前回は医療法の目的と医療提供の理念を見ました。目的の4つの柱のうち、2つめに挙がっていたのが医療の安全の確保です。今回はそこを具体的に見ていきます。
このパートは国試の頻出ゾーンです。とくに医薬品安全管理責任者は薬剤師国家試験らしい論点で、繰り返し出ています。似た名前のセンターが2つ出てくるところだけ気をつければ、全体としては整理しやすい範囲です。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
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マインドマップで見る「医療の安全の確保」

左側が今回扱う医療の安全の確保です。大きく国・都道府県等の責務と病院等の管理者の責務の2つに分かれています。「誰がやることなのか」を分けて覚えるのが、このパートのコツです。
まず「誰の話か」を2つに分ける
| 誰が | 何をする |
|---|---|
| 国(厚生労働大臣) | 医療事故調査・支援センターを指定する |
| 都道府県等 | 医療安全支援センターの設置に努める(努力義務) |
| 病院等の管理者 | 医療事故調査制度への対応と、院内の安全管理体制の確保 |
名前がよく似た「医療事故調査・支援センター」と「医療安全支援センター」が並ぶので、ここで一度止まって違いを確認しておきましょう。
国・都道府県等の責務
医療事故調査・支援センター(厚生労働大臣が指定)
医療事故が起きたときに、報告を受けて調査を行う全国の司令塔です。一般社団法人または一般財団法人が申請し、厚生労働大臣が指定します。国が直接作った組織ではなく、民間の法人を国が指定する形になっている、というところがポイントです。
医療安全支援センター(都道府県等が設置、努力義務)
こちらは地域の相談窓口にあたります。都道府県・保健所を設置する市・特別区が設置するよう努めなければならない、という努力義務です。業務は次の3つです。
- 患者等からの医療の苦情や相談への対応(患者側・医療側の双方に助言を行う)
- 医療の安全確保に必要な情報提供(医療者側、患者・家族、住民等に対して)
- 医療安全の研修の実施(管轄内の病院等の管理者・従業者に対して)
2つのセンターの比較
| 医療事故調査・支援センター | 医療安全支援センター | |
|---|---|---|
| 誰が | 厚生労働大臣が指定 | 都道府県等が設置(努力義務) |
| 何をする | 医療事故の報告を受けて調査 | 苦情・相談対応、情報提供、研修 |
| イメージ | 事故が起きた後の調査機関 | 日常の相談窓口 |
なお、どちらのセンターも医療提供施設ではありません。前回の記事で触れた第109回の問題では、この2つが医療提供施設の選択肢として並べられていました。名前に「医療」が入っているだけで施設だと思わないように注意してください。
医療事故調査制度の流れ
病院等の管理者には、医療事故調査を行う義務があります。実際に医療事故が起きたときの流れは次のとおりです。
- 遅滞なく、医療事故調査・支援センターに報告する
- 院内で調査を開始する
- 院内だけでは難しい場合、医療事故調査等支援団体(医師会などの学術団体)に支援を依頼できる
- 調査が終わったら、患者側へ医療事故の説明を行う
- 調査結果をセンターに報告する
報告に始まり、報告に終わる流れです。ここで押さえておきたい論点が2つあります。
報告先はPMDAではありません。 医療事故調査・支援センターです。副作用報告の話と混ざりやすいので区別してください。
調査するのは病院の管理者自身です。 事故が起きたときに、外部の第三者委員会に調査を丸投げするわけではなく、まず院内で原因を明らかにするための調査を行う義務があります。第110回でも第105回でも、この点を突いた選択肢が出ています。
病院等の管理者が行う安全管理
医療事故が起きたときの対応とは別に、平時の安全管理体制を作ることも管理者の責務です。ここは「体制」と「実際の措置」に分けると整理できます。
体制の確保
- 医療に係る安全管理のための指針の策定
- 医療安全管理委員会の設置
- 職員に対する研修の実施
第105回では、この指針の整備が「適切なもの」として問われています。
安全を確保するための措置
ここが薬剤師国家試験としての本丸です。
- 医薬品安全管理責任者の配置(頻出)
- 院内感染対策
- 医療機器の安全対策
医薬品安全管理責任者は、医薬品の安全使用のための体制を担う責任者で、医療法に基づき医療機関の管理者が配置しなければならないものです。薬剤師国家試験では繰り返し出ているので、確実に取ってください。
あわせて引っかけとして出やすいのが「医薬品の安全使用のために、患者を対象とした研修を実施しなければならない」といった選択肢です。研修の対象は従業者であって患者ではありません。
まとめ
- 医療安全は「国・都道府県等」と「病院等の管理者」に分けて考える
- 医療事故調査・支援センター=厚生労働大臣が指定(一般社団法人・一般財団法人が申請)。医療安全支援センター=都道府県等が設置する努力義務で、苦情相談・情報提供・研修を行う
- どちらのセンターも医療提供施設ではない
- 医療事故調査制度は、遅滞なくセンターへ報告 → 院内調査(支援団体に依頼可) → 患者側へ説明 → センターへ結果報告。報告先はPMDAではなく、調査は管理者自身が行う
- 平時の体制は、指針の策定・医療安全管理委員会の設置・職員研修。措置としては医薬品安全管理責任者の配置が最頻出
医療法の右半分はここまでです。次は病院・診療所の定義と開設手続き、薬剤師の人員基準に進み、「病院と診療所は何が違うのか」という、数字で答えられる論点から入っていきます。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
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