水環境

硝酸態窒素・亜硝酸態窒素・アンモニア態窒素|汚染の新旧とメトヘモグロビン血症【薬剤師国家試験】

水質基準のマインドマップ
水質基準のマインドマップ

水質基準の中で、窒素の名前がついた項目が3つ出てきます。硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素です。名前が似ているうえに、基準に入っていたり管理目標だったり測定法が違ったりするので、まとめて整理しておきたいところです。

この3つは、1本の化学反応の流れの上に並んでいると捉えると一気に整理できます。そして「汚染が古いか新しいか」という視点が、そのままその流れの向きになっています。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

硝酸態窒素・亜硝酸態窒素が水質基準に入っている理由は2つ

理由は次の2つです。どちらもよく問われます。

  1. メトヘモグロビン血症の原因物質になるから
  2. 古い時期の汚染指標だから

基準値は10mg/L以下(前の記事の語呂「天皇」の部分)です。順番に見ていきます。

理由1:乳児のメトヘモグロビン血症

メトヘモグロビン血症の機序
メトヘモグロビン血症の機序

とくに生後数か月の乳児が、メトヘモグロビン血症になりやすいことが知られています。機序を順に追います。

  1. 水道水(や井戸水)の中の硝酸イオン(NO₃⁻)を体内に取り込む
  2. 乳児は胃がまだ発達しておらず胃内のpHが高め(酸性が弱い)なため、腸内細菌が生き残りやすい
  3. その細菌がNO₃⁻を亜硝酸イオン(NO₂⁻)に還元する
  4. NO₂⁻がヘモグロビンの鉄をFe²⁺ → Fe³⁺に酸化する
  5. 酸化されたヘモグロビン(メトヘモグロビン)は酸素を運べない

ポイントは、悪さをしているのは亜硝酸イオンのほうだということです。硝酸態窒素そのものは、体内で還元されて亜硝酸態窒素にならなければ、ほとんど問題にならないと考えられています。

実際に、井戸水に硝酸態窒素が含まれていることに気づかないまま粉ミルクを溶いて飲ませ、乳児がメトヘモグロビン血症を起こした事例も報告されています。数字を覚える単元に見えますが、現実に起きている健康被害です。

他の単元とのつながり

この「亜硝酸イオンが悪さをする」という構図は、食品衛生のN-ニトロソ化合物の話と同じです。あちらでは、硝酸塩が口腔内細菌で亜硝酸塩に還元され、アミンと反応してニトロソアミン(発がん物質)ができる、という流れでした。

硝酸 → 細菌が還元 → 亜硝酸が悪さをする。この一本の型で、衛生の2か所をまとめて処理できます。

理由2:古い時期の汚染指標

タンパクから硝酸態窒素までの流れ
タンパクから硝酸態窒素までの流れ

もうひとつの理由が、汚染の時期を推定できることです。流れはこうなっています。

タンパク質 →(分解)→ アンモニア態窒素 →(酸化)→ 亜硝酸態窒素 →(酸化)→ 硝酸態窒素

し尿汚染などでタンパク質が水に入ると、まず分解されてアンモニア態窒素になり、それが酸化されて亜硝酸態窒素、さらに硝酸態窒素へと進んでいきます。

つまり、流れの下流にあるものが検出される = 汚染されてから時間が経っているということ。硝酸態窒素や亜硝酸態窒素が出てくれば、それは古い時期の汚染の証拠になります。

測定法は、イオンクロマトグラフ法または吸光光度法です。

アンモニア態窒素は「新しい時期の汚染」

では、流れの上流にあるアンモニア態窒素はどうか。こちらは逆に新しい時期の汚染の指標になります。

理由は2つの側面から説明できます。ひとつは、上で見たように、アンモニア態窒素は流れの最初にあるから。もうひとつは消毒のしくみです。

アンモニアはアミン類ですから、不連続点塩素処理法のところで見たとおり、塩素と反応してクロラミンになり、最終的にはN₂として飛んでいきます。つまりきちんと消毒されていれば、アンモニア態窒素は消えているはずなのです。

それにもかかわらず検出されるということは、消毒が終わったあと、採取されるまでの間に汚染が起きたことを意味します。だから「新しい汚染」です。

測定法はインドフェノール法です。

3つを1枚に整理する

項目 汚染の時期 意味・特徴 測定法
アンモニア態窒素 新しい 消毒でなくなるはずのものが残っている インドフェノール法
亜硝酸態窒素 古い メトヘモグロビン血症の実行犯 イオンクロマトグラフ法・吸光光度法
硝酸態窒素 古い 還元されて亜硝酸になると危険 イオンクロマトグラフ法・吸光光度法

硝酸態窒素と亜硝酸態窒素は合わせて10mg/L以下が水質基準です。

覚え方としては、「タンパクから遠いほど古い汚染」という一言を持っておけば、どれが新しくてどれが古いかで迷うことはなくなります。

まとめ

  • 硝酸態窒素・亜硝酸態窒素が水質基準にあるのは、①メトヘモグロビン血症の原因、②古い時期の汚染指標の2つの理由から。基準値は合わせて10mg/L以下
  • メトヘモグロビン血症は、NO₃⁻が腸内細菌でNO₂⁻に還元され、ヘモグロビンのFe²⁺をFe³⁺に酸化して酸素を運べなくする。乳児で起こりやすい
  • 悪さをしているのは亜硝酸イオン。食品衛生のN-ニトロソ化合物と同じ構図
  • タンパク質 → アンモニア態窒素 → 亜硝酸態窒素 → 硝酸態窒素。下流ほど古い汚染
  • アンモニア態窒素は新しい汚染の指標。消毒で消えるはずのものが残っている=消毒後の汚染。測定はインドフェノール法
  • 硝酸態窒素・亜硝酸態窒素の測定はイオンクロマトグラフ法または吸光光度法

次は残留塩素・塩化物イオン・硬度の測定法|DPD法・モール法・EBT法を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

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