医療法

医療法の目的と医療提供の理念(薬剤師が「医療の担い手」になった改正のポイント)【薬剤師国家試験】

薬剤師法・医師法で「人」を縛る法律が終わりました。ここからは医療法、つまり「医療を提供する場」を定めた法律に入ります。

薬剤師法が「薬剤師とは何者か」を決めていたのに対して、医療法は「病院・診療所・薬局といった施設が、どういう方針で医療を提供していくか」を決めています。主語が人から施設に変わる、と思っておくと切り替えが楽です。

医療法は条文の量が多いのですが、国試で問われるところははっきりしています。この記事ではまず入口にあたる法の目的と医療提供の理念を押さえます。ここは薬剤師にとって特別に重要なパートで、「薬剤師が法律の中でどう位置づけられているか」が正面から書かれている場所です。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

マインドマップで見る「医療法」

医療法のマインドマップ(改正経緯・法の概要・目的・医療提供の理念・医療の安全の確保)
医療法のマインドマップ(改正経緯・法の概要・目的・医療提供の理念・医療の安全の確保)

右上が改正経緯、右下が法の概要(目的と医療提供の理念)、左側が医療の安全の確保です。この記事では右半分を扱い、左側の医療安全は次の記事で整理します。中央下の「病院・診療所と医療提供体制」は、さらにその後の3記事で扱います。

医療法は何をしたい法律なのか(第1条)

医療法第1条は、次の4つを定めることで、最終的に国民の健康の保持に寄与することを目的としています。

4つの柱 かみくだくと
医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項 患者が医療機関を選べるよう、情報を公開させる
医療の安全を確保するために必要な事項 医療事故が起きない・起きたときに調べる仕組みを作る
病院・診療所・助産所の開設及び管理に必要な事項 誰がどんな手続きで開設し、誰が管理するかを決める
医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の推進に必要な事項 役割分担させて、つなげる

この4つは、そのまま医療法の目次になっています。選択の支援/安全/開設と管理/連携。この4語を先に頭に入れておくと、この後どの記事を読んでいても「今は4つのうちどれの話か」が分かります。

助産所がしれっと入っているのもポイントです。「病院・診療所・助産所」はセットで覚えてください。

薬剤師にとって重要な2つの改正

医療法は何度も改正されていて、現在は第9次改正のあたりまで来ています。全部を追う必要はありませんが、薬剤師にとって決定的な改正が2つあります。

改正 変わったこと
第二次改正(平成4年) 薬剤師が「医療の担い手」として明記された
第五次改正(平成18年成立・平成19年施行) 調剤を実施する薬局が「医療提供施設」に追加された

改正の回次や年号そのものは、過去15年の国試では問われていません。問われるのは中身のほうです。

たとえば第109回では、「医療法において医療提供施設として明記されているのはどれか」という形で出題され、正解は調剤を実施する薬局でした。このとき選択肢には医薬品の店舗販売業、医療を受ける者の居宅、医療安全支援センター、医療事故調査・支援センターが並びます。どれも医療っぽい言葉ですが、医療提供施設ではありません。ここは引っかかりやすいので注意してください。

「調剤を実施する薬局」という言い回しにも意味があります。医薬品を売るだけの店舗販売業は入らず、調剤をしている薬局だからこそ医療提供施設に位置づけられた、という順番です。

医療提供の理念(第1条の2)

法の目的のすぐ次、第1条の2に医療提供の理念があります。ここに、さきほどの2つの改正の中身がそのまま書き込まれています。押さえるのは次の4点です。

① 薬剤師は「医療の担い手」である

医療は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき……

条文に薬剤師の名前が入っている、という事実そのものが問われます。

② 医療は「治療のみならず」予防とリハビリを含む

……治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。

医療=治療、ではありません。予防とリハビリを含む包括的なものという広い定義です。「治療のみならず」というフレーズごと覚えてしまうのが早いです。

③ 調剤を実施する薬局は「医療提供施設」である

医療は、……病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療提供施設、医療を受ける者の居宅等において……連携を図りつつ提供されなければならない。

ここで注意してほしいのは、居宅等は「医療提供施設」ではないということです。条文上は「医療提供施設……および医療を受ける者の居宅等において」と並列で書かれているだけで、居宅が施設に含まれるわけではありません。さきほどの第109回の選択肢は、まさにここを突いています。

④ 適切な説明と、患者の理解確保への努力

医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。

語尾が「努めなければならない」、つまり努力義務になっている点が重要です。医療の担い手に課されているのは「説明して、理解してもらえるよう努める」ところまでで、治療方針を決定する場面でのインフォームド・コンセントの確保そのものは医師の役割になります。混同しやすいので、ここは線を引いておいてください。

「医療の担い手の責務」は何と書いてあるか

もう一つ、第1条の4に医療の担い手の責務が書かれています。第102回では「医療を受ける者に対する医療の担い手の責務として、医療法に規定されているのはどれか」が問われ、正解は良質かつ適切な医療の提供でした。

このとき、福祉サービスの提供・医療技術の普及・医療計画の策定・効率的な説明といった、それっぽい選択肢が並びます。医療計画を策定するのは都道府県であって医療の担い手ではありませんし、説明に求められているのは「効率的」ではなく「適切」です。条文の言葉づかいをそのまま覚えているかどうかで差がつくタイプの問題です。

まとめ

  • 医療法の目的は、選択の支援・医療の安全・開設と管理・機能分担と連携の4つを定めて、国民の健康の保持に寄与すること
  • 薬剤師に関わる改正は2つ。第二次改正で薬剤師が「医療の担い手」に、第五次改正で調剤を実施する薬局が「医療提供施設」に
  • 医療提供の理念(第1条の2)のポイントは、①薬剤師は医療の担い手 ②医療は治療のみならず予防・リハビリを含む ③調剤を実施する薬局は医療提供施設(居宅等は施設ではない) ④適切な説明と理解確保への努力義務
  • 医療の担い手の責務は「良質かつ適切な医療を行うよう努める」こと

入口はここまでです。次は医療安全の確保のしくみ(医療事故調査制度・医薬品安全管理責任者)に進みます。目的の4つの柱のうち、2つめの「医療の安全」を具体化したパートで、国試の頻出ポイントが集中しています。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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