
典型七公害のうち、騒音・振動・悪臭をまとめて扱います。
大気や水に比べると影が薄い単元ですが、必須問題では意外と顔を出します。しかも出るポイントが限られていて、騒音の環境基準4種類、暗騒音、臭気指数、そして悪臭防止法は誰を守る法律か。この4つでほぼ足ります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
騒音:環境基準がある4種類
騒音は、典型七公害のなかで唯一「お」がつく仲間なのに、汚染物質を出すわけではない変わり種です。それでも環境基準はあります。
環境基準が定められているのは次の4種類です。
- ① 道路に面する地域以外の騒音
- ② 道路に面する地域の騒音
- ③ 航空機騒音
- ④ 新幹線鉄道騒音
「一般の地域/道路沿い/飛行機/新幹線」という4分類です。
特定騒音と暗騒音
騒音レベルを測るときには、2種類の音を区別します。
- 特定騒音 ― 測定したい対象の音。たとえば航空機の「キーン」という音
- 暗騒音 ― 測定対象音がないときの、その場所のバックグラウンドの騒音
そもそもその場所に、どれくらいの生活音が常にあるのか。それを知らないと、飛行機の音がどれだけ上乗せされているのか判断できません。暗騒音は「差し引くための基礎値」だと考えると腑に落ちます。
用語としては「暗騒音」を問われるのがほとんどです。「測定対象音がないときの背景騒音」という定義を押さえてください。
対策法:騒音規制法
環境基準を達成するための下位法が騒音規制法です。あらかじめ許容限度を定めておく、という考え方をとります。
苦情件数は騒音が最多
第109回の必須問題で、典型七公害の種類別公害苦情件数のグラフが出題され、最多のものを選ばせました。答えは騒音です。
「環境基準がないのは悪臭」「苦情がいちばん多いのは騒音」。この2つは別の論点なので、セットで覚えておくと混ざりません。
振動と地盤沈下
どちらも環境基準はありませんが、規制する法律はあります。
- 振動 → 振動規制法
- 地盤沈下 → 工業用水法など
地盤沈下は、地下水の汲み上げすぎが主な原因なので、工業用水法で地下水採取を規制する、という対応になります。「地盤沈下なのに工業用水法?」と一瞬戸惑いますが、原因のほうを止める法律だと考えれば自然です。
悪臭:守る相手は「周辺住民」
悪臭防止法の目的
悪臭から、周辺住民の生活環境を守ること。
ここが最大のポイントです。工場内の悪臭は対象外です。
講義でも強調されていますが、理屈としては「工場の中の臭いは、その工場が自分たちで出しているものだから自己責任。周りの人に迷惑をかけるなというのがこの法律」ということになります。
したがって規制の測定点も敷地境界線になります。
3つの規制基準

- 敷地境界線上の規制基準 ― 工場の敷地の境目で測る。これが基本
- 気体排出口の規制基準 ― 煙突など
- 排出水の規制基準 ― 排水由来の臭い
「敷地境界線」というキーワードが、悪臭防止法の目印です。
評価法① 濃度規制(濃度評価法)
長く使われてきた方法で、特定悪臭物質ごとに濃度の上限を定めるやり方です。
特定悪臭物質の例
- アンモニア
- メチルメルカプタン(腐った玉ねぎのような臭いの無色気体)
- 硫化水素
- 酢酸エチル など
全部は覚えなくてかまいません。アンモニア・メチルメルカプタン・硫化水素あたりが出てきたら特定悪臭物質、という程度で十分です。
濃度規制の弱点は2つあります。
- 規制対象に指定されていない物質の悪臭には対応できない
- 低濃度・多成分の複合臭には対応できない ― 一つひとつは基準以下でも、混ざると強烈に臭う場合がある
現実の悪臭は、たいてい複数の物質が混ざった複合臭です。そこで導入されたのが次の臭気指数です。
評価法② 臭気指数
人間の嗅覚で感じ取れなくなったときの希釈倍率をもとに指標化する方法です。
手順
- 臭気判定士が、三点比較式臭袋法で臭気検査を行う
- においを感じなくなるまで、試料を無臭空気で希釈していく
- においが分からなくなった時点の希釈倍率を求める
- その常用対数を10倍した値が臭気指数
対象は気体と水です。
濃度規制が「物質を測る」のに対し、臭気指数は「人が臭うかどうかを測る」。物質が特定できなくても、複合臭でも評価できるのが強みです。「人間の嗅覚」「希釈倍率」「臭気判定士」の3語が出てきたら臭気指数、と結びつけてください。
国試ではこう問われる
- 環境基準が設定されていない公害はどれか → 悪臭(第102回・必須)
- 公害苦情件数が最も多いのはどれか → 騒音(第109回・必須)
- 暗騒音の定義
- 臭気指数の考え方(希釈倍率・臭気判定士)
- 悪臭防止法は敷地境界線での規制であり、工場内は対象外
騒音・振動・悪臭は、出題数そのものは多くありません。ただし必須問題で1問まるごと出ることがあり、その場合は知っているかどうかだけで決まります。コストパフォーマンスは高い単元です。
まとめ
- 騒音の環境基準は4種類(道路に面する地域以外/道路に面する地域/航空機/新幹線鉄道)
- 暗騒音=測定対象音がないときのバックグラウンドの騒音。特定騒音と対で覚える
- 騒音の対策法は騒音規制法。あらかじめ許容限度を定める
- 振動→振動規制法、地盤沈下→工業用水法。どちらも環境基準はない
- 悪臭防止法の目的は、周辺住民の生活環境を守ること。工場内の悪臭は対象外で、敷地境界線が基本の測定点
- 濃度規制は特定悪臭物質ごとの濃度規制。規制外の物質と低濃度・多成分の複合臭に対応できない
- 臭気指数は、臭気判定士が三点比較式臭袋法で求めた「においを感じなくなる希釈倍率」の常用対数×10。対象は気体と水
- 苦情件数の最多は騒音、環境基準がないのは悪臭
次はダイオキシン類|3物質の構造・発生源とTDI・TEF・TEQの計算を読んでみてください。生活環境の単元は、ここが最後の山になります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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