放射線

放射線の分類|電離放射線と非電離放射線、波長・エネルギー・透過性の関係【薬剤師国家試験】

放射線のマインドマップ
放射線のマインドマップ

「放射線」と聞いて思い浮かぶのは、原発や原爆、レントゲンあたりだと思います。でも衛生でいう放射線は、それよりずっと広い。

紫外線も、赤外線も、電子レンジのマイクロ波も、ラジオの電波も、全部「放射線」の仲間です。

この記事は、その広い「放射線」をどう切り分けるかという1点だけを扱います。地味に見えますが、ここを先に置いておくと、このあとに出てくる話が全部この1枚の図の上に乗ります。紫外線の健康影響も、α線・β線・γ線の透過力も、遮蔽の話も、全部です。

そして、「非電離放射線」という言葉そのものが、第108回・第109回・第110回と3年連続で問題文に登場しています。分類が分かっていないと、問題文の1行目でつまずきます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

広義の放射線と、狭義の放射線

まず言葉の整理から。

  • 広義の放射線……エネルギーを持って空間を飛んでいくもの全般。粒子も電磁波も含む
  • 狭義の放射線……ふつう「放射線」と言ったときに指すもの。= 電離放射線

電離放射線の定義は、これです。

電離放射線 = 直接または間接的に、物質をイオン化(電離)する能力を持つもの

イオン化できるということは、分子から電子を叩き出せるということです。だからDNAが直接壊される。放射線が生体に障害を与える理由は、この一点に尽きます。

逆に言えば、イオン化できないものは非電離放射線で、DNAを直接叩き切ることはできません(ただし別の経路で害を及ぼすことはあります。これは次の記事で)。

分類図|まず「粒子か、電磁波か」で割る

放射線の分類
放射線の分類

第1の切り口は「粒子線か、電磁波か」。

  • 粒子線……質量を持った粒が飛んでいる
    • 荷電粒子線……α線・β線など(電荷を持つ)
    • 非荷電粒子線……中性子線(電荷を持たない)
  • 電磁波……波として飛んでいる。質量はない
    • γ線・X線
    • 紫外線・可視光線・赤外線など

第2の切り口が「電離するか、しないか」。そして、ここが引っかけどころです。

電離放射線 = 粒子線(α線・β線・中性子線)+ 電磁波の一部(γ線・X線) 非電離放射線 = 電磁波の残り(紫外線・可視光線・赤外線・マイクロ波・ラジオ波・超低周波)

「粒子線 = 電離、電磁波 = 非電離」ではありません。電磁波はγ線・X線が電離側、紫外線から下が非電離側に分かれます。電磁波が2つに割れるところが、この図の肝です。

中性子線を忘れない。 電荷がないので「荷電粒子線」の仲間には入りませんが、電離放射線です。間接的に電離を起こします。分類図では「非荷電粒子線」という枠に1人で入っています。

電磁スペクトラム|4つの量が一直線に並ぶ

電磁スペクトラム
電磁スペクトラム

ここがこの記事でいちばん持ち帰ってほしい部分です。電磁波を波長の順に並べると、4つの量が全部、同じ向きに並びます。

超低周波 → ラジオ → マイクロ波 → 赤外線 → 可視光線 → 紫外線 → X線 → γ線

この並びに対して、

量 左(超低周波側) 右(γ線側)
波長 長い 短い
周波数 低い 高い
エネルギー 小さい 大きい
透過性 小さい 大きい

この4行は、1つ分かればあとは芋づるで出ます。

理屈もかんたんです。周波数は「1秒間に波がいくつあるか」。波の数が多いということは、1つ1つの波が細かい=波長が短いということ。そして波が細かいほどエネルギーが大きい。

そして電離するかどうかの境目は、紫外線とX線の間にあります。エネルギーが大きいほうが電離側——つまり右側です。この一本の線が、さっきの分類図の「電磁波が2つに割れる」正体です。

この考え方は、α線・β線・γ線にもそのまま使えます。 透過性は γ線 > β線 > α線 で、紙で止まるα線、アクリル板で止まるβ線、コンクリートや鉛が要るγ線。各論は物理の放射線の基礎原理と核種でやっています。

赤外線と紫外線の位置を絶対に逆にしない

可視光線をまん中に置いて、その両隣を確定させてください。

赤外線は可視光線より波長が長い(赤の「外」= 赤より外側、エネルギーが小さいほう) 紫外線は可視光線より波長が短い(紫の「外」= 紫より外側、エネルギーが大きいほう)

名前がそのまま位置を説明しています。虹の並びが「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」で、赤が長波長端、紫が短波長端。その外側にあるから赤外線・紫外線です。

ここを逆にした誤り選択肢は、衛生だけでなく物理でも出ます。

  • 第101回「赤外線は紫外線よりも短波長である」→ 誤(赤外線のほうが長波長)
  • 第111回「赤外線の波長領域は、紫外線と可視光線の間にある」→ 誤(可視光線をはさんで紫外線の反対側)

電離放射線の各論は、物理で先にやるほうが速い

ここから先、α線は陽子2個と中性子2個のヘリウム原子核で……という話に入っていくのですが、講師自身が「ここは物理の放射線の分野とかなり重なるから、物理で基本をやってから衛生に戻ってくるといい」と言っています。

私もそう思います。衛生側で断片的に覚えるより、物理側で壊変の仕組みごと理解したほうが、結局は速い。衛生で問われることも、物理で理解した内容の使い回しで足ります。

物理側の記事はこの4本です。

記事 何が書いてあるか
放射線の基礎原理と核種 α壊変・β壊変・軌道電子捕獲・γ転移。原子番号と質量数がどう動くか。α線・β線・γ線の性質と遮蔽
放射能の時間変化と測定 半減期・放射平衡・有効半減期・半価層。ベクレル・グレイ・シーベルトの違い
被曝と生体影響 確定的影響と確率的影響。組織の感受性、核種の集積臓器、酸素効果、LET
放射化学と放射性医薬品まとめ 上記のハブ記事。どこから読むかの地図

衛生でよく問われる「放射線感受性が最も高い組織はどれか」(第100回・第109回)も、「実効線量の単位は」(第99回)も、全部この中に入っています。衛生側でもう一度覚え直す必要はありません。

衛生に残しておきたいのは、この記事の分類と、次の記事の紫外線・赤外線です。この2つは物理にない、衛生固有の範囲なので、ここはしっかりやります。

国試ではこう問われる

分類そのものが単独で問われることは多くありませんが、「非電離放射線」という言葉が問題文の条件として使われます。つまり、分類が分かっていないと選択肢を絞る土俵に上がれません。

出題回 問われ方
第108回 問240 「下図は、波長に基づく非電離放射線の分類を示している。海水浴でこの男性の肌に生じた症状の原因となる主な非電離放射線はどれか」——100nm〜1mmの帯に区切りを入れた図から選ばせる
第109回 問24 「地上部での光化学オキシダントの生成に関与する主な非電離放射線はどれか」——選択肢は遠赤外線/近赤外線/可視光線/UV-A/UV-C
第110回 問22 「非電離放射線のうち、眼の水晶体タンパク質の変性によってガラス工白内障を引き起こすのはどれか」——選択肢はUVA/UVB/UVC/赤外線/可視光線

3年連続で「非電離放射線のうち〜」という形で出ています。しかも選択肢は毎回UV-A・UV-B・UV-C・可視光線・赤外線という同じ顔ぶれ。この5つの並び順と、それぞれが何を起こすかが分かっていれば、3問とも同じ知識で取れます。

そこが次の記事の内容です。

なお、第109回 問24の選択肢にUV-Cが混ざっているのは引っかけです。UV-Cはオゾン層でほぼ吸収されて地表に届かないので、「地上部での」と書かれている時点でUV-Cは切れます。この判断も次の記事でやります。

まとめ

  • 広義の放射線には、紫外線・赤外線・マイクロ波・ラジオ波まで含まれる。ふつう「放射線」と言ったら狭義 = 電離放射線
  • 電離放射線の定義は「直接または間接的にイオン化する能力を持つもの」。イオン化できるからDNAが壊れる
  • 第1の切り口は「粒子線か電磁波か」。粒子線は荷電(α線・β線)と非荷電(中性子線)
  • 第2の切り口は「電離するか」。電磁波はここで2つに割れる。γ線・X線は電離、紫外線から下は非電離
  • 「粒子線=電離、電磁波=非電離」ではない。中性子線も電離放射線
  • 電磁スペクトラムでは、波長が短い→周波数が高い→エネルギーが大きい→透過性が大きい、が全部同じ向き
  • 可視光線をまん中に、赤外線は長波長側、紫外線は短波長側。「赤の外・紫の外」で位置が言える
  • 電離放射線の各論(壊変・単位・生体影響)は物理側が本体。衛生固有は分類と紫外線・赤外線
  • 「非電離放射線のうち〜」は第108・109・110回と3年連続。選択肢の顔ぶれは毎回ほぼ同じ

次は紫外線UV-A・UV-B・UV-Cの違いと赤外線を読んでみてください。この記事で作った「波長の一直線」の上に、健康影響を乗せていきます。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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