臨床現場で用いる分析技術

臨床現場での試料前処理法:溶媒抽出・固相抽出・除タンパク【薬剤師国家試験】

臨床現場で用いる分析技術のマインドマップ
臨床現場で用いる分析技術のマインドマップ

ここから「臨床現場で用いる分析技術」に入ります。X線などの画像診断、代表的なセンサーといった技術を扱っていくのですが、その前に押さえておきたいのが試料の前処理です。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。物理の解説授業は分光分析法の範囲をYouTubeで無料公開しているので、読むよりも動画で一気に見たい人はそちらもどうぞ。

なぜ前処理が必要なのか

血液や尿といった検体を、そのまま分析機器に入れるわけではありません。

生体試料には、タンパク質・脂質・塩類・代謝物など、目的物質以外のものが大量に含まれています。専門用語ではこれを夾雑物(きょうざつぶつ)といいます。

夾雑物を取り除いておくと、

  • 検出を妨害する物質を除去できる
  • 目的物質を濃縮でき、測定の信頼性が上がる

という2つの効果があります。これが前処理をする理由です。

代表的な方法は3つ。溶媒抽出法・固相抽出法・除タンパク法です。順に見ていきます。

① 溶媒抽出法

定義は「互いに混ざり合わない2つの溶媒の中で、目的分析種を一方の溶媒層に分配・濃縮する方法」。要するに分液漏斗を思い浮かべてください。

水層に入っている検体に有機溶媒(ヘキサンなど)を加え、振ってから静置します。すると2層に分かれ、タンパクなどは水層に、有機化合物は有機層に入ることが多い。目的物質がどちらに入るかがわかっていれば、その層だけを取り出せばよいわけです。

使える溶媒・使えない溶媒

ここは注意点です。抽出溶媒には水と混和しない溶媒を使わなければなりません。

メタノール・エタノール・アセトニトリルは水と混和してしまうので使えません。

そもそも液液平衡を使って「こちらに溶けやすいもの/あちらに溶けやすいもの」で分けているのですから、混ざってしまっては話になりませんね。理屈から考えれば間違えません。

抽出効率を上げる2つの方法

(a) pH を調節して分子形にする

分配平衡でやったとおり、有機溶媒層に移行できるのは分子形です。ですから、目的物質が分子形になるように pH を調節すれば抽出率が上がります。

目的物質 pH をどうするか
酸性薬物 pH を低くすると分子形が多くなる
塩基性薬物 pH を高くすると分子形が多くなる

(b) 塩析

無機塩を加える方法です。塩を溶かすと水分子が塩の水和に取られてしまうので、水層に有機化合物が溶けきれなくなり、有機層へ移行しやすくなります。

この2つは「なぜ効くのか」まで含めて覚えてください。

② 固相抽出法

こちらはクロマトグラフィーによく似ています。

シリカゲルなどの固相に目的物質をいったん吸着させ、あとから溶媒で溶かし出す、という方法です。

原理は3つあり、クロマトグラフィー各論でやった内容がそのまま使えます。

原理 固相
吸着型(順相型) シリカゲル
分配型(逆相型) ODS化シリカゲル
イオン交換型 イオン交換樹脂

「固相抽出は液体クロマトグラフィーとほぼ同じ」と捉えておけば、新しく覚えることはほとんどありません。

③ 除タンパク法

血清にはタンパク質が大量に含まれていて、分析の邪魔になります。そこで、あらかじめ沈殿やろ過で取り除くのが除タンパク法です。

押さえるのは4つ。

方法 内容
酸変性法 酸によってタンパク質を変性・沈殿させる
有機溶媒変性法 有機溶媒によってタンパク質を変性・沈殿させる
限外ろ過法 ろ過で取り除く
サイズ排除クロマトグラフィー 分子量の差で分ける

このうち中身まで覚えないといけないのは、上の2つです。

酸変性法 ─ 大事なのは「嵩高い酸」

酸でタンパク質を変性させて沈殿させる方法ですが、ポイントは「嵩高い(かさだかい)酸」を使うという点です。

タンパク質は、まわりに水和層をまとっているおかげで沈殿せずに溶けていられます。この水和層を奪う力が強いのが嵩高い酸で、水和層を壊された結果、タンパク質が変性して沈殿するわけですね。

覚えるべき試薬はトリクロロ酢酸と過塩素酸です。

有機溶媒変性法

過量の有機溶媒を加えて、タンパク質の立体構造を保っている疎水結合などの相互作用を壊し、変性・沈殿させます。

使うのはメタノール・エタノール。

これは消毒とイメージを結びつけると思い出しやすくなります。エタノールでの消毒は、細胞膜やタンパク質を変性させて中身を壊しているわけですよね。同じことを試験管の中でやっている、と考えれば試薬名が出てきやすくなります。

まとめ

  • 生体試料には夾雑物が多い。除去して妨害を防ぎ、目的物質を濃縮するのが前処理の目的
  • 溶媒抽出法は分液漏斗のイメージ。抽出溶媒は水と混和しないもの(メタノール・エタノール・アセトニトリルは不可)
  • 抽出効率アップは①pH調節で分子形にする ②塩析で水和に使われる水を奪う
  • 固相抽出法は吸着型(シリカゲル)・分配型(ODS化シリカゲル)・イオン交換型。液クロと同じ整理
  • 除タンパク法は酸変性法・有機溶媒変性法・限外ろ過法・サイズ排除クロマトグラフィー
  • 酸変性法は嵩高い酸(トリクロロ酢酸・過塩素酸)が水和層を奪う
  • 有機溶媒変性法はメタノール・エタノール。消毒のイメージで覚える

次は臨床現場のセンサー技術:グルコース電極・パルスオキシメーターを読んでみてください。

物理を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、物理という科目のほんの一区画です。実際には、物質の物理的性質から化学物質の分析、放射化学までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

公式をバラバラに覚えようとすると物理は苦しくなりますが、「この式がどこから来て、どこにつながるのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

物理のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1冊にまとめたPDFです。無料サンプル(分光分析法の範囲)と、地図をたどりながら話すYouTubeの講義動画があるので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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