
この単元は、条約名と対象の一対一対応を覚えるだけです。内容の理解を問われることはほとんどなく、出題形式もほぼ固定されています。
そのかわり、組合せを入れ替えたひっかけが毎年のように出ます。「オゾン層の破壊 ― ロンドン条約」「海洋汚染 ― 京都議定書」のように、名前だけ知っていると引っかかる形です。ここは対応表を一枚、丸ごと頭に入れてしまうのが最短です。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
まずは対応表を丸ごと
| 条約・議定書 | 対象 |
|---|---|
| ロンドン条約 | 廃棄物の海洋投棄(1996年議定書で洋上焼却も規制) |
| バーゼル条約 | 有害廃棄物の越境移動とその処分の規制 |
| ワシントン条約 | 絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引 |
| カルタヘナ議定書 | 遺伝子組換え生物(LMO)による生物多様性への悪影響の防止 |
| 水俣条約 | 水銀の人為的な排出・使用からの保護 |
| ストックホルム条約(POPs条約) | 残留性有機汚染物質の製造・使用・輸出入 |
| ウィーン条約 → モントリオール議定書 | オゾン層の保護/オゾン層破壊物質の規制 |
| 京都議定書 → パリ協定 | 温室効果ガスの排出削減 |
講義では上の5つ+モントリオール+京都議定書を扱っていますが、ストックホルム条約とウィーン条約は国試のひっかけ選択肢として頻繁に登場するので、この記事では合わせて入れておきます。
引っかかりやすいペアを分けて覚える
ロンドン条約とバーゼル条約
どちらも「廃棄物」が絡むので混ざりやすいペアです。
- ロンドン → 海へ捨てる話(海洋投棄)
- バーゼル → 国境を越える話(越境移動)
ロンドンはテムズ川の河口、つまり海のイメージ。バーゼルはスイス・ドイツ・フランスの国境が接する街です。地理と結びつけると入れ替えにくくなります。
廃棄物の単元でも同じ対比が出てきました。廃棄物の処分とリサイクルで扱った「最終処分場の問題」のところです。越境移動=バーゼル、海洋投棄=ロンドンは、そちらでも必ず問われるポイントです。
ワシントン条約とカルタヘナ議定書
どちらも「生き物」の話です。
- ワシントン → 絶滅危惧種の国際取引(いま存在する種を守る)
- カルタヘナ → 遺伝子組換え生物(人が作り出した生物を野に放たない)
第110回では「カルタヘナ議定書では、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引が規制されている」という誤り選択肢が出ています。まさにこの2つの入れ替えです。
なお、カルタヘナ議定書は生物多様性条約の下にある議定書です。遺伝子組換え食品の単元とも重なります。
ストックホルム条約(POPs条約)
残留性有機汚染物質(POPs)、つまりPCBやDDT、ダイオキシン類のような「分解されにくく、生物に蓄積し、長距離を移動する」化学物質を対象にした条約です。
国試では「ストックホルム条約はオゾン層を保護するための条約である」(第108回)、「ストックホルム条約ではCFCやHCFCの使用が規制されている」(第110回)といった誤り選択肢で登場します。ストックホルムはオゾンではなくPOPs、と一本線を引いておいてください。
第101回ではPOPs条約そのものが出題され、非意図的生成物(ダイオキシン類など)についても排出削減が定められているという点が問われています。
ウィーン条約とモントリオール議定書
オゾン層の話は2階建てです。
- ウィーン条約(1985年)= オゾン層保護のための枠組み
- モントリオール議定書(1987年)= その下で具体的な規制物質とスケジュールを決めたもの
第108回では「ウィーン条約は、廃棄物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約である」という誤り選択肢が出ました。ウィーンはオゾンです。
モントリオール議定書については、2016年のキガリ改正でHFC(ハイドロフルオロカーボン)が規制対象に加わったことが第111回で出題されています。詳しくはオゾン層破壊のメカニズムとフロンで扱います。
京都議定書とパリ協定
温暖化対策の条約は、京都議定書(1997年)からパリ協定(2015年)へという流れで押さえます。
パリ協定の最重要ポイントは、途上国を含むすべての国が対象になったことです。京都議定書では先進国だけに削減義務がありましたが、パリ協定では全参加国が削減目標を出します。ここが差し替えられて出題されます。
水俣条約
水銀に関する条約です。2013年に熊本市・水俣市で採択され、2017年に発効しました。日本が主導した比較的新しい条約で、講義でも「出る可能性が高い」と強調しています。
実際、第106回と第110回で「水銀による汚染 ― 水俣条約」が正しい組合せとして出題されています。
国試ではこう問われる
出題形式はほぼ2種類です。
① 「地球環境問題 ― 国際的な取組」の組合せとして正しいものを選ぶ(第106回) ② 各条約の説明文のうち正しいものを選ぶ(第100回・第108回・第110回)
どちらも、正しい対応を1つ知っていれば消去法で解ける作りになっています。逆に言えば、対応表があやふやだと総崩れします。
過去15年で正解肢になった実例を挙げておきます。
- 地球温暖化 ― パリ協定(第106回)
- 水銀による汚染 ― 水俣条約(第106回・第110回)
- バーゼル条約は有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関する条約(第108回)
- ワシントン条約は絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(第108回)
- ロンドン条約1996年議定書では廃棄物等の海洋投棄及び洋上焼却が規制されている(第110回)
- カルタヘナ議定書は遺伝子組換え技術により改変された生物による悪影響を防止するための措置を規定(第100回)
まとめ
- ロンドン=海洋投棄、バーゼル=有害廃棄物の越境移動。地名の地理で覚え分ける
- ワシントン=絶滅危惧種の国際取引、カルタヘナ=遺伝子組換え生物。入れ替えが頻出
- ストックホルム(POPs条約)=残留性有機汚染物質。オゾン層ではない
- ウィーン条約(枠組み)→モントリオール議定書(具体的規制)の2階建て
- 京都議定書→パリ協定。パリ協定は途上国を含むすべての国が対象
- 水俣条約=水銀。2013年採択・2017年発効の新しい条約で、出題実績も多い
次はヒートアイランド現象と酸性雨|pH5.6が基準になる理由を読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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