
「地球と環境」でヒトへの影響として挙がるのは4つ、ヒートアイランド現象・酸性雨・オゾン層破壊・地球温暖化です。このうち後半の2つは分量が多いので別記事にまわし、この記事では短いけれど確実に落とせない2つを片づけます。
とくに酸性雨は、「pH5.6以下」という数字がなぜその値なのかを説明できるかどうかで、記憶の残り方がまるで違います。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
ヒートアイランド現象
定義:都市部の気温が、周辺部よりも高くなる現象
名前のとおり、気温分布の地図を描くと都市部が「島(アイランド)」のように浮かび上がることから来ています。
原因は3つ
- 消費エネルギーの増加 ― 冷暖房・自動車・工場などから出る人工排熱
- 蒸散作用の低下 ― 緑地や土壌がアスファルトに置き換わり、水の蒸発による気化熱で冷える働きが失われる
- 風速の低下 ― ビルが立ち並ぶことで風が遮られ、熱が拡散されにくくなる
「熱が増える(消費エネルギー)」「冷える仕組みが減る(蒸散)」「逃げにくい(風速)」の3方向で覚えると抜けにくくなります。
なお、風が弱く熱が溜まるという構造は、大気汚染の単元で扱った逆転層と発想が同じです。拡散されないと濃くなる、という点で共通しています。
酸性雨:pH5.6という基準はどこから来るのか
定義:pH5.6以下の雨
まずここを押さえてください。汚れていない普通の雨でも、pHは7ではありません。
大気中には二酸化炭素 CO₂ が約0.04%含まれています。雨粒はこのCO₂を溶かし込みながら落ちてくるので、
CO₂ + H₂O → H₂CO₃(炭酸)
という反応で、わずかに酸性になります。この「何も汚染がない状態での雨のpH」が約5.6。だから5.6が基準線になっているわけです。
中性の7ではなく5.6が境目という点が、この単元でいちばん問われるところです。
酸性雨の原因物質
SOx(硫黄酸化物)とNOx(窒素酸化物)です。
化石燃料の燃焼によって大気中に放出されたSOx・NOxが、大気中で酸化・水和されて硫酸イオン・硝酸イオンになります。これが雨に溶け込むと、炭酸よりはるかに強い酸性になり、pHが5.6を下回ります。
- SOx → 硫酸(H₂SO₄)
- NOx → 硝酸(HNO₃)
第107回では「大気中の窒素酸化物は水分と反応して、酸性雨の原因となる」が正しい記述として出題されています。SOxだけでなくNOxも原因になる、という点は落とさないでください。
SOx・NOxの発生源や測定法については、一酸化炭素と硫黄酸化物(SOx)とフューエルNOxとサーマルNOxの違いで詳しく扱っています。
酸性雨の影響
- ヒトへの影響 ― 目や皮膚に刺激性の痛み
- 湖沼・土壌の酸性化 ― これにともなって重金属や栄養塩が流出する
- 植物の枯死 ― 森林被害
ここで一段深く押さえておきたいのが、「土壌が酸性化すると重金属が流出する」という部分です。土壌に固定されていた金属イオンが、酸性条件下では溶け出しやすくなります。酸性雨の害は「酸そのものが溶かす」だけでなく、そこから二次的に起こる汚染を含む、という理解です。
越境汚染という側面
酸性雨の原因物質は風に乗って国境を越えます。ある国が出したSOx・NOxが、別の国に酸性雨として降る。1970年代の北欧の湖沼被害がその典型で、国際的な取組が必要になった理由でもあります。
第101回では、四日市の大気汚染を扱った疫学問題のなかで「1961年の時点で、四日市市内では頻繁に酸性雨が認められていた」という記述が、雨水pHの経年変化グラフとともに出題されました。グラフのpHが5.6を下回っていれば酸性雨、という読み取りです。四大公害病と酸性雨がひとつの問題でつながることもある、と知っておくと役に立ちます。
国試ではこう問われる
- pH5.6以下という基準値と、その根拠がCO₂であること
- 原因物質はSOxとNOxの両方
- 影響として湖沼・土壌の酸性化 → 重金属・栄養塩の流出
- ヒートアイランドは定義と3つの原因。単独の問題になることは少なく、記述の1肢として出る
まとめ
- ヒートアイランド現象=都市部の気温が周辺部より高くなる現象。原因は消費エネルギー増加・蒸散作用低下・風速低下
- 酸性雨=pH5.6以下の雨。中性の7ではない
- 5.6の根拠は大気中のCO₂。CO₂が溶けて炭酸になるため、汚染がなくても雨は弱酸性
- 原因物質はSOxとNOx。それぞれ硫酸・硝酸になる。NOxも原因になる点が出題される
- 影響は目や皮膚への刺激、湖沼・土壌の酸性化(→重金属・栄養塩の流出)、植物の枯死
次はオゾン層破壊のメカニズムとフロン|CFC・HCFC・HFC・PFCの違いです。ここから2記事は、構造式と条約がセットで出てくる、この単元の山場になります。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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