
温室効果ガスといえば二酸化炭素、というイメージがあると思います。ところがCO₂は、1分子あたりの温室効果でいえば最弱です。
この「強さの順番」と「寄与度の順番」がまったく違う、という一点が、この単元の出題の中心です。実際、そこだけを聞く必須問題が出ています。ここを分けて理解すれば、あとは条約の流れを押さえるだけです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
温室効果のメカニズム

太陽光が地表を暖め、地表は赤外線として熱を宇宙へ放出します。温室効果ガスはこの赤外線を吸収して、宇宙への熱の放出を妨げます。
適度な温室効果があるから地球は生物が住める温度に保たれているわけで、温室効果そのものが悪いわけではありません。濃度が上がりすぎて、熱が逃げにくくなっていることが問題です。
「単位量あたりの強さ」と「寄与度」は別物

ここがこの記事の核心です。2つの順番を、はっきり分けてください。
① 地球温暖化係数(単位量あたりの温暖化効果)
SF₆ > フロン(HFC・PFC) > N₂O > CH₄ > CO₂
六フッ化硫黄 SF₆ が最も強く、CO₂が最も弱い。
② 地球温暖化への寄与度(実際にどれだけ温暖化に効いているか)
CO₂ > CH₄ > フロン > N₂O
今度はCO₂が最大になります。
なぜ逆転するのか。 寄与度は、1分子あたりの強さ × 排出量で決まるからです。CO₂は1分子の力こそ弱いものの、ものを燃やせば必ず出るので排出量が桁違いに多い。その結果、総合的な影響では堂々の1位になります。
この一点だけを聞く問題が出ている
第104回・問21(必須)では、地球温暖化係数はいちばん小さいのに、温暖化への寄与度はいちばん大きい物質が問われました。
答えは二酸化炭素です。問いそのものが「係数と寄与度で順番が逆になる物質」を聞いているので、2つの順番を分けて理解していれば即答できます。逆に、ごちゃ混ぜに覚えていると手が止まります。
なお、マインドマップにはこの順番の語呂(「フンコ」)が添えてありますが、記事ではあえて使っていません。順番の理屈を先に入れたほうが、この単元は崩れにくいと考えたためです。
モントリオール議定書と京都議定書の対象は、重なっている

この図が、2つの議定書の関係をいちばんよく表しています。
- モントリオール議定書の対象 = オゾン層破壊物質 … CFC、HCFC、四塩化炭素、ハロン、臭化メチルなど
- 京都議定書の対象 = 温室効果ガス … CO₂、CH₄、N₂O、HFC、PFC、SF₆
そして2つの円は重なっています。
- 臭化メチル ― オゾン層は壊すが、温室効果ガスとしては扱われない(円の外側)
- CFC・HCFC ― 両方に入る
- HFC・PFC・SF₆ ― オゾン層は壊さないが、温室効果ガス(京都議定書側だけ)
前の記事で見たとおり、HFCとPFCはオゾン層を壊さないように作られた代替フロンです。ところがその代替フロンが、今度は京都議定書の規制対象になってしまった。この皮肉な流れが、そのまま出題されます。
京都議定書からパリ協定へ
京都議定書(1997年)
温室効果ガスの排出削減目標を定めた最初の枠組みです。ただし削減義務を負ったのは先進国だけでした。
パリ協定(2015年)
京都議定書の後継です。最大の特徴は、途上国を含むすべての国が対象になったこと。
国試では「パリ協定は途上国を含め、すべての国が対象」という形で問われます。第106回では「地球温暖化 ― パリ協定」が正しい組合せとして出題されました。
逆に、「モントリオール議定書で二酸化炭素排出量の削減目標が定められている」(第110回)は誤りです。モントリオール議定書はオゾン層、京都議定書・パリ協定は温暖化。混ぜないでください。
国試ではこう問われる
- 地球温暖化係数と寄与度の順番の違い(第104回・必須で直球)
- オゾン層を壊すか/温室効果があるかの組合せ(第100回・第106回・第111回。詳しくはフロンの記事)
- 条約と対象の組合せ(第106回・第110回。詳しくは国際条約の記事)
- 第101回では、冷媒用ハロアルカンの出荷量を地球温暖化係数で二酸化炭素相当量に換算したグラフを読ませる問題が出ている
数値そのもの(SF₆の係数が何倍か等)は過去15年で問われていません。 覚えるのは順番だけで十分です。
まとめ
- 温室効果ガスは赤外線を吸収して、宇宙への熱の放出を妨げる
- 地球温暖化係数(単位量あたり)は SF₆ > フロン > N₂O > CH₄ > CO₂。CO₂が最弱
- 寄与度は CO₂ > CH₄ > フロン > N₂O。CO₂が最大
- 逆転するのは、寄与度 = 1分子あたりの強さ × 排出量だから。CO₂は排出量が桁違いに多い
- 「係数は最小だが寄与度は最大」= 二酸化炭素。この形でそのまま出題されている
- モントリオール議定書=オゾン層破壊物質、京都議定書=温室効果ガス。CFC・HCFCは両方に入る
- 京都議定書(先進国のみ)→ パリ協定(途上国を含むすべての国が対象)
次は四大公害病と典型七公害|環境基準があるのはどれかを読んでみてください。ここから「環境保全と法規制」に入り、日本国内の話に戻ります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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