
分光分析法は、紫外可視吸光度測定法・蛍光光度法・原子スペクトル分析法・赤外吸収スペクトル測定法・旋光度測定法……と測定法の名前がずらりと並ぶため、最初に見たときは「暗記する装置が多すぎる」と感じる単元です。
でも、この範囲は1つの法則と4つのグループに整理できます。この記事では全体の地図を先に示したうえで、各測定法の記事にリンクしていきます。個別の単元に入る前の見取り図として、また直前期の総復習として使ってください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。分光分析法の範囲はYouTubeで無料公開しているので、読むよりも動画で一気に見たい人はそちらもどうぞ。
Contents
地図のいちばん上:ランベルト・ベールの法則
分光分析法に出てくる測定法は、装置も見ているものもバラバラですが、定量の場面では、ほぼすべてがランベルト・ベールの法則に戻ってきます。
A = k・c・l(吸光度は濃度と層長に比例する)
紫外可視でも、蛍光でも、原子吸光でも、IRでも、最後は必ずこの式が顔を出します。ここが分光分析法の共通言語なので、最初に固めておくべき場所です。
→ 分光分析法の基礎:吸光度とランベルト・ベールの法則をわかりやすく解説
透過度と吸光度の関係、なぜlogを取るのか、比吸光度とモル吸光係数の違いを扱っています。
4つのグループに整理する
| グループ | 何を見ているか | 測定法 |
|---|---|---|
| 分子の電子遷移 | 分子が光を吸収する/蛍光を放出する | 紫外可視吸光度測定法、蛍光光度法 |
| 原子の電子遷移 | 原子が光を吸収する/発光する | 原子吸光光度法、発光分析法 |
| 振動数の測定 | 分子振動(官能基の情報) | 赤外吸収スペクトル測定法、ラマンスペクトル測定法 |
| キラル分子 | 偏光の回転・吸収の差 | 旋光度測定法、旋光分散(ORD)、円二色性(CD) |
この4行が頭に入っていれば、問題文に出てきた測定法が「地図のどこの話か」を即座に判断できます。
1. 分子の電子遷移を観察する
光の吸収を見る測定法です。σ電子は200〜800 nmでは励起されず、π電子とn電子がπ*へ遷移します。光源は「四十肩」、紫外部のセルは石英のみ。深色効果・浅色効果・濃色効果・淡色効果の区別が頻出です。
励起状態から戻るときに放出される光を見る測定法です。光源は「警官あきれ」、検出部は90度、セルは四面透明の石英製。励起スペクトルと蛍光スペクトルの区別、そして環境条件4つ(温度・クエンチャー・光・濃度)が要点です。
2. 原子の電子遷移を観察する
対象が分子から原子に変わるだけで、考え方は上の2つと同じです。吸収を見るのが原子吸光光度法、発光を見るのが発光分析法。中空陰極ランプ、原子化の3方式(冷蒸気方式は水銀)、線スペクトルになる理由を押さえます。
3. 振動数を測定する
分子振動から官能基の情報を得る測定法です。ばねモデル(結合が強いほど・原子が軽いほど振動数が大きい)、波数4000〜400 cm⁻¹、特性吸収帯と指紋領域が要点になります。
4. キラル分子を調べる
偏光の回転からキラル分子の存在や立体構造を調べます。不斉炭素がなくても旋光性を示すこと、比旋光度の表し方、コットン効果の正負が狙われます。
装置の暗記ポイント早見表
直前期はここだけ見直せば形になります。
| 測定法 | 光源 | セル・特徴 |
|---|---|---|
| 紫外可視吸光度測定法 | 紫外部:重水素放電管/可視部:タングステンランプ(四十肩) | 紫外部は石英セルのみ、可視部はガラス・石英OK |
| 蛍光光度法 | アルカリハライドランプ、キセノンランプ、レーザー(警官あきれ) | 四面透明の石英製セル、検出部は90度 |
| 原子吸光光度法 | 中空陰極ランプ、放電ランプ | 原子化はフレーム/電気加熱/冷蒸気(水銀)。分光部は試料の後ろ |
| 赤外吸収スペクトル測定法 | (赤外線) | 波数4000〜400 cm⁻¹、特性吸収帯と指紋領域 |
| 旋光度測定法 | 局方ではナトリウムD線 | 偏光子と検光子の間に試料を置く |
学習の順番
分光分析法は、基礎 → 分子 → 原子 → 振動 → キラルの順に積み上がる設計になっています。マインドマップのページ順もこの並びです。
- 分光分析法の基礎(吸光度とランベルト・ベールの法則)
- 紫外可視吸光度測定法
- 蛍光光度法
- 原子スペクトル分析法
- 赤外吸収スペクトル測定法(IR)とラマンスペクトル
- 旋光度測定法・旋光分散(ORD)・円二色性(CD)
途中から読んでも理解できるように書いていますが、初めて学ぶなら1番から順に読むのがいちばん楽です。
まとめ
- 分光分析法の定量は、ほぼすべてランベルト・ベールの法則に帰着する
- 測定法は「分子の電子遷移/原子の電子遷移/振動数の測定/キラル分子」の4グループに整理できる
- 各測定法で覚えるべきは、光源・セル・検出の位置といった装置の違いと、その理由
- 迷ったら、まず「この測定法は地図のどこにいるのか」を確認するところから
まずは分光分析法の基礎:吸光度とランベルト・ベールの法則をわかりやすく解説から読んでみてください。
物理を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、物理という科目のほんの一区画です。実際には、物質の物理的性質から化学物質の分析、放射化学までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
公式をバラバラに覚えようとすると物理は苦しくなりますが、「この式がどこから来て、どこにつながるのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
物理のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1冊にまとめたPDFです。無料サンプル(分光分析法の範囲)と、地図をたどりながら話すYouTubeの講義動画があるので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。