環境保全と法規制

四大公害病と典型七公害|環境基準があるのはどれか【薬剤師国家試験】

環境保全と法規制のマインドマップ
環境保全と法規制のマインドマップ

四大公害病は小学校・中学校でも習う内容です。ただ国試で問われるのは「名前を知っているか」ではなく、原因物質・発生地・摂取経路・症状の4点セットが正しく紐づいているかです。

そしてもう一つ、典型七公害のうち環境基準があるのはどれかという論点。これは覚え方が非常に明快なので、この記事でいちばん持ち帰ってほしいところです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

四大公害病:4点セットで覚える

四大公害病の発生地
四大公害病の発生地
公害病 発生地 原因物質 摂取経路 症状
水俣病 熊本・水俣湾 メチル水銀 魚介類 ハンター・ラッセル症候群
新潟水俣病(第二水俣病) 新潟・阿賀野川流域 メチル水銀 魚介類 同上
イタイイタイ病 富山・神通川流域 カドミウム 米・水 骨軟化症・骨折
四日市ぜんそく 三重・四日市市 SOx(硫黄酸化物) 呼吸 気管支ぜんそく

水俣病・新潟水俣病

化学工場から排出されたメチル水銀が魚介類に生物濃縮され、それを食べた人に中毒が起きました。

症状はハンター・ラッセル症候群としてまとめられます。

  • 感覚障害・知覚障害
  • 運動失調
  • 言語障害
  • 聴力障害
  • 求心性視野狭窄

視覚の症状は「見えなくなる」ではなく、視野が周辺から狭くなる(求心性視野狭窄)である点に注意してください。

新潟水俣病は、原因物質も症状も熊本の水俣病と同じで、発生地が阿賀野川流域という点だけが違います。

イタイイタイ病

鉱山から流出したカドミウムが神通川流域の水田に蓄積し、そこで育った米と水を通じて摂取されました。

病態の流れを押さえてください。

カドミウム → 腎臓の近位尿細管で再吸収が阻害される → カルシウムが失われる → 骨軟化症 → わずかな動作で骨折

「痛い、痛い」と訴えることが病名の由来です。カドミウム=腎近位尿細管=骨軟化症という三点セットで出題されます。

第98回では、神通川流域のカドミウム汚染地図と、50歳以上女性のイタイイタイ病有病率の地図を見比べる疫学問題が出ています。「患者発生地域と汚染地域が一致するため、カドミウムを原因とする仮説が立つ」という記述が正しい肢でした。四大公害病が疫学の題材として出るパターンです。

四日市ぜんそく

石油化学コンビナートの排煙に含まれるSOx(硫黄酸化物)を吸い込んだことで、気管支ぜんそくが多発しました。ほかの3つが経口摂取なのに対し、これだけ呼吸による曝露です。

第101回では、四日市の疫学調査を題材に、二酸化硫黄の週平均濃度とぜんそく発作回数の関係を読み取らせる問題が出ました。同じ問題のなかで雨水pHの経年変化グラフも出ており、酸性雨ともつながっています。

典型七公害:「お」がつくものに環境基準がある

典型七公害と環境基準の有無
典型七公害と環境基準の有無

公害の定義も、典型七公害の中身も、根拠法は環境基本法です。

公害とは、人為的な原因で生じる広範囲の汚染により、健康や生活環境に被害が生じることと定義されています。

典型七公害は次の7つです。

大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭

このうち、環境基本法で環境基準が定められているのは4つだけです。

環境基準あり 環境基準なし
大気汚染 / 水質汚濁 / 土壌汚染 / 騒音 振動 / 地盤沈下 / 悪臭

覚え方は「お」がつくやつら。

大気汚染(おせん)、水質汚濁(おだく)、土壌汚染(おせん)、騒音(そうおん)。この4つには環境基準があります。振動・地盤沈下・悪臭にはありません。

第102回・問25(必須)では、環境基本法の公害のうち環境基準が設定されていないものが問われました。

答えは悪臭。この語呂を知っていれば数秒で終わります。

苦情件数がいちばん多いのは騒音

もう一つ、統計の切り口で問われることがあります。

第109回・問25(必須)では、典型七公害の種類別公害苦情件数の推移グラフが示され、どれが最多かを問われました。答えは騒音です。

環境基準の有無(悪臭にはない)と、苦情件数の多さ(騒音が最多)。この2つは混同しないよう、別々に覚えてください。

国試ではこう問われる

  • 原因物質と発生地の組合せ(メチル水銀―水俣湾、カドミウム―神通川、SOx―四日市)
  • イタイイタイ病の病態(腎近位尿細管の再吸収阻害 → Ca低下 → 骨軟化症)
  • ハンター・ラッセル症候群の症状、とくに求心性視野狭窄
  • 典型七公害のうち環境基準がないもの(振動・地盤沈下・悪臭)
  • 疫学の題材として、汚染地図や濃度‑反応のグラフとセットで出る

まとめ

  • 水俣病・新潟水俣病=メチル水銀、魚介類経由、ハンター・ラッセル症候群(求心性視野狭窄を含む)
  • イタイイタイ病=カドミウム、米・水経由、腎近位尿細管の再吸収阻害 → Ca低下 → 骨軟化症 → 骨折
  • 四日市ぜんそく=SOx、呼吸による曝露。石油化学コンビナートの排煙が原因
  • 典型七公害の根拠法は環境基本法。大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭の7つ
  • 環境基準があるのは「お」がつく4つ(大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音)。振動・地盤沈下・悪臭にはない
  • 苦情件数の最多は騒音。環境基準の話とは別論点

次は環境基本法と環境基準|環境基準は規制基準ではないを読んでみてください。この「環境基準」が何者なのかを、正面から扱います。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

-環境保全と法規制

© 2026 マインドマップ薬学 Powered by AFFINGER5