
通常の浄水処理(沈殿→ろ過→消毒)でも水道水は作れますが、それだけでは取りきれない物質があります。カビ臭のもと、発がん性のある消毒副生成物、塩素が効かない原虫——こうした相手に対して追加で行うのが高度処理です。
この単元は、「どの物質を、どの処理で落とすか」の対応関係がそのまま出題されます。物質と処理法をペアで持っておくのが最短ルートです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
最重要の前提:高度処理をしても塩素処理は必須
先に、引っ掛け対策をひとつ。
高度処理を行う場合でも、塩素処理は必ず行わなければなりません。
「高度処理をしたので塩素処理は行わなかった」という選択肢が誤りとして出てきます。高度処理はあくまで追加であって、塩素消毒の代わりにはなりません。ここは確実に押さえてください。
高度処理の3つの方法
前塩素処理
沈殿池で藻ができにくくなる、金属イオンを酸化して沈殿しやすくする、といった目的で、処理の前段階で塩素を入れておく方法です。
活性炭処理
吸着で除去する方法で、落とせる相手が幅広いのが特徴です。
- アミン類(カルキ臭のもと。NCl₃のようなクロラミンがカルキ臭になることが多い)
- 細菌
- フミン質
フミン質というのは、枯れ葉などが分解されたあとに残る、微生物がこれ以上分解できないカスのことです。このフミン質が塩素処理されるとトリハロメタンができてしまうため、先に活性炭で取っておこうという発想です。
着水井に粉末活性炭を入れる形で使いますが、微細な活性炭が水道に流出してしまうのが難点として挙げられます。
オゾン処理
オゾンは塩素より酸化力が強いのが最大の特徴です。
- ウイルス・微生物の殺菌
- 有機物の分解
- カビ臭物質の除去(ジェオスミン、2-メチルイソボルネオールなど)
カビ臭物質は塩素では除去できないので、ここはオゾンの独壇場です。「カビ臭 → オゾン処理」は必ずセットで覚えてください。
ただし、オゾンでカビ臭物質などを酸化分解したあとにできる分解生成物に発がん性が確認された事例があったため、オゾン処理のあとは基本的に活性炭処理を行って仕上げるという流れになっています。
水道水の問題物質を一覧で整理する
ここが本題です。問題物質は、「どこから生まれたか」で3グループに分けると整理できます。
グループ1:塩素処理で生成するもの
| 物質 | 特徴 | 対処 |
|---|---|---|
| クロロフェノール | フェノール類の塩素処理で生成する異臭物質 | — |
| トリハロメタン | フミン質の塩素処理で生成。発がん物質 | 活性炭処理 |
消毒のために入れた塩素が、水の中の有機物と反応してしまうことで生まれるグループです。「塩素は必要だが、副作用もある」という構図を押さえておくと、後の水質基準の「消毒副生成物」の項目ともつながります。
グループ2:富栄養化で生成するもの
| 物質 | 産生するもの | 特徴 | 対処 |
|---|---|---|---|
| ジェオスミン | 藍藻類など | カビ臭物質(雨の降り始めの匂い) | オゾン処理 |
| 2-メチルイソボルネオール | 藍藻類など | カビ臭物質 | オゾン処理 |
| ミクロシスチン | 藍藻類(アオコ) | 肝毒性 | 塩素処理で除去できる |
同じ藍藻類が作る物質でも、カビ臭物質はオゾン、ミクロシスチンは塩素と対処が分かれるのがポイントです。ここは入れ替えて出題しやすいところなので、ペアで覚えてください。
雨が降り始めたときの独特の匂いの正体がジェオスミンだと知っておくと、名前が記憶に残りやすいと思います。
グループ3:塩素耐性原虫
| 物質 | 特徴 | 対処 |
|---|---|---|
| クリプトスポリジウム | オーシストを作るため塩素が効かない | 煮沸で死滅 |
原虫であるクリプトスポリジウムは、オーシストという殻に包まれた形をとるため塩素消毒に耐えます。対処は煮沸です。「塩素耐性 → 煮沸」で覚えてください。
まとめ
- 高度処理をしても塩素処理は必須。「高度処理したので塩素処理はしなかった」は誤り
- 前塩素処理:藻の抑制、金属イオンの酸化・沈殿
- 活性炭処理:アミン類(カルキ臭)・細菌・フミン質を吸着。微細な活性炭の流出が問題
- オゾン処理:塩素より酸化力が強く、カビ臭物質を除去できる。分解生成物の発がん性が問題になったため、あとに活性炭処理を行う
- クロロフェノールはフェノール類の塩素処理による異臭物質、トリハロメタンはフミン質の塩素処理による発がん物質で活性炭処理
- 富栄養化由来では、カビ臭物質(ジェオスミン・2-メチルイソボルネオール)はオゾン処理、ミクロシスチン(肝毒性)は塩素処理
- クリプトスポリジウムは塩素耐性原虫で、煮沸で死滅させる
次は水道水の水質基準と微生物試験|一般細菌100・大腸菌不検出を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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