母子保健

新生児マススクリーニングとは|対象疾患・タンデムマス法・公費負担【薬剤師国家試験】

母子保健のマインドマップ
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生まれて数日の赤ちゃんの、かかとから血を採る検査です。目的はただ一つ、「早く見つければ手が打てる病気」を、症状が出る前に拾い上げること。

ここで大事なのは、治せない病気は対象にならないということです。見つけても何もできないなら、検査する意味がありません。「早期発見 → 早期対処で結果が変わる」という条件を満たす病気だけが選ばれています。だからこの検査は、一次・二次・三次予防でいう二次予防に分類されます。

国試での狙われ方もはっきりしています。①二次予防であること ②義務ではなく保護者の希望であること ③タンデムマス法で見つかる病気と見つからない病気の線引き ④一番多いのはクレチン症。この4つです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

何のための検査か

先天性代謝異常のうち、新生児のときに見つけることで有効な対処が可能なものを見つけて対処する。 これが目的です。

やり方はシンプルです。

  • 生後4〜7日の新生児の足の裏(かかと)から血液を採取し、検査する
  • 自覚症状が出る前に拾い上げるので、二次予防の一つ

「代謝異常なのに二次予防?」と引っかかる人がいますが、予防の段階は「病気の側」ではなく「介入のタイミング」で決まります。発症前に予防接種や生活改善で防ぐのが一次予防、発症しているが症状が出ていない段階で見つけるのが二次予防、重症化・再発を防ぐのが三次予防。マススクリーニングは見つける検査なので二次予防です。

費用と、義務かどうか

ここは選択肢でそのまま問われます。

内容
検査 保護者の希望で実施。義務ではない
費用 公費負担(自己負担なし)
治療 見つかった疾患の治療も公費で成人まで補助

「公費でやってくれる」ことと「義務である」ことは別です。全員が受けるのが望ましいけれど、強制ではない。義務ではないが公費負担——この組合せを覚えてください。

そして、見つかったあとの治療費まで成人まで補助されるという点も忘れずに。検査だけ無料で治療は自費、では制度の意味がありません。

タンデムマス法で何が変わったか

以前の検査法では6疾患程度しか見つけられませんでした。そこにタンデムマス法(タンデム質量分析法)が導入され、一度の検査で20種類以上の疾患をスクリーニングできるようになりました。日本では平成25(2013)年から全国で本格導入され、現在の公費対象は20疾患です。

ここからが本題です。タンデムマス法は万能ではありません。

疾患 検査法
タンデムマス法で見つかる アミノ酸代謝異常(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症など)
有機酸代謝異常(プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症など)
脂肪酸代謝異常(MCAD欠損症など)
アミノ酸・アシルカルニチンの測定
タンデムマス法では無理 内分泌系:クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)、先天性副腎過形成症
糖代謝:ガラクトース血症
従来法(ホルモン測定・酵素活性測定など)

線引きは覚えやすいです。タンデムマスが測っているのは「アミノ酸」と「アシルカルニチン」。だから、ホルモンの異常(内分泌系)と、糖の代謝異常(ガラクトース血症)は測れません。

内分泌2つ(クレチン症・先天性副腎過形成症)+ガラクトース血症。この3つだけが従来法、と覚えてしまうのが早いです。

なお、現在は国の実証事業として、SCID(重症複合免疫不全症)とSMA(脊髄性筋萎縮症)の検査も公費で行われています(いわゆる拡大新生児スクリーニング)。実施状況は自治体によって異なります。

よく出る疾患2つ

クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)

新生児マススクリーニングで見つかる確率が最も高い疾患です。約3,000人に1人。

甲状腺機能低下症なので、治療は甲状腺ホルモンの補充です。放置すれば知的障害・成長障害につながりますが、早期にホルモンを補充すれば正常に発育します。「早く見つければ結果が変わる」の典型例で、だからこそこの検査の主役になっています。

フェニルケトン尿症

フェニルアラニンの代謝経路と酵素欠損
フェニルアラニンの代謝経路と酵素欠損

フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(フェニルアラニン水酸化酵素)の遺伝子欠損で起こります。

通常、フェニルアラニンは水酸化(OH化)されてチロシンになり、そこからドパ → ドパミン → ノルアドレナリン → アドレナリンへと進みます。この入口の酵素が欠けると、フェニルアラニンが蓄積し、フェニルピルビン酸などに変換されて尿中に出る。これがフェニルケトン尿症です。

治療はフェニルアラニン制限乳(低フェニルアラニンミルク)による食事療法。そして国試で繰り返し問われるのが次の一点です。

フェニルケトン尿症の人は、人工甘味料アスパルテームを避ける。

理由は構造にあります。アスパルテームは、アスパラギン酸とフェニルアラニンがつながったジペプチドのメチルエステルです。体内で分解されるとフェニルアラニンが遊離する。だから、フェニルアラニンを代謝できない人には負荷になります。

実際、アスパルテームを含む食品には「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」の表示が義務づけられています。食品衛生の単元とつながる論点なので、両方向から覚えておくと得です。

同じ図の下半分にあるアルカプトン尿症(ホモゲンチジン酸オキシゲナーゼの欠損)は、生物の代謝で扱う内容で、衛生のこの単元では出題されていません。図を見て混ざらないように。

なお、メープルシロップ尿症は分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)の代謝異常で、治療は分岐鎖アミノ酸制限ミルクです。「どの疾患に、どの制限ミルクか」で組み合わせが問われます。

国試ではこう問われる

回 問われ方 ポイント
第111回・問17 2019〜2023年の5年間で陽性者発見率が最も高い対象疾患 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)。「一番多いのはクレチン症」がそのまま答え
第106回・問19 対象疾患のうち年間の発見数が最も多いのはどれか 同じ論点。必須問題で2回出ている
第110回・問126 タンデムマス法によるアシルカルニチンの測定で診断されるのはどれか(2つ) MCAD欠損症とプロピオン酸血症。ガラクトース血症・先天性甲状腺機能低下症は対象外
第109回・問126 新生児マススクリーニングとその対象疾患(2つ) 正しいのはメープルシロップ尿症=分岐鎖アミノ酸制限ミルクとクレチン症=ホルモン補充。「対象は後天性代謝異常」「全疾患にタンデムマス法」はいずれも誤り
第102回・問17ほか アスパルテームとフェニルケトン尿症 甘味料の単元からも同じ論点が出る

第110回と第109回は、どちらも「タンデムマス法で何が分かるか」を突いています。アシルカルニチンという言葉が出たら脂肪酸・有機酸代謝異常、と反射できるようにしておくと確実です。

まとめ

  • 目的は先天性代謝異常のうち、新生児期に見つければ有効な対処ができるものを拾うこと
  • 生後4〜7日、足の裏から採血。自覚症状が出る前に見つけるので二次予防
  • 義務ではなく保護者の希望で実施。ただし検査も治療(成人まで)も公費負担
  • タンデムマス法で一度に20種類以上をスクリーニング。現在の公費対象は20疾患
  • タンデムマスで測れないのは、内分泌系(クレチン症・先天性副腎過形成症)とガラクトース血症
  • 最も発見数が多いのはクレチン症(約1/3,000)。治療は甲状腺ホルモンの補充
  • フェニルケトン尿症はフェニルアラニンヒドロキシラーゼの欠損。アスパルテームを避ける(分解でフェニルアラニンが出るため)

次は母子感染と性行為感染症|3経路・母子免疫・全数把握と定点把握を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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