
水環境の最終回は富栄養化です。ここまでの記事に何度も顔を出してきたテーマでもあります。下水の三次処理が窒素とリンを除去するのは富栄養化を防ぐためでしたし、浄水の高度処理でカビ臭物質やミクロシスチンが問題になったのも、もとをたどれば富栄養化が原因でした。
つまりこの記事は、水環境13記事の回収にあたります。バラバラに覚えてきた物質名が、ここで1本につながります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
富栄養化とは何か
富栄養化とは、生活雑排水などから窒素(N)やリン(P)が流入して、植物プランクトンが爆発的に増えてしまう状態のことです。
名前のとおり「栄養が富む」のですが、栄養が増えて喜ぶのはプランクトンだけで、水環境にとっては困った事態になります。
関連する規制は2つあります。
1. 環境基準
水質汚濁に係る環境基準の「生活環境の保全に関する環境基準」に、全窒素・全リンの項目があります。ただし対象は湖沼と海域だけでした。閉鎖性水域は栄養が溜まりやすいのに対し、河川は流れているので溜まりにくい、というのが理由です。
2. 総量規制
さらに、とくに問題になりやすい海域では総量規制が実施されています。
- 対象物質:COD、窒素(N)、リン(P)
- 対象水域:東京湾、伊勢湾、瀬戸内海
この3つの湾・海はいずれも閉鎖性の強い海域です。「CODとNとPを、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海で」とセットで覚えてください。地名が3つ出てくる珍しい項目なので、そのぶん問いやすい部分でもあります。
水の華:閉鎖性水域でアオコが異常増殖
富栄養化の結果として起こる現象が2つあります。まずは水の華です。
水の華 = 閉鎖性水域でのアオコ(藍藻類)の異常増殖
夏場に池や湖の表面が緑色になっているのを見たことがあると思います。あれがアオコです。
起こることは2つ。
- プランクトンの死骸による悪臭
- 溶存酸素(DO)の減少
そして、このアオコが産生する物質が国試の狙いどころです。
アオコが産生する物質
| 物質 | 作用・特徴 | 水道での対処 |
|---|---|---|
| ジェオスミン | カビ臭。藍藻が産生。雨が降り始めるときの匂い | オゾン処理 |
| 2-メチルイソボルネオール | カビ臭。藍藻類が産生 | オゾン処理 |
| ミクロシスチン | 肝毒性、発がんプロモーター。アオコの二次代謝物 | 塩素処理 |
高度処理の記事で出てきた物質が、そのまま再登場しました。同じアオコから出てくるのに、カビ臭物質はオゾン処理、ミクロシスチンは塩素処理と対処が分かれるのが最大のポイントです。
覚え方としては、「カビ臭は塩素では無理だからオゾン」と押さえておけば、残りのミクロシスチンは自動的に塩素側に入ります。
ミクロシスチンの作用は肝毒性と発がんプロモーターの2つ。発がんの単元ともつながるので、ここも覚えておきたいところです。
赤潮:海で植物プランクトンが異常増殖
もうひとつが赤潮です。
赤潮 = 海で植物プランクトンが異常増殖し、海面が赤色になった状態
水の華との違いは、場所(閉鎖性水域の湖沼中心か、海か)と見た目の色(緑か、赤か)です。
赤潮で起こる被害は、大量の魚が死ぬことです。理由は2つあって、両方書けるようにしておきましょう。
- 海水の酸素が減る(プランクトンの増殖と死骸の分解で消費される)
- 植物プランクトンが魚のエラに詰まる
酸素不足だけでなく、物理的にエラを塞ぐという側面もある、というのが見落としやすいところです。
水の華と赤潮を並べて確認する
| 水の華 | 赤潮 | |
|---|---|---|
| 場所 | 閉鎖性水域(湖沼など) | 海 |
| 原因生物 | アオコ(藍藻類) | 植物プランクトン |
| 見た目 | 緑色 | 海面が赤色に |
| 主な問題 | 死骸の悪臭、溶存酸素の減少、毒素とカビ臭物質の産生 | 酸素減少+エラ詰まりで魚が大量死 |
まとめ
- 富栄養化は、生活雑排水などの窒素・リンの流入で植物プランクトンが爆増する状態
- 環境基準では全窒素・全リンが湖沼・海域のみに設定されている
- 総量規制はCOD・N・Pについて、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海で実施
- 水の華は閉鎖性水域でのアオコ(藍藻類)の異常増殖。死骸の悪臭と溶存酸素の減少を起こす
- アオコが産生するのはジェオスミン・2-メチルイソボルネオール(カビ臭→オゾン処理)とミクロシスチン(肝毒性・発がんプロモーター→塩素処理)
- 赤潮は海で植物プランクトンが異常増殖して海面が赤くなる現象。酸素減少とエラ詰まりで魚が大量死する
これで水環境は終わりです。次は同じ「生活環境と健康」の中の大気環境に進みます。
次は大気汚染の環境基準と法規制|K値規制・自動車NOx PM法と一次/二次汚染物質を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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