「法律と倫理規範」の最後のブランチは、倫理的問題です。医療が発展した結果、かえって判断が難しくなったテーマを扱います。
その中心にあるのが死です。かつては心臓が止まることが死でしたが、生命維持装置が発達したことで「どこまでが生きている状態なのか」の線引きが難しくなりました。国試では、死の定義の分類と、尊厳死・安楽死の区別がストレートに問われます。用語が似ているので、ここは表で整理してしまうのが早いです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「倫理的問題」

左下に伸びているのが「倫理的問題」の枝です。死の定義/尊厳死/安楽死の3本に分かれています。
死の定義は4種類
まず全体像を表で押さえましょう。
| 分類 | 内容 | 生命維持機能 | 臓器移植のための臓器摘出 |
|---|---|---|---|
| 心臓死 | 昔からある死の定義。死の三徴候で判定する | ― | ― |
| 大脳死 | いわゆる植物状態 | あり | 認められていない |
| 脳幹死 | 脳幹の機能が失われた状態 | なし | 認められていない |
| 全脳死 | 法律上「脳死した者の身体」とされる状態 | なし | 認められている |
心臓死と「死の三徴候」
心臓死は、次の3つ(死の三徴候)で判定されます。
- 心拍停止
- 呼吸停止
- 瞳孔散大・対光反射消失
3つめを「瞳孔散大」だけで覚えていると選択肢を落とすことがあるので、対光反射の消失までセットにしておきましょう。
大脳死・脳幹死・全脳死の区別
脳死は3種類あり、違いは生命維持機能が残っているかどうかです。
- 大脳死:いわゆる植物状態です。生命維持機能があるので、脈もあるし呼吸もあります
- 脳幹死:生命維持機能がない状態です
- 全脳死:法律上「脳死した者の身体」と定義されている状態です
臓器摘出が認められるのは「全脳死」だけ
ここが今回の最重要ポイントです。
臓器移植術のための臓器摘出が認められているのは、全脳死のみです。大脳死(植物状態)でも脳幹死でもありません。
わざわざ「脳死した者の身体」という言い方で法律上の定義が置かれているのは、臓器移植との関係があるからだ、と理解しておくと忘れにくくなります。全脳死=移植のための臓器摘出OK、と結びつけて覚えましょう。
尊厳死 — 自分の意思で、自分の望む形で最期を迎える
尊厳死とは、自分の意思で、自分の望む形で最期を迎えることです。
これを実現するために大事になるのが、次の2つです。
| 内容 | |
|---|---|
| インフォームドコンセント | 医師から延命治療についての説明を受け、患者が理解したうえで自分で決定する |
| リビングウィル | 生前に、延命治療をどうするかを表明しておくもの |
たとえば末期がんの患者さんに対して、医師が延命治療をどうするか説明し、患者さんが「延命治療は行わない」と自分で決める。この場合はインフォームドコンセントによって尊厳死が実現したことになります。
一方のリビングウィルは、判断できる状態のうちに「自分がこうなったときは延命治療をしない」と表明しておくものです。前の記事で出てきたインフォームドコンセント(知る権利+自己決定権)が、ここで具体的な場面として再登場していることにも注目してください。
安楽死 — 消極的と積極的の2種類
安楽死には2つの種類があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 消極的安楽死 | 延命治療を行わないもの |
| 積極的安楽死 | 自殺幇助、慈悲殺にあたるもの |
そして、国試で押さえるべき結論はこれです。
我が国では、安楽死とその実施を積極的には認めていない。
尊厳死と安楽死は言葉が似ていて混同しやすいところです。尊厳死は「自分の意思で自分の望む形で最期を迎える」という考え方、安楽死は上の2分類と「日本では積極的に認められていない」という位置づけ。この対比で覚えておきましょう。
まとめ
- 死の定義は心臓死・大脳死・脳幹死・全脳死の4種類
- 心臓死は死の三徴候(心拍停止・呼吸停止・瞳孔散大/対光反射消失)で判定する
- 大脳死=植物状態で生命維持機能あり、脳幹死=生命維持機能なし、全脳死=法律上「脳死した者の身体」
- 臓器移植のための臓器摘出が認められるのは全脳死のみ
- 尊厳死は自分の意思で望む形の最期を迎えること。実現にはインフォームドコンセントとリビングウィルが重要
- 安楽死は消極的(延命治療を行わない)と積極的(自殺幇助・慈悲殺)の2種類。我が国では積極的には認められていない
これで「法律と倫理規範」の4ブランチが一通り終わりました。次は法規の2つめの分野、医療を提供する側から見た法律である「薬学と社会」に進みます。まずは法令の構成(憲法・法律・政令・省令)と法的責任(刑事・民事・行政)の基本から、この記事の1本目で触れた法的責任(民事・刑事・行政)の中身も含めて見ていきましょう。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。