではなく、消毒がうまくいっているかの全体的な指標だと考えてください。
大腸菌:特定酵素基質培地法(MMO-MUG法)

大腸菌は特定酵素基質培地法という特別な方法で測ります。わざわざ別の方法を使うのは、大腸菌が検出されることの意味が重いからです。
大腸菌が検出される = 人畜の直接のし尿汚染がある
し尿汚染があるということは、赤痢菌・腸チフス菌・コレラ菌といったほかの病原微生物もいるかもしれないということ。だから「検出されないこと」なのです。数の問題ではなく、1つでも出たらアウトという扱いになります。
判定のしくみ
MUG(4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド)という基質を含む培地に検水を加え、24時間後に紫外線を当てて蛍光を調べます。
大腸菌がいると、大腸菌のもつβ-グルクロニダーゼがMUGを分解し、β-D-グルクロン酸と4-メチルウンベリフェロンが生じます。この4-メチルウンベリフェロンが青色蛍光を発するので、比色より蛍光が大きければ陽性、と判定します。
「MUG → β-グルクロニダーゼで分解 → 4-メチルウンベリフェロン → 青色蛍光」という一本の流れで覚えてください。
まとめ
- 水質基準は国が定める52項目(2026年4月にPFOS・PFOAが加わり51→52。水道行政は2024年度から環境省の所管)で飲用の可否を決めるもの。管理目標はより質の高い水を目指す目標値で、残留塩素はこちらに入る
- 数字の語呂は「100さい 天皇 にっこり 降参」=一般細菌100コロニー/mL、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素10mg/L、塩化物イオン200mg/L、硬度300mg/L。pHは5.8〜8.6
- 項目は病原生物・無機物・一般有機物・消毒副生成物・味+カビ臭で整理する
- 一般有機物の四塩化炭素・トリクロロエチレン・テトラクロロエチレン・ジクロロメタンは科目内で繰り返し出るセット
- 一般細菌は標準寒天培地法で100コロニー/mL以下。見ているのは消毒がうまくいっているか
- 大腸菌は特定酵素基質培地法(MMO-MUG法)で検出されないこと。検出=人畜の直接のし尿汚染を意味する
- 判定はMUG → β-グルクロニダーゼ → 4-メチルウンベリフェロンの青色蛍光
次は硝酸態窒素・亜硝酸態窒素・アンモニア態窒素|汚染の新旧とメトヘモグロビン血症を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。
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